Webプロデューサーの情熱は「Webサイトのビューやユーザーを増やしたい!」のただひとつに向かう。企業サイトや個人ブログといったWebサイトの運営形態、バナー広告やアフィリエイトといった入金手段に関係なく、Webサイトを開設する以上は、より多くのお客さんにより多く利用して欲しい。
ASCII.jpの運営を担当する私の願いも同じこと。4月1日の着任以来さまざまな手段を講じたところ、前期よりもページビューで4割以上、ユニークユーザーで3割以上増えるなど、各種指標が軒並み向上した。ASCII.jpを支持してくれたユーザーの皆さんには感謝の気持ちで一杯である。
一方で、5月にリニューアルした『ASCII.jpデジタル用語辞典』も、私の担当業務の1つだ。オンラインのパソコン用語辞典といえば、前身の『アスキーデジタル用語辞典』がかつては君臨していたが、更新が滞ってしまい、ライバルサイトがSEO対策などで攻勢をかけてきたことすら気づかず、首位の座を明け渡してしまった。まったく悔しい限りである。
そこで5月のリニューアルとなったわけだ(関連記事)。下のグラフを見れば分かるとおり、リニューアル以降、ユニークユーザー数が逆転していて嬉しいのだが、そもそも、あちら(青線)は用語辞典単体でASCII.jp全体(赤線)をやや下回るユニークユーザーを獲得している。反攻のため、ライバルの弱点は何か、検討することにした。
用語辞典の短所を長所に変えるには?
ライバルを粉砕するにはデカい大砲が必要だ。一番弱いところに撃ち込んで、一気に勝負を付けるにはどうすればいいか? 大砲という手段と、どこに撃ち込むかの目標の組み合わせが勝負を決める。そこで、用語辞典サイトの利用目的をもう一度考えてみた。
Webの利用目的は「読む」「見る」「探す」「調べる」「買う」の5つ。用語辞典のようなWebサイトは「探す」「調べる」の目的で使われるから、目的の言葉の説明がわかれば、それ以上は読まないだろうし、説明が物足りなければ他のサイトに去ってしまう。ASCII.jpデジタル用語辞典は文中に他の用語へのリンクを張っているので、そのまま帰らず、他の用語に読み進んでくれるユーザーが意外なほど多いが、用語辞典を何十ページも読むユーザーがいるはずもない。ログ解析ツールのGoogle Analyticsで調べると、「読む」「見る」の目的で使われているASCII.jp本体に比べて、ASCII.jpデジタル用語辞典はセッションあたりのページビューがずっと少ないのが目立つ。
こういう事情は、ライバルサイトも同じだろう。エンジニア向けを標榜しているから、分からないPC/IT用語をGoogleで調べて、比較的上位に出てくることが多いあちらのサイトに説明を求めてやってくるのがユーザーの典型的な行動のはずだ。しかし、ライバルサイトは用語辞典以外に提供するコンテンツがない。あちらが用語辞典単体サイトであるのに対して、ASCII.jpは用語辞典を含む情報サイトである点が彼我の差であり、攻めどころである。そこで、ASCII.jpデジタル用語辞典を訪れたユーザーが、ASCII.jp本体にも訪問してくれるように対策することにした。
つまり、用語辞典を入り口にして、情報サイトの記事に誘導し、より多くのユーザーにサイト間を回遊してもらい、サイト全体のページビューを増やそう、という目標設定である。すでに語彙数ではASCII.jpデジタル用語辞典があちらを上回っており、ASCII.jpの記事は毎日数十本ずつ追加されている。戦略的優位性は明らかであり、後は目標を粉砕するための大砲を用意するだけである。