月刊アスキー 2007年3月号連動記事
チートの黒マントはPKホイホイの巻
どうもこんにちは、山崎です。前の連載でもやってたWeb版が、なぜか今月から復活です。このたびはオンラインゲームなどを作ってる、出来たてほやほやのベンチャー企業「株式会社DropWave」さんにお邪魔してきましたよ。
わたくし、以前ですね、その、いわゆる「エロゲー」を作ってる企業さんにはお邪魔したことがありまして。そういう現場に、二十歳を過ぎたあたりとおぼしき専門学校を出たばかりのうら若い乙女が沢山働いているのを見て驚いたわけです。彼女たちがなにをしていたかというと、絵を描いていた、黙々と。そのとき見た、生涯忘れられない光景のひとつに、
「自分がバナナを持っている手を物凄く真剣にスケッチしてた、
白桃のような頬の乙女」
ってのがありましたっけ、エエ。いやあ勉強になった。
という話はさておいて、この話で本来なにが言いたかったのかというと、
「エロゲーの制作現場のマンパワーの9割は絵に割かれていて、
プログラム仕事は残り1割ぐらいだった」
ってことです。私の記憶が正しければ、従業員50名ほどのうち、プログラマーはせいぜい4人ほどだった。
で、今回取材させていただいたDropWaveさんはどうだったかというと、プログラマチームが、グラフィックを担当している人数を凌駕していた。なぜなのか。オンラインゲームとはどのような作りになっているのか。DropWaveさんの開発したゲームの一例をとって教えてもらったところ、こんな感じ。
「クライアントは全部Flashで作って、サーバのほうはLinux上のサーバプログラムを独自に開発しまして、Flashのクライアントと通信しながらゲームを行っていると。で、ゲーム自体は、Linuxサーバのほうでゲームのプログラムが動いてまして、で、Flashのクライアントは、結果を表示しているだけということになります。それでチートというか、悪いことができないようなコードになってます」
このページをご覧の方は先刻承知なのかもしれないが、わたしは「チート」という言葉が解らなかった。麻雀用語かと思ったぐらいである。チートって、何? 説明してもらったところ、
「たとえばですね、MMORPGで、滅茶苦茶強いアイテムを、サーバに乗り込んで行ってプログラムを書き換えて作ってしまったりとか、あるいはクライアントのプログラムを書き換えて、拾ってもいないアイテムを拾ったという信号をサーバに送って自分だけ沢山アイテムを持ったり」
ということなのだった。なるほど、そりゃプログラムするほうは大変だ、マンパワーが必要になるぞと納得すると同時に、“なぜわたしは「ウルティマオンライン」でゲーム上に存在しないはずのアイテムを譲ってもらえたのか”という、過去の記憶がよみがえってきて、あれは「チート」で作ったアイテムだったのだと初めて理解した。チートで作ったアイテムを大喜びでもらってたってことなのか! うわ、恥ずかしい、自分が。どうりであの黒いマントを着て得意になって歩くと、PKに狙われたわけである。持つな持たすなチートのアイテム。なんか昭和の悪書追放運動みたいだけど、まあ、そういうことだったわけですね。
次、誌面が足りず書けなかったお話のその二。
DropWaveの代表取締役社長である本城さんは、かつて「C MAGAZINE」に記事を書いていたことがあり、社長になった現在でもソフトバンク クリエイティブから書籍を出す予定がある。多忙のなか、なぜ書籍の執筆なのかと尋ねたところ、
「なにかのノウハウをしっかり学び直すには、一冊書籍を書いちゃうのが一石二鳥だから」 なんだそうだ。たしかに。一粒で二度美味しい。そんなわけでわたしたちも赤坂はソフトバンク クリエイティブの社屋に立ち入り、産業スパイ、違う、本城さんたちの打ち合わせ風景を見学した。ん、やっぱり産業スパイだったかもしれない。けれどソフトバンクの編集者の方は、「月刊アスキーです、お邪魔します」と素性を明かしても、お茶まで出してくれた。いい人だった。
ちなみに本城さんが出す予定の本は「シェーダー」に関するもの。打ち合わせの内容は別に産業スパイと疑われるのを恐れてのことではなく、理解不可能だったので割愛。
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