IT業界で仕事をしていると、オブジェクト指向やサービス指向など「○×指向」という言葉をよく耳にする。何とはなしに使ってはいるものの、正確な意味を問われると答えに窮することがあるものだ。そこで、これらの言葉の原義を確認して、正確な意味を理解してはどうか。きっとビジネスシーンで役立つはずだ。
現場でよく使われる「オブジェクト指向」などの言葉を、英語で書くと次のようになる。
object-oriented(オブジェクト指向)
aspect-oriented(アスペクト指向)
pattern-oriented(パターン指向)
service-oriented(サービス指向)
ここで注目したいのは「-oriented」が「指向」と訳されていることだ。日本語で指向というと名詞のように思えるが、実のところ-orientedは、orientの過去分詞が転じた「形容詞」なのだ。ちなみにorientを「リーダーズ英和辞典」(研究社)で調べると「(特定の方向に)向く、位置を定める」などと書かれている。それが形容詞化すると「方向づけられた」という意味になる。したがって、日頃はオブジェクト指向と訳されている「object-oriented」の正確な意味合いは「オブジェクトに方向づけられた」となる。言うなれば「オブジェクトで行きましょう」という方向性や方針を示しているのだ。
これだけではピンとこないので、前々回で取り上げた「architecture」を思い返してみよう。architectureは「ある目的(機能)を実現するための方法論やアプローチ」または「その設計(思想)に基づく『技術』」を指す言葉だ。これを踏まえて、前述の-orientedの方向性や方針というニュアンスを考えると……。そう、-orientedは「ある考え方に基づく方向性や方針」あるいは「その方向性(方針)に基づく『技術』」を指す言葉と推測できる。
-orientedが独特なIT英単語である点は、方向性や方針を指すだけでなく、実際に現場で使う「技術」を指す言葉として一般化されていることにある。たとえば「オブジェクト指向プログラミング(object-oriented programming)」とは、「オブジェクトを単位にする考え方に基づいて確立されたプログラミング手法や技術」を指す言葉として一般化されているのだ。
orientedが何を指しているのかを理解すれば、さまざまな「○×指向」に直面しても正確な意味を把握できるだろう。それはIT技術をさらに深く理解できるエンジニアに通じることになる。
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Illustration:Aiko Yamamoto

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