受験勉強をしていた頃、とても多くの意味を持つobjectという英単語に手を焼いた人も少なくないだろう。英語のみならず、日本語の技術書やマニュアルにも「オブジェクト」という単語は頻出するが、果たしてその意味を明確に把握できているだろうか? たとえば、次の一文にあるobjectは何を指しているのか。
An database object privilege is a permission granted to an database user.(データベースオブジェクト特権とは、データベースユーザーに与えられている許可のことです)
さっぱり分からない文章だ。そこで「dictionary.com」で調べたら、次のように書かれていた。
object
Something perceptible by one or more of the senses, especially by vision or touch; a material thing.(五感、とりわけ見たり触れたりといった感覚によって知覚できるもの)
たとえば、1本のボールペンを手にすると、重さ、軸の太さ、ボディの材質、インクの色、書き味など、さまざまな情報が視覚や触覚などを通じて伝わってくる。こうしたさまざまな要素によって構成されているものがobjectなのである。
これをエンジニアの理屈で考えると、画像データ1つにしても色数やサイズなどさまざまな要素で構成されたobjectということになる。つまり、IT業界におけるobjectとは“さまざまな要素で構成されたもの”を「一般化」した言葉なのだ(一般化の詳細はコチラを参照 )。
この概念を踏まえて冒頭の英文を読んでみると、文頭のobjectが「さまざまな要素で構成されたデータ」であることが分かる。ということはつまりこの英文は「許可されたユーザはデータベースで扱うさまざまな要素のデータに対して、権限を与えられている」と読むことができる。
ちなみに、このobjectが指す“もの”は物質に限らず組織や仕組みなども含まれる。だから社員1人1人という要素が構成する会社もobjectであるし、仕組みについては仮にAという作業をするためのプログラム(仕組み)もobjectと言える。(このように明確な役割を持ったobjectがいくつも集まり、それぞれの成果を組み合わせて最終的な1つの目的を果たす構造が「オブジェクト指向プログラミング(Object Oriented Programming)」である。)
技術書やマニュアルにobjectが出てきたら、それが物質だけではなく、組織や仕組みを指している場合もあることを意識しよう。そうすれば、文脈ごとにobjectが指す“もの”をイメージできるはずだ。
![]() |
---|
Illustration:Aiko Yamamoto

この連載の記事
-
第49回
ビジネス
内部統制周辺で見かける「assessment」 -
第48回
ビジネス
エンジニアがデータをやり取りするときの重要単語 -
第47回
ビジネス
文脈で対象が異なる「peripherals」 -
第46回
ビジネス
IT英語で登場する「redundancy」は、いい意味? 悪い意味? -
第45回
ビジネス
帰ってきたIT英語~layoutを表現する単語たち~ -
第44回
ビジネス
IT業界の「diversity」を今から理解しておこう -
第43回
ビジネス
「query」が期待するものは何? -
第42回
ビジネス
ITでは、なぜ「バーチャル」が多用されるのか -
第41回
ビジネス
技術文書に頻出する「foobar」って何だ? -
第40回
ビジネス
ウワサがウワサを呼ぶソーシャルネットワーク・ワード「buzzword」って何だ!? -
第39回
ビジネス
いま流行りの「Gadget」が映し出すITトレンドとは? - この連載の一覧へ