Rubyで作られるシステムが増えてきたワケ
―――ROMAとfairy、どちらもRubyで書かれているのですよね?
まつもと:現状ではすべてRubyで書いています。でも、最終的にはパフォーマンスの問題などで、部分的にCやC++を使うことになるかと思います。現在、実験している数十台規模なら、Rubyだけでも問題ありません。でも、このあと1000台規模で実験したときに、どういうボトルネックが出てくるかによりますね。ある程度予想はしています。でも分散システム開発に関する予想は当たらないことが多いので、どうなるか今は分かりません。可能性として、性能を上げるためにRuby自体に手を入れることもあり得るでしょう。
―――これまで本格的なプログラミングでは、Cなどのコンパイラ系の言語が主に使われてきました。しかし、最近ではRubyのようなインタプリタ系で、本格的なシステムが作られることも増えてきているようですね。これはなぜでしょうか?
まつもと:いくつか要因があると思います。大きいのは、CPUのパワーが上がってきたことでしょう。例えば、Webサイトのシステム構築を考えたとき、ボトルネックになるのはネットワークやデータベース部分です。そのロジック部分のパフォーマンスが問題にならなくなってきているのであれば、ラクに書ける言語がいいということになります。
また、最近はソフトウェア開発にかけられる時間がどんどん短くなってきています。数日あるいは数週間でソフトウェアを開発する必要が出てきました。処理速度がボトルネックではないのであれば、少ない人数ですばやく開発ができる言語がいい。そうすると、CやC++よりもRubyがいいですよね。
―――ストレスなくプログラムを書けるということは、開発の生産性に効いてきますね。
まつもと:ただしどのようなライブラリがあるか、どのようなプラットフォームで動くのか、ということも言語の重要な要素です。Rubyの場合、生産性の高さからRuby on Rails(Rubyで構築したフレームワーク)が注目されています。Rubyは、Ruby on Railsのような生産性の高いフレームワークを実現していることも、ほかの言語より有利なところですね。
Ruby On Railsの生産性の高さの背景には、Ruby On Railsそのものの“スジ”のよさや、設計原則のよさがあります。Rubyが動的な性質を持っているので、状況に応じてプログラムそのものが変化するような書き方ができます。もちろんJavaやPHPといったほかの言語でも、Ruby On Railsと同じようなものを作ることはできるでしょう。でも、Rubyよりかなり作りにくいでしょうね。
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