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ASCII Power Review 第137回

ダイヤル操作が楽しいカメラです

ニコン「Z fc」実機レビュー = クラシックカメラの皮をかぶった最新ミラーレス一眼なのだ!

2021年08月04日 13時00分更新

文● 写真 岡田清孝 + 編集● ASCII PowerReview軍団

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 ニコンのミラーレスZシリーズの最新モデル「Z fc」が発売された。最大の特徴は銀塩時代の名機「FM」シリーズを再現したデザインだ。

 かつて「Df」という同様なデザインコンセプトのデジタル一眼レフは存在したが、今回はミラーレスで再登場となった。当時を知る古くからのニコンファンにとっては気になる一台だ。

量販店価格はボディーのみでは12万9800円。「NIKKOR Z DX 16-50㎜F3.5-6.3 VR」とのレンズキットが14万9600円。いずれも発売前から予約殺到で現在は絶賛品薄中。

銀塩時代のAiニッコールを彷彿とさせるデザインの「NIKKOR Z 28㎜F2.8 SE」とのレンズキット(15万9500円)も同時に発表されたが、諸事情により発売日は未定となった。

2013年に登場したデジタル一眼レフ「Df」。惜しまれつつも2020年に生産終了。デザインは正確に言うと「FE」シリーズを再現している。「FM」シリーズと「FE」シリーズの外観の違い(FM3は除く)は古くからのニコンマニアなら即座に判別できるはず。

Z 50を刷新した
クラシック(スタイル)カメラなのだ

 

 「Z fc」が搭載する、APS-Cサイズの有効2088画素の撮像素子や236万ドットのEVFなど基本的なスペックは2019年に発売された「Z 50」とほぼ同等で兄弟機という位置付けになる。価格もズームレンズキットなら1万円程度しか変わらない。デザイン以外で主な違いはストロボが非搭載になり、背面液晶がチルト式からバリアングル式に変更。USB端子もMicroBからType-CになりUSB給電も可能になった。

 ボディーはAPS-Cミラーレスなので、当然フルサイズ一眼だった「Df」より小型で軽量。またグリップが無くなったことで「Z 50」よりもスリムに感じる。

ボディーサイズは134.5(W)×93.5(H)×43.5(D)㎜。重量はメディア、バッテリー込みで約445g。

上面にダイヤルが並ぶアナログなデザイン。グリップレスなのでスリムに感じるが、最薄部は「Z 50」と大差ないような気も。

 外観で魅かれるのはペンタ部の造り込み。現在の斜体とは異なる当時のメーカーロゴはもちろん、形状やサイズもかなり忠実に再現され、かつて「FM」シリーズを愛用していた人なら懐かしく感じるはずだ。

ペンタ部のアップ。製品ロゴが無ければ「FM」シリーズと区別が付かないほどの再現性。

 液晶ディスプレーを閉じるとボディー周りの人工皮革のような模様でレトロ感を演出し、ファインダーには丸窓風のアイピースが装着されている。熱狂的な丸窓信者が納得するかは微妙だが、デザインという点ではナイスアイディアだ。

Zシリーズでは初めてのバリアングル液晶を採用。液晶ディスプレーを閉じるとよりレトロ感が高まる。

背面のボタン配置は「Z 50」よりは「Z 7/6」シリーズに近く感じるが、それぞれ微妙な違いがある。十字キーはもう少しクリック感が欲しいところ。

ファインダーのアイピースを外すと「Z 50」同様の四角の接眼窓が見える。アイピースにもいろいろなバリエーションがあると面白いかもしれない。

 上面のダイヤル類は右肩から「露出補正」に、シャッタースピード、ファインダーを挟んで「ISO感度」が並ぶ。

 「露出補正」ダイヤルは他社のアナログ操作系の機種と同様に位置に配置され、「C」(カスタム)ポジジョンでは、コマンドダイヤル(前後は設定で入れ替え可能)でダイレクトに行うこともできる。「Df」では露出補正は「FE」シリーズに近い左肩に配置され、しかも「C」ポジジョンが無かったことを考えると、このほうが断然操作はしやすい。

「露出補正」ダイヤルにロックボタンは無いが、クリック感が硬めで不意に動いてしまうことは無さそうだ。

 「シャッタースピード」ダイヤルは1/4000秒~4秒の間は昔ながらの1EV刻みでの設定になる。1/3EVの数値や4秒以上の長時間露光を行う際は「1/3STEP」のポジジョンにしてコマンドダイヤルで操作する。

「シャッタースピード」ダイヤルは1/4000秒~4秒の間はフリーで回る。「B」(バルブ)から「1/3STEP」の間はロックボタンを押しながらの操作になる。

 「ISO感度」ダイヤルではISO100からISO51200まで1/3EV刻みで設定ができ、拡張感度は1EV刻みになる。ただISO感度をオートで撮影する場合は、メニューから感度自動制御をONに設定するが、その際「ISO感度」ダイヤルのポジジョンが自動制御の最低感度になってしまう。

 例えば「ISO感度」ダイヤルがISO1600に設定されたままISO感度オートで撮影すると、明るい屋外でもISO感度はISO1600より下がらなくなる。仕組みを理解すれば問題はないがISOオートのポジジョンがあってらよかったのにと思う。

ISO感度ダイヤルはロックボタンを押しながら操作するが、即座に変更したい時のためにロックフリーの機構が欲しかった。

 上面に並ぶアナログなダイヤルを見ると、「露出補正」と「シャッタースピード」、「ISO感度」それぞれ相対関係にあることが一目でわかり、写真における露出の概念を理解しやすい。かつて「FM」シリーズが写真学校などで入門機として推奨されていたのも納得だ。

 そうなると絞り値もアナログ表示でと欲張りたくもなるが、ボディースペースや絞りリングを持たない現行のレンズでは高望みというもの。その代わりと言っては何だが、F値が表示される小窓が設置されている。このおかげで露出に関わる数値は上面で全て把握することができる。

絞り値を表示するためだけの小さな液晶パネルを設定。このような粋な計らいがマニアには嬉しい。

 シャッターボタンに触れるとカチカチとした遊びがあり、少し押し込むと半押しに、そこから深めのストロークでシャッターが切れる。現在の機種のソフトタッチよりしっかり押し込む感触もレトロ感の演出かもしれない。

シャッターボタンもレトロな感触。ただ昔ながらのネジ式レリーズの穴が無いのは少し残念。

キットレンズもニコンらしい写りの良さ
28mmF2.8で散歩だ

 

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