科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第112回
【JSTnews7月号掲載】先端国際共同研究推進事業(ASPIRE) 研究課題「植物の誘導リプログラミングに立脚した新規バイオエコノミー基盤の創出」/革新的GX技術創出事業(GteX) 研究課題「先端的植物バイオものづくり基盤の構築」
傷ついた植物が器官を再生させる仕組みを解明、バイオテクノロジーの発展へ期待
2026年07月23日 12時00分更新
植物は、高温、乾燥や害虫被害で傷つくと、葉や茎などの器官を再生することができます。この再生能力は農業やバイオテクノロジー分野における重要な基盤となっていますが、傷害という環境刺激が器官再生を引き起こす分子機構はこれまで解明されていませんでした。
理化学研究所環境資源科学研究センターの杉本慶子チームディレクターらの国際共同研究チームは、植物が猛暑などの高温環境に曝(さら)された際の生体反応を制御するたんぱく質「HSFA1」が、傷害を受けた際に器官再生を誘導する中心的な役割を担うことを明らかにしました。同チームはまず、シロイヌナズナのRNA次世代シーケンスデータを解析し、傷害を受けた直後に、高熱に曝された際に誘導されるものと同じ遺伝子群の発現が高まることを見いだしました。次に実験で、植物の熱ストレスへの応答と同様に、傷害を与える前には細胞質に局在していたHSFA1たんぱく質が、傷害を与えた15分後には核内へ移行することがわかりました。さらに、HSFA1の機能を欠損させた変異体と、HSFA1の機能を強めた植物体を使って、HSFA1の機能が失われると傷ついた組織からの細胞塊の形成や茎葉の再生が著しく低下する一方で、HSFA1の活性が高まると再生能力が顕著に向上することを示しました。
今後研究が進むことで、植物がさまざまな条件下で再生能力を発揮する仕組みの全体像が明らかになることが期待できます。穀物や野菜、果樹などにおける再生・育種技術の高度化や、組織培養・遺伝子導入技術の改善への貢献も見込まれます。
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