キャリアを考える際、活躍の場として海外を視野に入れているエンジニアもいるだろう。また、日本国内にいても、外国人社員とプロジェクトを進めたり、オフショア開発で海外の技術者とやり取りをしたりすることもある。さまざまなグローバルな現場で、活躍できる人材となるには語学力のほかに何が必要なのか。米系大手コンサルティング会社ベリングポイントにおいて、人事領域のコンサルティングを手がける吉田健之さんに聞いた。
海外で、ビジネスマンとして「無能な人間」と判断されてしまうとき
グローバルに活躍するための必要なスキルについて、吉田さんがとりわけ強調するのが『コミュニケーション力』と『決断力』だ。
「ここでいうコミュニケーション力とは、例えば英語がきちんと話せるといった語学力をはるかに超えるものです。たとえ外国語が多少下手でも、相手に聞く価値があると思わせる自分自身のアイデアと話題を豊富に持っていること。1人で海外に飛び出して仕事をする場合、想像以上に独自性と話題の豊富さ、すなわち『おもしろい話』ができることが必要になりますね」
「おもしろい話ができる」というのは、確かに1人の人間として魅力的だ。しかし、そこまでビジネス上で必須スキルと言えるだろうか。
「海外、特に欧米で働く場合、チームワークも大事です。でも、それ以前に『個人の力』をできるだけ早く相手に認めてもらう必要があります。こちらがお金を払うのであれば、相手はじっくりと話を聞いてくれるでしょう。しかし、仕事でお金をもらうために話をする場合は、こちらが相手にとって興味を引く内容を話せないと相手にされません」
例えば会議に出ても黙って聞いているだけの人は、無能な人間だと判断されてしまうという。
「いったん無能な人間だと判断されてしまえば、いい情報も入ってこないことになります。海外の現場に飛び込んでいくならば、常に周囲の人々から情報を得なければやっていけません。一方、会議の冒頭に発言することの勇気は大いに評価されるはずです」
海外で働くことはいつも『多勢に無勢』な状況が待ち構えていて、まずそれを打破しなくては、活躍することはかなわないのだ。では、もう1つの必要な能力「決断力」とは。
「自分で決断できない人はまったく評価されません。いつも『本社に聞いてみます。上司に聞いてみます』では、『ダメな人』というレッテルを貼られてしまいます。自分の役割と責任の範囲において、即決できることが海外で認められるには必要です。さらに、コミュニケーション力と決断力に加えて、世界に1人で立ち向かう『度胸』と、仲間に好かれ、交渉相手に嫌われないような『愛嬌』は日本で仕事をするとき以上に大切だと思います」
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