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グローバルに勝てるスタートアップが「スケールアップ」するための条件とは?

~FoundersNation株式会社の名倉勝氏が語る、日本のエコシステムが目指すべき地平~

連載
プラットフォーム学~先端事例から学ぶ、社会実装の現在点

提供: 京都大学プラットフォーム学卓越大学院プログラム

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 2026年7月7日(火)に、京都大学「プラットフォーム学卓越大学院プログラム」が主催する連続セミナーの今年度第3回が開催された。本セミナーは、新しい社会基盤のあり方を探る同大学院生や研究者に向けて、多様な業界のケーススタディを提供することを目的としている。

 今回のセミナーでは、FoundersNation株式会社の代表取締役CEOを務める名倉勝氏が登壇。「スタートアップのバリューアップとプラットフォーム」と題し、大企業が破壊的イノベーションを起こしにくい構造的理由から、国内外のエコシステムにおける決定的な格差、そして日本が真に注力すべき「スケールアップ戦略」にいたるまで、自身の経験と豊富なデータを交えた講義が行われた。

異色のキャリアを持つ名倉氏が目指す「スケラレーター」の役割

 名倉氏は、東京大学大学院で核融合工学(材料工学)の博士号(Ph.D.)を取得後、文部科学省に入省するという異色のキャリアの持ち主だ。文科省時代には、大学発ベンチャーの創出を支援する「START」事業や、起業家教育を推進する「EDGE」プログラムといった主要な国のディープテックスタートアップ政策や起業家教育政策の企画立案や立ち上げを担当していた。

 政策立案に携わる中でスタートアップやイノベーションの世界に魅了された名倉氏は、その後、マサチューセッツ工科大学(MIT)へ留学。工学部とビジネススクールのジョイントプログラムである「システムデザインマネジメント(SDM)」で、複雑な社会的・技術的システムのデザインと、イノベーション・エコシステムの研究に従事した。

 帰国後は、経営共創基盤(IGPI)でのコンサルティングやベンチャーキャピタル(VC)のBeyond Next Venturesでの実務を経て、2020年には日本最大級のスタートアップキャンパス「CIC Tokyo」の立ち上げを中核メンバーとして参画。350社以上のスタートアップが入居する一大拠点へと成長させることに貢献し、CIC Tokyoは政府や東京都のスタートアップ戦略の発表の場として選ばれるなど、日本のエコシステムでの存在感を確立した。

 こうした多様な視点から長年スタートアップ支援を続けてきた名倉氏が、2025年に新しく設立したのがFoundersNation株式会社だ。同社は自らを、初期の創出を担う「インキュベーター」や立ち上げを加速させる「アクセラレーター」の先にある存在として、「スケラレーター(Scalerator)」と定義している。

 名倉氏は独立の背景を次のように語る。 「日本でもスタートアップの数自体は増えてきました。しかし、そこから本当に大きくなって世の中を変えるような企業がまだ十分に生まれていません。企業を生み出す『スタートアップ政策』だけでなく、企業を大きく育てる『スケールアップ政策』の実施に、国も我々も舵を切る必要があります」

イノベーションの聖地・MITで見た「自走するエコシステム」の正体

 名倉氏がエコシステムの理想像として挙げるのが、留学先であったMITだ。世界有数の理系大学であるMITは、単に研究成果を上げるだけでなく、技術の「社会実装」に非常に強い熱量を持っている。2015年の統計によると、MITの卒業生が創業した会社は世界に3万社以上存在するという。

 MITのエコシステムの特徴は、キャンパスの狭さと、そこに集積するプレイヤーの高密度さにある。非常に狭いエリアの中に、工学部・理学部、ビジネススクール(Sloan School of Management)、そしてGoogleやMicrosoftといった世界的テック企業のオフィスが密集している。さらに、医学部や法学部を持たないMITは、ボストン周辺の他の大学や病院、地域のエコシステムと緊密に連携することで、巨大なイノベーションを創出している。

 ソフト面における起業家教育や支援リソースも体系化されている。「 Martin Trust Center for MIT Entrepreneurship」を中心に、学内には60以上の起業・イノベーション関連の講義が存在する。それらは、アイデア着想段階から、プロジェクト探索、そして実際の起業を加速させるアクセラレーションプログラムである「MITデルタV(Delta V)」にいたるまで、ロケットの打ち上げ軌道(第一宇宙速度への加速)になぞらえて緻密にマッピングされている。

 特筆すべきは、学生自身が主体となって運営する活動が強力に機能している点だ。1989年から続く学生主催のビジネスプランコンテスト「MIT 100K」では、優勝チームにその名の通り10万ドル(日本円で約1500万円)の賞金が手渡され、そのまま事業成長の資金に充てられる。また、大規模ハッカソンである「HackMIT」など、学生が中心となって熱量高いコミュニティを維持し、そこに投資家やメンターが引き寄せられる「自走型のエコシステム」が確立されている。名倉氏は「これを見て、日本におけるエコシステムや環境の構築は、まだまだ伸び代があると感じた」と振り返る。

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