月刊アスキー 2007年11月号連動記事
皆様こんにちは、ライターの山崎です。今月は、あのヒット商品「よなよなエール」を開発したヤッホー・ブルーイングの醸造所におじゃましてきましたよ。で、すっかりビールの薀蓄野郎になって帰ってきた。
あなたは知っていたか、ビールはラガーとエールという種類に大別できることを。あなたは聞いていたか、最近死去したほうのマイケル・ジャクソンは世界一といわれるビール評論家で、踊らないということを。あなたもビールの、にわか薀蓄を垂れたく」なったら、是非月刊アスキー11月号を読んでください、以上。と、言いたいところだけれど、せっかくこの場が与えられているので、本誌に書ききれなかった話などを書いてみようかと思う。ちなみに今月、わたしの講師役になってくれたのはヤッホー・ブルーイングの“エール石井”さん。
欧米には、実は「地ビール」という言葉はなくて、「クラフトビール」と称するそうなのだけど、クラフトとは職人のこと。つまりビールというのは「どこで作ったか」よりも「誰が作ったか」が重要視されているわけ。で、エール石井さんは「よなよなエール」を開発したクラフトマンなのだった。
本誌と多少内容が重複するけれど、まずごく基本的なことから。前述したように、ビールには「ラガー」と「エール」があって、その違いは使っている酵母から来るらしい。で、日本の酒造メーカー大手5社が作っているのは、ほぼラガービール。最近、キリンがエールを出したから100%とは言い切れなくなっちゃったけど、ついこのあいだまで全部がラガー。スーパードライもエビスビールも一番絞りも、みんなラガー。ちなみに世界的なシェアでいうと、ラガーが90%でエールは10%程度らしい。
というわけで、ヤッホー・ブルーイングはエールで勝負をかけてヒット商品を生み出したというのが本誌のほうのおおまかな話なんだけど、本誌では省いてしまったエピソードに、酵母についての石井さんからのレクチャーがある。わたしはかねてより『地ビールを贈答に使うのは難しい』と思っていたんだが(味がときどき変わるように思える)、石井さんにお話を伺ってその謎が溶けた。
まず、「よなよなエール」の酵母はどこから来たのか。この問いに石井さんはこのように答えてくれた。
「アメリカです。アメリカに培養する会社がありますので、そこにオーダーを入れます。アメリカンエールを作るためのアメリカンイーストを発注して、培養酵母を作ってもらうんです。それを購入して、作って、あとはそのイーストを使いまわすという形。日本酒と違って一年に一回仕込むのではなくて、年間通じて毎回作れますので、基本的にはイーストを使いまわしていくんですね。一回発酵が終わったイーストを回収して、それをまた次のよなよなエールに使う。培養酵母というのは、いくらでも買えるんです。で、一回それを我々のよなよなで使ってしまうと、よなよなを作って回収したイーストは、誰にも作れないんです。培養屋さんにも作れない。我々しか持ってない。“ハウスイースト”という呼び方をアメリカではするんですけど、つまりそれが僕らの命みたいなもので、これはお金を出しても買えない。逆にここに泥棒が入っでもハウスイーストだけは絶対盗まれてはならない。これを廻していくことによって、品質安定が可能になると同時に、よなよなの特徴を作っていくわけですからね。
けれど品質を維持できないというのは、地ビールの世界では当たり前のように多いですね。大手のビールは何度飲んでも変わらないじゃないですか。なのに、『地ビールは生きているから』という言い訳をする同業者もいるくらいで」
そうなんですよ、生きているから味が変わるんだと。だから贈答用にすると博打になっちゃうんです。
「だと思います。お客様の身になってみれば、前回よかったけど今回よくなかった、次回はどうだろう、では安心して飲めないですよね。いまヤッホーは3年続けて伸びてますけど、増収増益を獲得している大きな要因のひとつは楽天通販にあります。ギフトでの展開ですけど、やはり安心してお客さんが使っていただける。ということは、いつ買っても誰に送っても自分で飲んでも安心できる品質だということが重要なファクターになっている」
品質を安定させるコツというのはなんなのでしょうか。
「簡単です。一番重要なのはですね、ここで使っているハウスイーストという概念。自分たちがよなよなで使ったイーストを、それを何度も使い続けること。それが品質の安定に一番寄与していますね」
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