ソニーが16日発表した妥協なきプレミアムモバイルノート「VAIO type Z」。設計担当者へのインタビューを通じて、その秘密と狙いに迫る企画の後編をお届けする(前編はこちら)。
なお、type Zの主な特徴と仕様については、関連記事をご覧いただきたい。
打鍵感良好なアイソレーションキーボード
林 type Zのキーボードは、type Tのような「アイソレーションキーボード」になっていて、パームレストとキーボードフレームはアルミの1枚板でできています。
よく、キーボードを叩くと、すかすかするマシンがありますよね。あれはパームレストの台上にキーボードを置いて、裏からネジで3点で止めたりしているのですが、キーボードにたわみがあったりすると、そこにガタツキが出てしまう。
今回は完全にパームレストとキーボードを一体化しているので、原理的にまったく、浮きがない。非常に打感は安定しています。
type ZはA4ノートの使い勝手をそのまま実現したかったので、19.05mmピッチと、2.5mmのストロークというのは最初から譲れないところでした。
――このタイプのキーボードは、タッチがチャカチャカしがちだと思うんです。だけどこれは、そうは感じないですね。
宮入 type Tやtype Gで採用していた静音ラバーを、進化させて使っています。19.05mmキーピッチで、2.5mmのキーストロークをしっかりとキープしながら、多点でしっかりと受けてますので、かなり安心して使っていただけるんじゃないかと思っています。
――このタイプのキーボードは小さいノート向けに「妥協したもの」というイメージを持つ方は多いようです。あるいはアップルや御社のtype Cのように、デザインを優先している機種のものだと。「やっぱり普通のキーボードの方が……」という先入観を持っている方は多い。
宮入 何かを犠牲にしているんじゃないか、ということですね。
――でも、これはまったくそういう感じがないですね。キートップが一回り小さいので、きっちり(指を)当てることだけ慣れれば、タッチ感や操作感が悪いという感じは、まったくないですね。
林 このサイズって実は、通常のキーボードのキートップとまったく同じサイズなんです。
宮入 見た目が小さく見えるだけで、けっして打面は小さくないんですね。
林 スカートの部分がなくなることで、爪の長い人などの押し間違いが少なくできる。しかし、キートップの大きさ自体は変えていないので、打ち心地は変わらない。
また、キーの隙間に汚れが詰まってしまったり、爪が引っかかってキートップがポロッと取れてしまうこともない。これらの特徴を重視して、type T(TZシリーズ)から採用しました。実際、キートップの破損も非常に少なくなっていますし、安心して使っていただけるんじゃないかと。
アルミの1枚板で作られたパームレスト
林 パームレストでは、エッジの感触も注目してほしい点です。他社製品などにも使われていますが、こういう角は丸みを帯びているのが一般的ですね。
アルミの板をプレス加工して作る物は、曲げたときに必ず角に曲面が出てしまう。でも、今回はどうしてもデザイン上、シャープなエッジ感がほしかった。そこを実現するために、金型の中で何回も叩き込んでエッジを出すような作業をしています。
――確かに、他社製品で角の湾曲がだらしない感じになってしまっているのはありますね。
林 常識どおりに作ってしまうと、あれが普通なのです。そこもこだわりぬいています。これがシャープになるか、丸くなるかで、デザインの印象がまるで変わる。
実はこの作業、このような大きいサイズで行なわれたことはなかった。当初我々がパネルのメーカーにと頼んだところ、「できない」と言われてしまいました。そこで、仮型を作って何回も練習し、どうやったらできるかを業者の方と繰り返し検討しました。
林 もうひとつは、パームレストのヘアライン加工です。1枚のアルミ板の全面にヘアラインをかけています。これも当初は「できない」と、「一部分だけにしてくれ」と言われたものです。
というのも、(キーボードの)開口部とそうでないところがあるので、1日に1000枚とか量産製造した場合、ヘアラインをかけるブラシのへたり方が変わってしまい、まだらになってしまうというのです。これもなんとか工夫して実現しています。
パソコンとしてのスペックには関わらない部分も大事にしたい。これを道具として、愛して使ってほしかったので、こだわってやってきました。私はずっとVAIOの開発をやっていますが、今回はそこに一段とこだわりを持ってやっています。
宮入 結果的に奇麗な1枚板で仕上がりましたので、19mmピッチのキーボードと合わせて、手を置いたときに落ち着くような広い感触があります。本当にメインマシンとして使っていただけるものとなっています。
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