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アドビ システムズ、ギャレット・イルグ社長インタビュー

「AIRはPCの98%に広がる」――アドビ社長手ごたえを語る

2008年07月18日 18時50分更新

文● 西川仁朗/トレンド編集部

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 7月10日、米アドビ システムズは2008年度上半期(2007年12月~2008年5月30日)の業績を発表した。上半期の実績は17億7730万ドルで、対前年同期比27.4%増となった。7月11日には「Adobe Acrobat 9」の提供を開始し、さらなるビジネス領域での拡大を目指す、アドビ システムズ 株式会社 代表取締役社長 ギャレット・イルグ氏に業績好調の要因と、下半期の課題について語ってもらった。

アドビ システムズ 代表取締役社長 ギャレット・イルグ氏

アドビ システムズ 代表取締役社長 ギャレット・イルグ氏

―― 2008年度上半期は好調に推移しているようですね。

イルグ氏 おかげさまで非常に好調です。2008年度の上半期は約17億7700万ドルと対前年同期比約27%増となりました。Adobe Acrobatに代表されるPDF関連ビジネスは2000年に比べて4倍以上の規模に達し、CS3(Creative Suite 3)に代表されるクリエイター向けのソリューションビジネスも2003年度と比較すると2.5倍に成長しています。

―― 日本市場でも同じように成長していると考えて良いのでしょうか?

イルグ氏 そうですね。我々が継続的なイノベーションを実現して、パートナー企業や顧客に価値ある提案を行なっていることが、日本のユーザーにも支持されています。とはいえ、日本で欧米と同じマーケティングを行なってもうまくいきません。日本のビジネスユーザーには単なる製品の特徴をアピールするのではなく、Acrobatを使うことで実現するワークフローの効率化や、従業員の生産性向上を強調して、販促活動を行なっています。日本のビジネスユーザーも徐々に電子ドキュメントのセキュリティやコラボレーションの重要性を感じ始めており、我々が訴えてきたメッセージの効果が出できていると言えます。

―― とはいえ、日本ではそれほど電子ワークフローが浸透していません。

イルグ氏 確かにそうです。日本は世界一ブロードバンドのインフラが整った国ですが、アメリカの企業に比べると、電子ワークフローがほとんど導入されていません。また、せっかくPDFをワークフローの中で活用していても、電子化した書類をわざわざプリントアウトしてハンコを押しているビジネスマンも多くいます。

 ただし、新たな兆候が生まれています。我々がAcrobat 5の営業を行なっていた頃は技術担当者などのアーリーアダプターしか、電子ワークフローに興味を持ちませんでした。しかし、今回新しくリリースしたAcrobat 9の製品セミナーに集まるビジネスユーザーは、圧倒的にマネジャークラスの人が多く、一般の方にもPDFの電子フォームを利用したり、PDFで情報共有を行ないたいというニーズが高まってきているように思います。

 特にAcrobat 9には「ポートフォリオ」機能に代表される、アピール性の高いプレゼンテーションの資料をつくる機能を搭載しています(関連記事コチラ)。このAcrobat 9で日本市場にますます食い込んでいきたいと考えています。

イルグ氏はAcrobat 9の「ポートフォリオ」機能を用いて、動画メッセージで社員にメッセージを送っている

イルグ氏はAcrobat 9の「ポートフォリオ」機能を用いて、動画メッセージで社員にメッセージを送っている

―― 日本語環境に対応した「Adobe AIR 1.1」も6月にリリースされましたが、AIRの進捗はいかがですか?

イルグ氏 予想以上の広がりを見せています。Adobe AIRで開発されたアプリケーションを紹介する「Adobe AIRギャラリー」を見てもらえば分かりますが、AIRを活用したコミュニティはどんどん大きくなってきています。こういった新技術において、ケーススタディを紹介する仕掛けは極めて大切です。開発者のコミュニティでAIRが支持されることで、たくさんのアプリケーションが生まれ、他の人がどのように利用しているのかが分かるからです。

―― では、どの程度の広がりを見せていくとお考えですか?

 私はAIRはAdobe ReaderのようにPCの98%にインストールされる存在になると考えています。それは10年も先の話ではなく、ごく近い将来の話です。

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