URBANOや石鹸で洗えるスマホなど、数々の名機を生み出してきた京セラ。日本では一定の成功を収めた同社も、グローバル市場では長年苦戦が続いていました。
現在は自社の強みを生かした製品展開を行なうことで、アメリカ市場を中心に存在感ある日本メーカーとして奮闘しています。
前編では2000年から2011年ごろまで、BlackBerryなどのライバル登場からミドルレンジクラスの安価な端末での復活劇までを紹介。後編となる今回は、京セラの「タフネススマホ」の信頼を獲得するまでの道のりを振り返ります。
低価格スマホのイメージを一新、京セラのアイデンティティーを確立
2画面スマートフォン「Echo」は、京セラの名前を北米中に知らしめることに成功しました。とはいえ、横方向への折り畳みギミックを搭載したため本体の厚みもあることから、万人向けと言うよりもニッチな製品でした。そこで京セラは2012年に販売数を本気で増やしに行く製品を相次いで発表します。
まずは、横スライド型でQWERTYキーボードを搭載した「Kyocera Rise」が登場。実は京セラは前年にも同形状のコンパクトモデル「Kyocera Milano」を発売しているのですが、このRiseはスーツ姿にもあうようなスタイリッシュなデザインに変更し、さらにはディスプレーをより大きい3.5型に変更した製品です。
しかも、価格はMVNOキャリアのVirgin Mobileから99ドルで販売されたのです。一見すると地味な製品ですが、これがメッセージを多用する消費者たちから大きな支持を受けます。
北米では誰もが2年間のポストペイド契約が必要なiPhoneを買えるわけではありません。学生や移民などを始めとする、中低所得者層にとって手軽に買えるスマートフォンはプリペイド製品になります。
けれども、100ドル以下のプリペイドAndroidスマートフォンは「価格は安いもののタッチパネルが使いにくい」製品が多く、我慢しながら使っていたユーザーも多かったはず。
フィーチャーフォンからスマートフォンに乗り換え、FacebookやTwitterでメッセージを送ろうにも反応の悪いタッチパネルでは、むしろフィーチャーフォンの10キーのほうが打ちやすかったのです。
Riseは「高品質」「高デザイン」「押しやすいキーボード」と、それまでの低価格スマートフォンの不満を全て無くした製品だったのです。BlackBerryをだましだまし使っていたユーザーにとっても手軽なメッセンジャー端末として乗り換え候補に挙げられる製品だったに違いありません。
ちなみに、2012年のBlackBerryは年間の端末販売台数が半減し、新機種はマイナーチェンジの3モデルに留まっています。ちょうど10年前にPalm OS機を出しながらもBlackBerryの前に敗れ去った京セラでしたが、万人向けのメッセンジャー端末でこの年から存在感をじわじわと高めていくのです。
そして同時に発表された製品が「Kyocera Hydro」でした。Hydroは名前から想像できるように防水機能を搭載したスマートフォンです。
IPX5/IPX7の防水対応で、ちょっと水に濡れたくらいでは壊れません。本体も背面側に細かいすべり止めのドット加工をしたデザインで、多少乱雑に使っても壊れにくい雰囲気に仕上げられていました。
こちらもプリペイド市場向けですが、Rise同様に「プリペイド向け低価格端末は品質が悪い」という概念を払拭させることに成功しました。
このRiseとHydroの2製品により京セラはプリペイド端末市場でシェアを高めていきます。とくに防水機能は端末をラフに扱えるということから学生やタクシー運転手などの間でも評判が高まっていきました。
プリペイドで気軽に買えることから、iPhone所有者が2台めとしてHydroを買うケースもあったかもしれません。防水対応スマートフォンは京セラ以外からはほとんど製品が無かったこともあり、Hydro人気は「京セラ=防水」というイメージを一気に高めていきます。
もちろん2012年のスマートフォン市場の話題は2年ぶりにフルモデルチェンジした「iPhone 5」と、豊富なカラバリが魅力的な「iPhone 5c」、そして前年モデルからデザインと機能を向上させた「GALAXY SIII」でした。
そんな華やかなこれらのメジャー製品の裏で、京セラはその人気を着々と高めていったのです。
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