ニコンからクラシカルなデザインのフルサイズミラーレス「Zf」が発表された。ボディ価格は約30万円で10月発売予定。
2021年にAPS-Cミラーレス「Zfc」が発売されたときから、いつかはフルサイズも、とニコンファンには熱望されていた。デザインは銀塩時代の名機「FM/FE」シリーズを継承。同様のコンセプトとしては2013年のデジタル一眼レフ「Df」が始まりで、当時のフラッグシップ「D4」の撮像素子が搭載され、古くからのカメラマニアを中心に注目された。
一方「Zfc」はお手頃な価格でカジュアルにレトロ感が楽しめるということで、当時を知らない若いユーザーも含めてヒット製品になった。
そして今回登場する「Zf」。スペックから推測するとベースとなっているのは「Z6Ⅱ」と思われる。果たしてどんなカメラに仕上がっているのか興味深々だ。
ついにフルサイズセンサー搭載
ダイヤルには真鍮を使うコダワリ
丸み帯びた今時のデザインとは違い、「Zf」はペンタ部の直線的な形状などが特徴的。メーカーロゴも現在の斜体ではなく昔ながらの直立体を採用している。ボディーカラーはブラックのみ。「Zfc」が当初シルバーのみで、後にブラックが登場したことから、「Zf」もいずれはシルバーボディーが登場する予感もする(個人の意見です)。
正面から見たサイズ感がAPS-Cの「Zfc」の134.5×93.5ミリより大きいのは当然だが、ベース機の「Z6Ⅱ」の134×100.5ミリよりもわずかに大きい。ただ、奥行は「Z6Ⅱ」の69.5ミリに対し49ミリとスリムなので、そのぶん小柄に感じる。
「Zfc」ではフラットだったボディー前面には、小振りながらグリップを備えている。とはいえ「Z6Ⅱ」のグリップに比べると心許ないので、ホールド感を重視するなら別売の外付グリップ「Z f-GR1」(1万8700円)の使用がオススメだ。
上面や背面の操作系は「Zfc」と同等だが、シャッタースピードに露出補正、ISO感度のダイヤルには真鍮を採用し、触れてみると金属の質感が心地よい。しっかりとしたクリック感や塗装の美しさもあわせ高級感がある。
またシャッタースピードダイヤル下部に配置された「静止画/動画セレクター」にはB&Wモードが追加された。瞬時に切り替えできるので、これを機にモノクロ写真を楽しんでもみるのもいいかもしれない。
なおシャッターボタンにはネジ穴が切ってあるが、ソフトシャッター用らしく、昔ながらのケーブルレリーズは使用できない・・・ちょっと残念。
フルサイズミラーレスでは初
マイクロSDカードスロットを搭載
EVFは369万ドット倍率0.8倍と「Z6Ⅱ」と同じ。クリアな光学系で相変わらず視認性は良い。
背面液晶も3.2型210万ドットと同じだが、可動方式がチルト式から「Zfc」と同様のバリアングル式に変更された。
側面端子は「Z6Ⅱ」には装備されていたアクセサリーターミナルが省かれ、リモート撮影用のコードやコントローラーは使用できない。そのためリモート撮影をするにはBluetooth接続のリモコン「ML-L7」(3530円)か、スマホアプリからの操作になる。
バッテリーは「Z6Ⅱ」と同じ「EN-EL15c」で、公称の撮影可能枚数は約410コマ。ユニークなのがメディアで、SD(UHS-Ⅱ)とマイクロSD(UHS-Ⅰ)のディアルスロットを採用。
ボディーサイズを抑えつつ同時記録の安全性が保たれる。マイクロSDスロット搭載のノートPCも増える中、ぜひ今後スタンダードになって欲しい機能だ。
最上位モデル「Z9」の最新機能も搭載
世界初の「フォーカスポイントVR」
撮像素子は2450万画素と「Z6Ⅱ」と同じだが、「被写体検出AF」や「3-DトラッキングAF」、画質はJPEGのNORMALになるがプリチャプチャーに対応した秒30コマの高速連写など、フラッグシップモデル「Z9」の機能の一部が搭載されている。
なにより個人的には従来の「Z」シリーズで不満だった、撮影後のプレビューの遅さやAF-Cで合焦表示できない点が解消されているのも大きい。
またニコンで初めて搭載されたのが「ピクセルシフト撮影」。撮像素子をずらして撮影した画像を合成し、解像感や画素数を向上させる他メーカーではお馴染み機能だ。三脚固定や専用ソフト(現状まだ対応していなので実際には試せていない)での処理が必要になる。
ただ高画素機に搭載されることが多い機能なので、「Zf」という製品の性格を考えると少し不自然。ということは・・・・今後しかも近いうちに発表されるZシリーズの高画素機に搭載される機能を、一足早くお披露目したのでは推測してしまう。楽しみに待つことにしよう。
実際に撮影した写真を見ると、画質も「Z6Ⅱ」と同等という印象。メリハリのある発色やコントラストの絵作りで、細部の解像感も高い。
高感度はISO6400まではノイズレスで、ISO25600でも画質劣化は少ない。常用の最高感度は「Z6Ⅱ」のISO51200からISO64000へ引き上げられているが、この1/3EVの違いでも劣化度には差が見える。実質高感度画質も「Z6Ⅱ」と同等と言えるだろう
手ブレ補正の効果は約8段で、さらに測距点付近のブレを抑制する「フォーカスポイントVR」も搭載。ただ実際に試したところ試作機だったからか、もしくはレンズによるのか、はたまた自身の油断したせいか、「Z40mmF2 SE」の場合、遠景なら1/5秒程度、近景だと1/10秒くらいが安全と言った感じだった。
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