サッカーとテクノロジー〔FIFAワールドカップ2026〕 第6回
カーボベルデ、キュラソー…… 初出場・小国チームの健闘が止まらない裏側にあるのは“データの力”か
番狂わせ続きのサッカーW杯、その背景に“AI参謀”あり? すべての参加チームが使う「FIFA AI Pro」とは
2026年06月25日 18時30分更新
6月15日、アトランタ。FIFAワールドカップのグループステージ(予選リーグ)で、ワールドカップ初出場のカーボベルデが、優勝候補の強豪国・スペインを90分間封じ込め、0-0の引き分けに持ち込んだ。試合前に、この人口55万人というアフリカの小さな島国の名を知っていた人はどれだけいただろうか。事前予想の的中率はわずか6.5%、世界中が驚いた夜だった。
今大会の“番狂わせ”はこれにとどまらない。たとえばカリブ海の島国・キュラソーも6月21日、南米の実力国であるエクアドルを抑え込み、0-0の引き分けで勝ち点を獲得した。キュラソーも初出場の国であり、人口はわずか15万人だ。
カーボベルデやキュラソーのベンチが試合前にどんな戦略を立て、準備を行ったのか、わたしたちには知る術がない。ただ、ひとつ確かなことがある。今大会では、カーボベルデにもスペインにも、キュラソーにもエクアドルにも、ブラジル、イングランド、日本にも、すべての参加チームにFIFAから“サッカーAI”搭載のデータ分析ツールが提供されている。
それが、「FIFA AI Pro」というツールだ。
※編集部注:以下、記事中のスライド画像はすべて、FIFAの記者説明会で投影された資料をもとに、編集部で生成AIを使い翻訳および独自画像の生成を行ったものです。
チーム間の「データ格差」は、生データの提供だけでは埋まらなかった
FIFA AI Proの開発は、欧州のサッカーリーグで、ある小さなクラブチームがデータ分析により躍進したことが発端になったという。データに基づいて優れた選手を発掘し、戦術を判断することで、資金力で10倍の差がある大きなクラブチームとも対等に渡り合える――。これと同じ発想を、ワールドカップに持ち込んだわけだ。
もともとFIFAでは、各国・地域のチームに対してデータや分析ツールを提供していなかった。資金力のある国のチームは自力でデータを集め、分析できたが、そうでない国のチームは取り残され、強豪国と弱小国の間のデータ格差は拡大し続けていた。
FIFAが初めて試合の生データを提供したのは、2018年のことだ。VAR、ゴールラインテクノロジー、ボール追跡といった技術によって、すべてのチームが試合や個々のプレーの生データを手に入れた。ただし、データの分析には専属のアナリストやデータサイエンティスト集団が必要であり、そうした人材を抱えられない国のチームは取り残されたままだった。必要なのは、データそのものではなく、データを戦略判断に使えるかたちに変換する仕組みである。
この課題を解決するために、FIFAはテクノロジーパートナーのLenovoと手を組み、サッカー専用AIの開発に取り組んだ。目標は、フォーメーションやプレッシングのトリガー、攻守切り替えのパターン、選手同士の関係性といった“サッカーのプレーの意味”そのものを理解できるAIの開発だった。
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