4年半、ビジネスマンを休止した勇気
グローバルに活躍するには、おもしろい話ができることと、度胸と愛嬌も大切だということだが、吉田さんはどのようにそれらを身に付けたのだろうか。
「コミュニケーション力を高めるには、やはり仕事の世界を超えて、いろいろな人と付き合うことがお勧めでしょう。文化的な背景や価値観がまったく違う人など、さまざまな人と付き合うことです。1人1人の多様な価値観を認めるのは当たり前として、相手に合わせて、相手に伝わるように話すにはどうしたらいいのかを練習することですね。それと、『おもしろい話』をするには、誰も経験したことがないことにどんどんチャレンジすることです」
チャレンジの1つとして、吉田さんは海外へ旅に出かけている。
「大きな旅をしたのは、私のキャリアの中では世界銀行の仕事を終えたときです。約4年半にわたり世界6大陸を巡りました。世界の国々を丁寧に見ていたら、結果的に約4年半かかってしまったのですが、最後に上海からの船で大阪南港に着いた時には、所持金は1万円も残っていませんでしたね」
吉田さんのキャリアを見ていると順風満帆とも思えるが、いわゆるビジネスマンの道から4年半もの長い間“外れる”という判断をした点は興味深い。この4年半の世界旅行で、吉田さんはグローバルに通用する「おもしろい話」「度胸」「愛嬌」を身に付けたというわけだ。
タリバン政権下のアフガニスタンで恐ろしい目に……
吉田さんの「おもしろい話」の中から“これは”というものを少しうかがってみた。例えば恐ろしい目に遭ったエピソードだ。
「タリバン政権下のアフガニスタンを旅してした時の話です。アフガニスタンは長い内戦のため、インフラが破壊され、当時、夜はランプの生活でした。夜の闇の中を安宿へと歩いて帰ると、戒厳令のような状況だったので宿に入れてもらえないということがありました。いくら戸を叩いても宿の主人はシャッターを空けてくれませんでした。やがて、後方からキャタピラの轟音とともに装甲車が近づいてきたのです。すぐに装甲車からタリバンの兵士が降りてきて、私に軽機関銃の銃口を向け、引き金に指を掛け『アメリカ!』『アメリカ!』と迫ってきます。当時、すでにタリバンはアメリカと敵対していました。兵士は私がもしアメリカ人なら、その場で射殺するつもりだったかもしれません。私は『No! No! ジャパニ! ジャパニ! アフガニ、ジャパニ、ベリーグッドフレンド!』と必死に叫びました。あの数分間の緊張は、その後の私にもう恐いものはないと思わせるに十分でしたね(笑)。今でもあれが私の度胸の源ですね」
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