ごく一般的な日常生活において、冗長であるということは、あまり褒められたものではない。「冗長」を「大辞林」(三省堂)で調べると、「くだくだしく長いこと、無駄が多くだらだら長いさま」と出てくる。“余計、無駄”を意味する単語なのだ。
そこで、冗長を意味する英単語「redundancy」を「リーダーズ英和辞典」(研究社)で調べてみた。
redundancy
余分、過剰、冗長、重複
“無駄”の意味を持った意訳が並ぶ。しかし、ITの世界において冗長であることは、決して悪いことではない。非常に重要な役割を持った単語となる。
redundancyが最もよく使用されるのは、セキュリティの場面である。具体的なテキストを見てみよう。
An easy and effective way to achieve availability and reliability is to use redundant servers. If you have more than one server implementing your site, and then one of the servers crashes, the processing requests can be redirected to another server. This provides a highly available Web site. (可用性と信頼性を得るための簡単かつ効果的な方法は、冗長化したサーバー群を使用することです。もしサイトに1台以上のサーバがあるのなら<(冗長化された)サーバが実装されていれば>、その中の1台がクラッシュしても、処理中のリクエストは他のサーバーにリダイレクトされます。このことにより、可用性の高いウェブサイトを提供できるのです。)
例文ではredundantと形容詞として使用されているが、ここでは“予備”を意味していることに注目したい。この場合、redundantは、ウェブなどのサービスを継続的に提供するためのavailability(可用性)やreliability(信頼性)を確保するために必要な方法論となる。
簡単にいえば、サービスを提供する上で、アクセスの集中やサーバのダウンなどのリスクに備えて、予備(余裕のあるリソース)を確保(fail-safe/backup)するのが冗長化というわけだ。このようにITの世界においては、意図的にredundancy(冗長)な部分を構築することが、サービスを継続的に提供するための重要な手段のひとつとなっているのだ。
また、コンピュータで最も壊れやすい部分の1つにHDDがある。この部分における冗長化の手段として使われている技術に「RAID」があるが、その正式な名称は以下のとおりだ。
Redundant Array of Independent (Inexpensive) Disks
独立した(または、安価な)ディスクアレイによる冗長化。複数のディスクを組み合わせて1台のHDDとして仮想化し、1台1台への故障によるリスクを回避するわけだ(RAID 0を除く)。
このようにシステムを冗長化することにより、信頼性などを確保するというのは、エンジニアリング一般にとっても重要な要素となる。そういう意味でも、redundancyという単語の意味は正確に把握しておきたい。
![IT英語 IT英語](/img/2008/03/06/42197/l/3c4f9a5e00318d7f.gif)
Illustration:Aiko Yamamoto
![](/img/blank.gif)
この連載の記事
-
第49回
ビジネス
内部統制周辺で見かける「assessment」 -
第48回
ビジネス
エンジニアがデータをやり取りするときの重要単語 -
第47回
ビジネス
文脈で対象が異なる「peripherals」 -
第45回
ビジネス
帰ってきたIT英語~layoutを表現する単語たち~ -
第44回
ビジネス
IT業界の「diversity」を今から理解しておこう -
第43回
ビジネス
「query」が期待するものは何? -
第42回
ビジネス
ITでは、なぜ「バーチャル」が多用されるのか -
第41回
ビジネス
技術文書に頻出する「foobar」って何だ? -
第40回
ビジネス
ウワサがウワサを呼ぶソーシャルネットワーク・ワード「buzzword」って何だ!? -
第39回
ビジネス
いま流行りの「Gadget」が映し出すITトレンドとは? - この連載の一覧へ