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サッカーとテクノロジー〔FIFAワールドカップ2026〕 第2回

「FIFAワールドカップ 2026」開幕、今大会の革新的テクノロジーとLenovoの関係

サッカーとテクノロジーの16年 ― それはランパードの“幻のゴール”から始まった

2026年06月12日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 きっかけは、2010年のFIFAワールドカップ 南アフリカ大会だった。

 6月27日の決勝トーナメント1回戦、ドイツを相手に戦っていたイングランドのランパード選手が放ったシュートは、明らかにゴールラインを越えていた。だが、審判団が下したのはノーゴールの判定。誰の目にも明らかなゴールが、なかったことにされた瞬間だ。

 スキャンダルとも言えるこの“幻のゴール”が、FIFAがテクノロジーによる判定支援の本格導入を決めるきっかけとなった。そして、それから16年が経った。

 日本時間6月12日、北中米で開幕した2026 FIFAワールドカップでは、サッカーとテクノロジーとの関係はより密接なものになっている。今大会では、AIが審判を支援し、選手のアバターがオフサイドを視覚化し、全48チームが試合データ分析ツールを手にするのだ。その技術基盤を担うのが、FIFA初のテクノロジーパートナーであるLenovoだ。

「Lenovo Tech World @ CES 2026」より、Lenovo CEOのヤン・ユワンチン(Yuanqing Yang)氏、FIFA 会長のジャンニ・インファンティーノ(Gianni Infantino)氏

単なるスポンサーを超えた、LenovoとFIFAの関係

 FIFAはこれまで、デバイス、インフラ、分析ツールなど、大会に必要なテクノロジーを、それぞれ別の企業から調達してきた。しかし、今大会ではLenovoが、FIFAにとって初の、そして唯一の公式テクノロジーパートナーとして、その中核を担う。

 Lenovoは、FIFAの「トップティアパートナー」7社のうちの1社だが、公式PC、公式スマートフォン(Motorola)、サーバー、ストレージ、ITサービス、AIソリューションまでを一手に引き受けるのは同社だけだ。「直近のオリンピックを例にとると、これだけの範囲をカバーするには8~10社が必要だった」と、Lenovo 最高コミュニケーション責任者のジェフ・シェファー(Jeff Shafer)氏は指摘する。

 Lenovoの露出の大きさも桁外れだ。FIFAの試算では、今大会をTVなどのメディアで触れる人は累計60億人、決勝だけで20億人にのぼるという。これは、2022年のカタール大会の50億人から、約20%の増加となる。スタジアムのピッチボードには、男子の各試合で7分半、Lenovoのロゴが流れ、各ハーフ22分に新設されたウォーターブレイクの前後にも、同社の広告が放送に乗る予定だという。

 ただし、こうした「見える露出」は、パートナーシップの一側面にすぎない。

 両者の提携は2024年10月、Lenovoの年次イベント「Lenovo Tech World 2024」で発表された。基調講演には、FIFA会長のジャンニ・インファンティーノ氏がサプライズゲストとして登場し、「データとテクノロジーの組み合わせでファンをより深く理解し、FIFAワールドカップ2026と、女子ワールドカップ2027で比類なき体験を生み出す」と語り、Lenovo CEOであるヤン・ユワンチン氏と固い握手を交わした。

 Lenovo APACの最高マーケティング責任者、バスカル・チャウダリー(Bhaskar Choudhuri)氏は「FIFA(ワールドカップという舞台)で実現できるならば、どこででもできる」と語る。Lenovoにとっては、史上最大規模のスポーツ世界大会を自社のテクノロジーで支えることは、大きな実績となる。

AIで「サッカーの民主化」を目指す

 今大会の目玉となるテクノロジーには、次のようなものがある。いずれもLenovoとFIFAが共同開発したものだ。

■FIFA AI Pro:全48チームが使える戦術分析AI
 過去のデータから2000以上の指標を解析し、たとえば「相手チームの左サイドから突き崩すパターンを教えてほしい」といった質問に、映像クリップやグラフも交えながらリアルタイムで答える。これまでは、資金力のある強豪国が専属アナリストを雇って実現していたレベルの戦術分析を、すべてのチームに届けることが狙いだ。

■3D Digital Avatar:選手のリアルな3Dアバター
 選手一人ひとりを3Dモデル化し、オフサイド判定の映像に使用する。「あの判定は本当に正しかったのか」というファンの疑念を、視覚的な説得力で解消する。さらに、攻撃選手がゴールキーパーの視界を遮っていたかどうかの判定や、ボールがラインを割ったタイミングの検証にも、この3Dモデルが活用される。

■Referee View:ピッチからの視点を放送で楽しむ
 審判が身に着けるボディカメラの映像を、放送用映像に組み込む技術だ。審判がピッチを駆け回っても映像の揺れが抑えられるよう、AIによる映像の安定化処理がリアルタイムに行われる。これまでは見られなかった、迫力のある「ピッチからの視点」が、世界中の視聴者に届くことになる。

■Advanced Semi-Automated Off-side Technology(SAOT):AIによるオフサイド判定補助
 光学トラッキングカメラの映像とAIを組み合わせ、オフサイド判定を自動的に補助するテクノロジー。前回のカタール大会ではVARへの情報提供にとどまっていたが、今大会からは副審に直接シグナルが送信され、オフサイド判定の迅速化と精度向上を図る。

 こうしたテクノロジーを支えるITインフラも、全面的にLenovoが担う。スイス・チューリッヒにあるFIFA本部の地下には、世界各地で開催される大会で使われるPCを準備・発送する専用ウェアハウスがある。4月の現地取材時には、米国に発送される400台のノートPCを3~4日で出荷する準備が進んでいた。Lenovoが投入するデバイスは1万台超、技術スタッフは数百名にのぼるという。

 LenovoとFIFAの契約は今大会だけでなく、来年ブラジルで開催される「FIFA女子ワールドカップ 2027」まで続く。

 ただし、Lenovo グローバルCIOのアーサー・フー(Art Hu)氏は「これはワールドカップのためだけの技術ではない」と強調する。スポーツの世界で鍛え上げたAIやインフラを、ビジネスや社会のあらゆる場面に展開していくのが、Lenovoの狙いだとフー氏は説明した。

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  • 角川アスキー総合研究所