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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第6回

比類なきモバイルノートを早速分解!?

type Z 解体天国:軽さとデザインの秘密は?(前編)

2008年07月16日 16時00分更新

文● インタビュー●西田 宗千佳、構成●小西利明/トレンド編集部

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12層基板の超小型マザーボードを開発

――開発に当たっては、それぞれ難しいところがあったと思いますが、その中で特に軽量化という面で、ハードルが高かった部分はどのあたりになるのでしょうか。

 軽量化するうえで、「フットプリントを小さくする」ことは効果がある。フットプリントを縮めることが、軽量化に即つながる。

 光学ドライブや2.5インチHDD、インターフェース、コネクターなどはサイズが決まっていますよね。だから、これは我々が小さくしようと思って、できるものではない。実はtype Zの中で我々の努力で小さくできるのは、マザーボードと冷却系だけなんです。

 だから、今回はそこを非常に重視して、特にマザーボードに関しては頑張りました。

パームレストとキーボードを外す

パームレストとキーボードを外す

宮入氏の分解作業は続く。ボディーのフレーム部分を外すと、ようやくマザーボードが見えてくる。薄いので、パーツ同士を上下に重ねる余裕はほとんどない。そのために重要なのがマザーボードの小型化だ

type Zの内部構造。赤線の内部がマザーボード

type Zの内部構造。赤線の内部がマザーボード。サイズの固定されたパーツを並べてできる、わずかな空間だけで実現されている

宮入 このマザーボードは、大体48gから50gくらい、先代のSZシリーズから軽量化しています。やはりサイズというのは重要で、効果がありますね。

――内部にはパーツ同士で重なっている部分がほぼないですね。

宮入 そうですね。それを実現できるのは、やはりマザーボードを小さくしているからです。

 大体今、信号線が7500本くらいあるんですが、それを普通に引いていると、かなり大きな基板になってしまう。今回はターゲットを、まず「小さくしよう」というところに決めた。そのためにどういうところにどういう信号線を通すのか、綿密に打ち合わせをして。そのうえで……、やっぱり入らないんですね(笑)。

 そこで、信号線の電気面の設計者と、基板に配線を引くアートワークの設計者たちが集まって、席を隣り合わせて夜中まで、指差しで1ミクロンずつ詰めていくんです。人の目でしっかりとCAD画面を見ながら詰めていくので、品質を落とさずにすむ。そうすると、例えば今回DDR3-1066のメモリーを使い、非常に難易度の高いものなんですけど、そういった配線も実現できる。

type Zのマザーボード。写真左がCPUとメモリースロットのある裏側で、写真右がGeForce 9300Mなどのある表側

――ちなみに、このクラスの基板だと何層で作っているのですか?

宮入 今は12層です。

――12層ですか! それを手で引くというのは……。

宮入 もうおかしくなりそうですね(笑)。当然、12層全部が信号線ではなくて、グランドなども含むのですが、品質を重視して12層にしました。10層でできないこともないのですが、やはり信頼性も重要なんですね。フルスペックでしっかりと動き続けてくれないと困るので、そういった面を見て、多少コストもかけてでもやろうと。

――2層増やすことによって、クロストークが起こらないように配列をうまく変えているということですね。

宮入 ほかの製造事業者に回路図を渡して、「この通りに引いてください」「はい、できました」というやり方では、絶対になしえないですね。技術者同士が膝を詰めてしっかりやります。

 これも、type Gとかtype Tで小さいサイズを実現してきた、そういった経験とノウハウですね。小型化の技術がしっかりとあるのでできるのです。

 技術は、蓄積して増やしていくものです。type Tがあってtype Gがあって、SZがあったうえで、今回これができている。

 ひとつひとつ積み重ねたものが、うまく組み合ってさらに次に行けるようになってきたな、というのが、最近特に思うことですね。

本体からマザーボードと冷却ファン以外のほとんどを取り外した状態

本体からマザーボードと冷却ファン以外のほとんどを取り外した状態。いかにマザーボードが占める面積が小さいかが分かる。積み重ねた高密度実装技術の賜物だ

――これまでの積み上げという面では、光学ドライブの薄型・軽量化というのも、かなり近いところがありますよね。

宮入 そうですね。今回は9.5mm厚のドライブです。駆動系やある程度の剛性も必要なんですが、詰めて詰めて、これだけ穴を開けました。

光学ドライブのフレーム部分には、いたるところに穴が開いている

光学ドライブのフレーム部分には、いたるところに穴が開いている。強度を保てるギリギリまで削り込み、軽量化を実現しているわけだ。……零戦みたいである

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