月刊アスキー 2008年7月号掲載記事
こないだ、父親の一周忌で地元に帰ってきた。
わたしの実家があるところは、とある地方都市の周辺部で、わたしが子どもの頃はというと、休日になると母親とふたりでバスに乗り、その地方都市の中心部にある商店街に買い物に出掛けるのが慣わしだった。
けど、現在はどうかというと、郊外に大規模量販店やショッピングモールができてしまい、マンションなんかもみな郊外に建ってしまった結果、かつて賑わっていた中心部はすっかり寂れてしまった。で、法事のときに中心部にある料亭を利用したのでわたしも久々に市内を歩いてみたのだけど、見事な「シャッター通り」となっていることにあらためて驚いた。駅前を区画整理したりしたようだが、なんの効果もあがっていない様子である。
まあ、こんな調子でどこの自治体も町おこしには苦労していることと思うが、そんななか、人口3万5000人あまりの埼玉県鷲宮町が、いわゆる「萌えアニメ」を使って町おこしを行っているとの話を聞いて、さっそく取材に向かったのだった。
件の萌えアニメとは、2007年4月から9月まで深夜に放映された「らき☆すた」という作品である。このアニメの登場人物が住む鷹宮神社なる場所が埼玉県鷲宮町に在る鷲宮神社でないかという噂が広がり、ファンが聖地巡礼と称して、鷲宮神社を訪れるようになったのが事の発端だという。
取材を通して知ったのだけど、町の外に大型店ができたことにより、鷲宮町もまた地元の商店街が活気を失っている現状に苦しんでいた。そこで鷲宮町では鷲宮神社とアニメを合わせたイベントの開催や、町の商店街での携帯ストラップ販売などを通じて町おこしを進めたわけだが、その詳細は月刊アスキー本誌で触れたのでそちらを参照していただくとして、ここでは本誌で省いた話などを。
今回、町おこしの中心になったのは鷲宮町の商工会で、取材に応じてくれたのは中心的人物となった坂田圧巳さんと松本真治さん。なんでも普段は融資関連のお仕事をしているという。わたしは「商店街の会長さん」と「商工会の会長さん」の区別すらつかない不勉強ぶりで、坂田さんが、
「普段は“融資”の仕事をしてます」
とおっしゃったときにかなり混乱したのである。坂田さんが教えてくれたところによると、商工会というのは、農家のために農協があるように、商店のためにあるのが商工会なんだそうで、事業者向けの融資の窓口になるというのが本筋の仕事だそうな。一応のくくりとしては、経済産業省の下にある中小企業庁の管轄に入っているらしい。だからおふたりは、いわゆる団体職員にあたるわけだな。お堅いイメージ(実際、融資の窓口は堅実さが第一だと思うしさ)のお仕事をされている一方で、萌えアニメでの町おこしにアイデアを出していったわけで、まずはその柔軟さに驚いた。
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