〈太ももを千映の脚のあいだに、割りいれた。乳房にも性器にもふれていないのに、千映からあふれた水で雅人の脚はひざまで濡らされてしまった〉
千映、処女なのにどんだけーってことですけど、それも致し方ございません。なぜなら2人はいわゆる「肌があう」運命のセックス・パートナーだったのです。というわけで、処女にもかかわらず、〈雅人はペニスをすべて、千映のなかに収めた。腰と腰が密着する。まだ往復運動に移ってはいなかった。そのとき不思議なことが起こった。雅人のペニスの形に千映のなかが変化したのである。すきまなく、ぴたりと張りついて、やわらかな圧力でペニスを包んでくる〉なんて、奇跡のような現象が起きてしまうんですねえ。どうですか、羨ましいですか。ほえー。
エロ場面が頻出する、「1本抜いとく?」って時に多少のお役には立てそうなこのオカズ本、女でいい目を見た男が最後にすべてを失うという展開が、米倉涼子主演でドラマ化された有吉佐和子『不信のとき』を少し思わせもしますが、なんせ書いているのが衣良先生ですから、有吉作品とはちがって、『夜の桃』の主人公は真の意味で男が不幸になったりはいたしません。性欲バブルよ、永遠に――とでも言いたげなラストシーンには脱力。正直申し上げて、わたし、雅人みたい男が嫌いなんであります。んが、残念なことにこの手の男がモテるのもたしかではありますので、小説中からモテの極意を拾ってまいりましょう。仕方ありません、それがわたしの仕事です。
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