前回の楽天技術研究所の森正弥代表インタビューの際、楽天のRubyに関する研究として「fairy」「ROMA」の2つのプロジェクトがあることを紹介した。このプロジェクトの概要が、6月20日から開催される日本Ruby会議で紹介されることになっているという。これに先立ち、楽天技術研究所の森氏と、Rubyを開発したまつもとゆきひろ氏に話を聞いた。前編、中篇、後編の3編に分けて紹介する。
“フェローまつもと”はどんな存在か
―――まつもとさんは、普段は島根県松江市にいらっしゃるのですよね?
まつもと:普段は松江市のネットワーク応用通信研究所にいます。月に1度か2度、東京の楽天技術研究所に来ています。
森:まつもとさんは松江市に在住とはいえ、毎週いろいろなイベントにひっぱりだこで、東京に頻繁に来ているようです。先週もこちら(楽天技術研究所)にいらっしゃいましたよね。
まつもと:呼び出されたというのが本当なんですが(笑)。別のイベントのために東京に来ることになっていたら、前日夜になって「ついでに楽天にもきてくれ」とメールがあって。
―――まつもとさんは、楽天技術研究所のフェローということですが、具体的にはどういうことをしているのですか?
まつもと:基本的にフェローというのが、どういう存在なのかよく分からないのですが(笑)。僕は「お手伝いをする人」だと思っています。それで、現在はRubyを使った分散コンピューティングのプラットフォームを作るお手伝いをするというのが、僕のフェローとしての仕事です。
―――「お手伝い」は、具体的にどのようなことをしているのですか?
まつもと:Rubyはインタプリタ言語なので、処理速度についてはあまり得意ではありません。でも、グリッド(・コンピューティング)のように、たくさんのマシンに仕事をばらまいて高速に処理したいという矛盾したニーズがあります。そのニーズを満たすために、Rubyの仕様を調整したり、必要によってはRubyそのものに機能を追加したり、そういう部分の支援をしています。
―――それで現在開発されているのが……
森:「お手軽さ」をテーマにした分散コンピューティングのフレームワークであるfairyと、「大規模」を想定したグリッドシステムであるROMAです。
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