コンピュータの働きを簡単に表わすならば、「与えられたデータを(演算)処理し、結果のデータを返す」となる。この単純な理解は、コンピュータと付き合う上で、ひとつの手助けとなる。実際にコンピュータに何かしらの問題が発生した場合、解決するには「出ている結果(output=出力)」と「与えたデータ(input=入力)」を、確認にするのが第一歩だ。次いでinputは正しいにもかかわらず、outputが期待したものと異なるのであれば、inputとoutputの間にある「処理」の部分を疑うことができる。 このように「input→処理→output」の流れは、コンピュータの働きそのものであるわけだが、そのほかにもデータのやり取りを表わす重要な英単語はたくさん存在する。例えば、「export」と「import」だ。『リーダーズ英和辞典』(研究社)で意味を調べると以下のとおり。
export
輸出する、運び去る
import
輸入する、輸入品
コンピュータで用いるexportは、アプリケーションを使用して作成したデータ(data)を保存(save)する際に、そのアプリケーションで使用しているフォーマット以外でデータを保存するときなどに使用される単語だ。例えば、画像処理ソフトでそのソフト独自のファイルフォーマットではなく、gif形式の画像として保存することなどがexportに当たる。いわば、データが「製品」で、それを他のアプリケーション(外国)に移すために、梱包などをして「輸出品」へと変えることがexportなのだ。そして、その逆を行なうのがimportだ。
また、データのやり取りの際に登場する「バックアップ(backup)」も重要な単語だ。このbackupと同じようなシーンで使われるIT英単語に「dump」がある。backupとdumpはどう違うのだろうか。この2単語も『リーダーズ英和辞典』で意味を調べてみた。
backup
裏打ち、支援、予備、代替品
dump
放り出す、記録装置へ複写する、打ち出す
backupは、重要なデータに問題が発生したときのために、元の状態に戻せる形でコピーして保存しておくことをいう。復旧を目的に、予備(代替品)を用意することだ。それに対して、dumpはある時点のコンピュータの状態(ファイルシステムやメモリ上にロードされているデータ)をファイルに落として保存すること。エラーなどが起こったときにメモリ上に存在していたプログラムをファイルに落として、原因を調査するための手段なのだ。
ところで、そもそもbackupとは、backupされたデータをrecoverやrestoreするためなど、いざというときのために行なうものだ。そこで、ともに「再構築する」「復帰する」といった意味を持つrecoverとrestoreという2単語についても詳細に「Dictionary.com」で調べてみた。
recover
to get back or regain (something lost or taken away):
(なくなったり、盗まれたものを)取り戻す
restore
to bring back into existence, use, or the like:
元の存在、効能、状態に戻す
例えば、HDDが破損してファイルが開けなくなった場合、recoverはHDDから失われたデータを再構築して、ファイルを開けるようにすることを表わしている。それに対して、restoreは事前にファイルを二次記憶媒体(バックアップメディアなど)にコピーしておき、新しいHDDにファイルを移して、ファイルを開けるようにすることである。この微妙な違いが分かるだろうか? 両方とも障害などが起きたときに行なう復旧作業で、日本語では同じように訳されるが、IT英語の文脈においては、微妙に意味が異なる場合もある。
データのやり取りを表わす英単語には、重要なものが多い。エンジニアとしては、英単語の微妙な違いを理解して、データを正しくやり取りできるようにしたい。
Illustration:Aiko Yamamoto
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