科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第105回
【JSTnews6月号掲載】戦略的創造研究推進事業CREST 研究領域「材料創製および循環プロセスの革新的融合基盤技術の創出とその学理構築」/研究課題「物質循環型半導体集積回路の創製」
次世代エレクトロニクスデバイスの性能向上のために重要な、有機薄膜の自己組織化メカニズムを解明
2026年06月16日 12時00分更新
スマートフォンやフレキシブルディスプレイなどの電子機器には、炭素を中心とした有機材料を用いた有機薄膜トランジスタなどのデバイスが使われています。これらのデバイスの性能を最大限に引き出すためには、固体表面上に形成される有機半導体分子が整然と並ぶことが極めて重要です。
北里大学未来工学部の渡辺豪教授らの研究チームは、プロペラ状骨格を持つ三脚型トリプチセン分子が薄膜を形成する時に膜の厚みや分子の種類、固体基板の有無が分子の並び方にどのように影響するかを、分子を構成する1つ1つの原子の動きをスーパーコンピューターで時間的に追跡・再現する「全原子分子動力学シミュレーション」で可視化。自己組織化する薄膜表面上での分子配向と秩序化の「動的プロセス」を分子レベルで解明しました。同チームは、分子が厚く積み重なった塊状態では分子の向きが互い違いに配向する「反平行配向」が安定であるのに対し、超薄膜相では固体表面の影響で分子の向きがそろう「平行配向」へと優先的に切り替わるメカニズムを発見。さらに、加熱した後に徐々に冷却するプロセスで段差状構造から平坦な膜への自己修復および高秩序化する過程を再現し、そのメカニズムを定量的に実証することに成功しました。また、分子構造の違いが膜の構造に与える影響も明らかにしました。
今回の手法は、有機半導体分子などがどのように結晶薄膜を形成し、構造を安定させるかを解析する上で重要な役割を担うものです。高性能な機能性有機薄膜の創製やデバイスの開発にも役立つと考えられます。
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