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アドビ システムズ、ギャレット・イルグ社長インタビュー

「AIRはPCの98%に広がる」――アドビ社長手ごたえを語る

2008年07月18日 18時50分更新

文● 西川仁朗/トレンド編集部

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 マイクロソフトの参入は良い兆候


Acrobat 9の販促用パッケージを手に持つイルグ氏

Acrobat 9の販促用パッケージを手に持つイルグ氏

―― 競合環境についてはいかがでしょうか? 例えば、PDF作成のフリーソフトは数多く存在していますし、マイクロソフトが「Silverlight」を登場させるなど、アドビのビジネス領域に進出する企業は増えています。

イルグ氏 まず、我々によく似た他社のソフトに関してお話しましょう。例えば、PDFで情報を編集したり、他者と共同で作業する場面を想像してください。同じツール(PDF)を用いてワークフローを実現するといったとき、アドビはデファクトの存在です。ビジネスユーザーは、無料のPDF作成ソフトではなく、信頼性が高く最高のセキュリティ機能を有するPDFソフトを欲しいと思うでしょう。そこに、数万円の出費を惜しむとは思えません。また、我々は現在「Flash Player 10」のベータ版をリリースしていますが、RIA分野の他社ソフトは「Flash Player 6」レベルのクオリティであることが多いようです。豊かなコンテンツをプロのクリエイターが提供するために必要な機能を十分持っているとは言えないわけです。

―― マイクロソフトなどの強力なライバルはどのように見ていますか?

イルグ氏 実はこれはいい兆候だと考えています。マイクロソフトが参入するということは、将来性がある有望なマーケットだということを証明しているようなものですから(笑)。マイクロソフトのおかげで我々は気が緩まないですむ訳です。もちろん、我々の多くの製品はマイクロソフトのプラットフォーム上で動いていますし、そういった意味では我々のパートナーとも言えます。


 SaaS形式のエクスペリエンスでさらなる普及を目指す


―― 2008年の下半期の戦略はどのように考えていますか?

イルグ氏 我々の2008年度の目標は「プラットフォーム プロバイダー」として確固たる地位を築くことです。下半期にはAcrobatによるビジネスコミュニケーションの革新を行ない、Creative SuiteやAdobe AIRによってリッチメディアの製作環境をサポートし、マルチデバイス向けビジネスを拡大していきます。もちろん、チャネルパートナーおよびソリューションパートナーとの関係を強化していくことも忘れてはいけません。

―― 次世代のアドビ システムズのサービスの方向性を示すものの一つに、Web経由でPhotoshopが無料で使える「Photoshop Express」が登場しています。現在、日本語版にローカライズが進んでいるそうですが、これはどのような可能性を秘めているのでしょうか?

イルグ氏 こういったSaaS形式のソフトの大きな目的は「ツールの普及」です。したがって、SaaSとして提供しているのは、あくまで基本機能だけです。ユーザーがWeb経由で、Photoshop Elementsレベルのソフトを使い、気軽に画像編集のやり方を体験することによって、より高度な機能が欲しくなってくるでしょう。車の運転免許を取ったばかりの頃は車だったら何でもいいんでしょうが、そのうちフェラーリが欲しくなりますよね(笑)。それと同じようなものです。

 特に日本のユーザーはクリエイティブな人が多い。画像にしても映像にしても表現力が豊かで質の高い内容を求める傾向にあるので、制作者は高級感のある、良いツールを求めます。材料が良いケーキがおいしいように、良いツールを使うことで良い作品が生まれるでしょう。

―― 日本市場においても、SaaSが浸透していくとお考えでしょうか?

イルグ氏 Salesforce.comのように成功している企業もありますし、広がっていくのは間違いありません。ただ、最初、SaaSはコンシューマー主導で広がりを見せると思います。日本の企業は自社のファイアーウォールを超えて、勝手にいろいろなWebにアクセスすることに躊躇するでしょう。セキュリティ面などにおいて基幹系システムと連携しても大丈夫という証明がなされ、安心して使える環境にならない限り、ビジネスユーザーには広がっていかないのではないでしょうか。

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