サッカーとテクノロジー〔FIFAワールドカップ2026〕 第5回
国連加盟国よりも多い国・地域を“サッカーという共通言語”でつなぐために
なぜサッカーは国境を越えるのか? スイス・FIFA本部を歩いて考えた
2026年06月23日 10時00分更新
評議室と瞑想室 ― 2つの“ボーダーレスな意思決定の場”
地下3階には、37名のFIFA評議会メンバーが集まる評議室がある。四半期ごとに世界の6大陸から理事が集まり、重要な決定が下される。
およそ15年前の2012年、FIFA理事会には女性が一人もいなかった。しかし、現在では「各大陸連盟が少なくとも1名の女性を評議会メンバーに選出する」という制度が導入されており、7名の女性が評議会メンバーとなっている。今年3月の評議会では、各国の女性ナショナルチームに女性コーチを起用することを求める方針も決まった。
評議室は、評議員たちがサッカーのピッチを囲んで座るようなデザインになっている。ピッチを中心に据えたのは「各国の立場や利害ではなく、常にサッカーと選手を中心に考えよう」という意思の表れだという。さらに頭上には、サッカースタジアムを思わせる楕円形のシャンデリアが輝いている。
この評議室のそばには「瞑想室」もある。国や宗教、文化的背景を問わず、すべての訪問者が使えるスペースだ。重要な意思決定を前に、ここで静かに瞑想する評議会メンバーもいるのだろう。
瞑想室の発想の源になったのは、エジプトのピラミッドだという。文化や宗教、背景の違いを超えて人々を結びつけてきた、象徴的な遺跡――その普遍性が、世界中から多様な人々が集うこの部屋にふさわしいと考えた。もっとも、地下3階にピラミッドは建てられないので、逆さにして頂点を切り落としたような部屋の形とした。壁一面を覆うのは、光を透過するアフガニスタン産の大理石(オニックス)である。
* * *
地下から地上へ戻り、ビルの外に出る。太陽がまぶしい。すぐ横には、フルサイズのピッチが広がり、加盟各国の国旗がはためいていた。
FIFA本部の敷地面積は4万平方メートルを超える。本館ビルを囲む庭園の植栽は、アフリカ、アジア、オセアニア、南米、北中米、ヨーロッパと、6つのサッカー大陸に由来している。つまり、世界中の植物がひとつの庭に集っているわけだ。サッカーは世界をつなぐ――。そうしたFIFAの思想が、ここにも宿っていた。
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