国内最大級のインターネットショッピングモール「楽天市場」やポータルサイト「インフォシーク」、プロ野球チーム「東北楽天イーグルス」など、38にも及ぶ事業分野を持つ楽天(株)。その楽天に研究所があることはあまり知られていません。今回は、その「楽天技術研究所」の代表である森正弥氏に話を伺いました。森氏が楽天技術研究所に入るまでの経緯や、同研究所が提案する「サード・リアリティ」という概念を前編・後編に分けて紹介します。今回は、森氏が楽天技術研究所の代表に就任するまでのキャリアについてお届けします。
日本のインターネットの可能性を小さくみるな! と思った
―――森さんは、過去に外資系コンサルティング会社に勤められ、その後楽天技術研究所に転職されましたが、そもそも転職の動機は何だったのでしょうか?
森:もともと在籍していたコンサルティング会社では、研究所に関連する仕事をしていました。当時その会社は世界に合計3つの研究所を持っていましたが、新たに研究所を作るという計画があり、そのための仕事に従事していたのです。各研究所の研究内容やマネジメントなどの調査、研究所が発行する資料の日本語訳、研究者を日本に連れてきてセミナーを行なうなど……。しかし、このような中で、会社の研究所の方向性と自分が感じていることに違いがあることに気付いていきました。私には、インターネットの可能性を小さく見積もっているように思えたのです。
また、当時はテクノロジーを専門に扱う部署に所属していて、研究所の仕事とは別に、「インフラコンサルティング」というビジネスを担当していました。これは、企業の基幹システムなどを調べ、最適なインフラを提案する仕事です。例えば、5000台あるサーバーを標準化や統合を通して2000台にしていくなど、財務や経営にインパクトのあるインフラ改善の提案を行ないます。海外では、2002~3年ぐらいに始まり、すでに比較的定着している分野だったのですが、当時の日本では全然受け入れられていませんでした。この時、日本というマーケットの特殊性に気が付いたのです。
日本以外では、例えば中国でも、企業のトップにコンサルタントが提案をすると、トップがデシジョンを行なうものです。しかし、日本ではそういうことはあまり起きず、「インフラコンサルティング」という言葉が「バズワード」(定義や実体が明確でないのに喧伝される用語)ように扱われて、それで話が終わる傾向にあったように思います。
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