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塩田紳二の3年戦える「ビジネスPC」選び 第2回

ソニー「VAIO type Z」に見る「ビジネスPC」の真髄

2009年09月03日 06時00分更新

文● 塩田紳二

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数年前まで「ビジネスPC」とは、特定のメーカーやブランドを指していた。しかし現在では、かつてビジネスから遠いところにいたメーカーの製品などもビジネスPCとして利用されるようになってきた。これには、もちろんメーカー自身が、ビジネス向けの販売ルートを開拓したり、専用モデルを用意したという理由もあるが、PCメーカーとしての実力を付け、ビジネスPCに求められる性能を発揮させるPCの開発が可能になった、ということもあるだろう。

かつて、早朝の新幹線に乗ると、ビジネスマンが利用しているPCは、黒一色(主に「ThinkPadシリーズ」)だったが、最近はそういうこともなく、さまざまノートPCが使われている。そういう意味で、ビジネスPCの市場にも変化が起きている。この連載では、こうした変化についてもお伝えしていく。

VAIO type Z

ソニーVAIOシリーズの中でも“モバイルPCの最高クラス”と位置づけられる、「VAIO type Z」

 さて今回は、実際のビジネスPCの例としてソニー「VAIO type Z」を見ていこう。国内のPC市場は、最初はコンピューター(サーバー)部門を持つNECや富士通といったメーカーが主力だったが、その後には家電メーカーもPC市場へ参入した。中には撤退してしまったメーカーもあるが、この市場で大きくシェアを伸長したメーカーもある。

 ソニーのVAIOシリーズは従来、一般ユーザー向けの製品に注力していたが、現在ではビジネス向け製品もラインナップされている。ここで紹介するtype Zは、個人向けとビジネス向けの両モデルが用意されており、VAIO全体の中でも「モバイルPCの最高クラス」という位置付けだ。同じく13インチクラス液晶のモデルとして「type S」があるが、type Zは、切替可能な2つのグラフィックスチップを搭載し、カスタムメイドで選べるCPUの最高クロックも高い。また、液晶パネルも1600×900ドット表示の高解像度タイプを選択可能だ。


13インチ液晶の採用は
モバイル以上デスクトップ以下という“解”

4側面

「VAIO type Z」の4側面

 海外ではノートPCというと15インチクラスが主流だが、国内においては現状13インチが、モバイルPCカテゴリーかどうかを判断するひとつの基準となっている。これより液晶ディスプレーが大きなものは、持ち運ぶことは可能でも、外出先よりも社内(席から会議室まで)などを移動して利用することが想定される。

 VAIO type Zは、持ち運んで使うだけでなく、オフィスやホテルなど、電源の取れる場所で長時間作業をするときにも最大限の性能を利用できるように考慮されている。ビジネスシーンを考えれば、必ずしも移動中に作業が発生するわけではない。外出しない日もあるし、出張などでホテルや出先などで作業することもあるだろう。むしろ、オフィスなど屋内で利用している時間のほうが長いはずだ。

 可搬性を高めれば、モバイルPCは小型&軽量化という方向に向かうが、そうなると今度は、オフィスなどでの利用時の使い勝手を犠牲にしなくてはならない。type Zは、モバイルPCとしてぎりぎり最大のサイズにすることで、できる限りの高性能を詰めこんだというコンセプトの「ビジネスノート」なのである。


本格的なビジネスに利用可能なtype Z

 type Zがビジネスでも利用できるポイントのひとつは、性能の高さだ。CPUは、法人向けモデルでは、Core 2 Duo T9900(3.06GHz)が用意されている。また、グラフィックスチップを2つ――性能重視の「NVIDIA GeForce 9300M GS GPU」と、バッテリー駆動時間重視の「Intel GMA4500MHD」(チップセット内蔵グラフィックス)を搭載している。その切替は、Windowsが稼働中にも可能で、いちいち再起動する必要がない。同社ではこれを、「ダイナミック・ハイブリッドグラフィックス」と呼んでいる。

 液晶パネルは、WXGA(1366×768ドット)に加えて、WXGA++(1600×900ドット)も選択可能だ。ノートPCの場合、デスクトップPCと違って、購入後は液晶ディスプレーを交換することができない。このため、使用中に表示解像度に不満を感じても、マシンをまるごと変更するしかない。この点で、WXGA++という高解像度表示が選べるのは重要なポイントだ。単純な文書作成でも、解像度が高ければより多くの情報を一度に見られるし、図面などの閲覧でも情報量が違ってくる。

 外出先での作業は、普段の環境と違って何かと不便を強いられるが、中でも画面解像度が低くなるとかなりのストレスを感じる。たとえば、Webブラウザーで検索した情報を見ながら文書を作成するような場合、2つのウィンドウが重ならないように配置できるのと、重なっているウィンドウを何度も切り替えて作業するのとでは作業効率が全然違う。

 しかし、解像度が高くなると、今度は液晶パネルの物理的なサイズがかなり影響する。物理サイズが小さいと、同じポイント数で文字を表示しても見た目の文字が小さくなってしまうのだ。それゆえ、type ZはモバイルPCと呼べるギリギリの13インチ液晶パネルを採用しているのだと思われる。

 さらに、BTOメニューとして256GBのSSDを2台搭載し、RAID 0構成により合計512GBの1ドライブとして利用可能な高速ストレージを実現できる。RAID 0では2つの物理ドライブに並列で書き込み、読み出しを行なうことで高速化する技術だ。これにより、従来の2.5インチHDDに比べて最大4.9倍も高速化されるという。ちなみにSSD単体では3.9倍の高速化になる。

 (次ページ、「開発者インタビュー」に続く。なお、VAIO type Zの詳細なレビューについては下記関連記事を参照されたい)


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