レッドハット(株)は、10月25日に発売する『Red Hat Linux 8.0』の記者発表会を行ない、製品の概要や、出版者向けバージョンである『Red Hat Linux Publisher's Edition』について説明した。
『Red Hat Linux 8.0』の新機能
レッドハット(株)営業部の竹中俊雄氏によると、新製品となる『Red Hat Linux 8.0』は、「コミュニティで開発されている側面もあるが、企業としてどのような方針で提供するか」を考えて開発されたという。具体的なコンセプトとしては、
- GUIを改善し、デスクトップ向けの『Red Hat Linux』を提供すること
- インストーラを改善し、パッケージを自由に選択し直感的な操作を可能にすること
- 設定ツールをGUI化し、操作性、視認性を向上させること
- 新しい安定した機能を採用し、パフォーマンスの向上、機能充実を実現すること
- 製品構成を見直し、ユーザーのニーズに合致したラインナップを提供すること
といったことが挙げられるという。
GUIについては、GNOMEベースの『Red Hat Bluecurve』(以下、Bluecurve)を新たに採用している。Bluecurveのメニューには、レッドハットが推奨するアプリケーションのみが登録されているといい、GNOMEとKDEのメニューに個別に登録されているアプリケーションを統一的なインターフェイスで利用することができるという。
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Bluecurveのメニュー。「その他のアプリケーション」項目には、GNOMEやKDEのアプリケーションのうち、個別のメニューに登録されなかったものがまとめて収録される。 |
インストーラは、これまでのAnacondaをベースに、インストールされるパッケージを個別に選択できる「パッケージグループセレクション」機能が追加された。
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Anacondaのパッケージ選択画面。確実にインストールされる「基本パッケージ」に対するアドオンを自由に選択することができる、 |
パフォーマンスに関しては、
- USB 2.0のサポート
- 「Logical Volume Manager」を実装
- アプリケーションをgcc 3.2でコンパイルすることでパフォーマンスを改善
- ネットワークコンソールにメモリダンプを出力する機能を実装
といった改良が加えられた。また、LSB 1.2認定など、Linux標準への対応も進められている。そのほか、Open Source Initiativeによる、システムのインストールイメージがオープンソースのパッケージであることを認める「OSI Certified」も取得している。
製品パッケージは、『Red Hat Linux 8.0 Personal』と『Red Hat Linux 8.0 Professional』が用意される。『Red Hat Linux 8.0 Personal』は、商用アプリケーションが付属しないほか、マニュアルが「インストレーションガイド」のみになる、30日の『Red Hat Network』ベーシックサービストライアル版以外のサービスが付属しないなど、基本機能のみを提供するパッケージになる。エントリーレベルの製品として、新規導入やアップデート、企業などがデスクトップクライアント用途に導入するといった使い道を想定しているという。
『Red Hat Linux 8.0 Professional』は、ディスクドライブの管理やセキュリティ管理、プリンタドライバ、かな漢字変換ソフト、商用フォントといった商用ソフトウェアがバンドルされる。バンドルされるソフトウェアは以下のようなものになる。
- Wnn7 Personal
- キヤノン BJ Filter
- リコー True Typeフォント(5書体)
- 横河電機 Secure Ticket 試用版
- Acronis OS Selecter 5.0 Deluxe
- Acronis TrueImage
- Acronis ProofEraser
- Acronis MigrateEasy
- Acronis DiskEditor
- Adobe Acrobat Reader 4.05
- Vexira Antivirus v.2
- Fax2Send v.2.1-10
- Kerio Mailserver with McAfee Antivirus v.5.1
- LimeWire 2.5
- Linux General Ledger
- Sharity 2.8
- SOHOlaunch SMT 3.5
- Sn J2SE 1.3.1/1.4
『Red Hat Linux 8.0 Professional』は、企業のネットワークなどで単機能のサーバとして利用することを想定しているという。そのため、マニュアルも「インストレーションガイド」のほかに「入門ガイド」や「カスタマイズガイド」が付属し、60日間の電話やWebによるインストレーションサポート、90日間の『Red Hat Network』ベーシックサービストライアル版が付属する。
『Red Hat Linux Publisher's Edition』
今回のバージョンから新たに加えられた、『Red Hat Linux Publisher's Edition』(以下、Publisher's Edition)は、ソフトウェアの内容的には『Red Hat Linux 8.0 Personal』と同じものになる。サポートはいっさい付属しない。これまでは、いわゆる「FTP版」が書籍や雑誌などに収録されてきたが、今後は『Red Hat』の商標を使用し、書籍など商用の媒体で再配布する場合には、Publisher's Editionを収録することになる。
Publisher's Editionの使用には、各出版社単位でレッドハット(株)と契約することが必要になる。契約費用は1000ドルで、日本の場合、契約時の為替レートに基づき請求されるという。Publisher's Editionを収録した雑誌や書籍は、製品パッケージ発売から20日以上経過してからでなければ販売できない。そのためPublisher's Editionが収録された雑誌や書籍が店頭にならぶのは、11月15日以降になる。収録した媒体には、以下の文言を記載することが義務づけられる。
本書籍にはRed Hat(R) Linux(R) Publisher's Editionのコピーが収められており、そのコピーは、http://www.jp.redhat.com/products/licences/に記載されているEULAに合意した場合のみ使用することができます。
用途、目的に合わせ、マニュアル、サポート権の含まれる製品版Red Hat(R) Linux(R) 8.0、容易なシステムメンテナンスを可能にするRed Hat Networkを別途ご購入下さい。
製品、サービスに関する情報はwww.jp.redhat.comにてご確認いただけます。製品に関するお問い合わせは、sales-jp@redhat.comまでご連絡願います。
この措置はソフトウェアに対するライセンスではなく、あくまで「Red Hat」などの商標権の利用に関するものだ。米国では『Red Hat Linux 6.1』の頃から、このような商標に関する規定が運用されていたのだという。今後は商業メディアで「Red Hat」の名称や『Red Hat Linux』のスクリーンショットを使用する場合に、この記事の末尾にあるような商標権の表記が求められることになるという。
なお、ソフトウェア自体のFTPダウンロードは、「コミュニティへの還元」として、これまでと同様に利用することが可能だ。
