このページの本文へ

科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第111回

【JSTnews7月号掲載】創発的研究支援事業 研究課題「ナノ構造が拓くマクロな物体の光マニピュレーション」

ナノ構造が生み出す微小な力を3次元的に精密計測するマイクロドローンを開発

2026年07月22日 12時00分更新

文● 中條将典

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 光が物質に照射される時に生じる微小な押す力である光圧や回転させる力である光トルクは、ナノ粒子を操作する技術やナノマシン技術に欠かせない重要な要素です。しかし光には、波長より小さい範囲に集中させられない「回折限界」と呼ばれる性質があるため、ナノ粒子の位置や向きを正確に制御・計測することは困難でした。

 北海道大学電子科学研究所の田中嘉人教授らの研究チームは、光を当てたナノ構造が生み出す微小な力の働きを3次元的に精密計測できる「マイクロドローン」を開発しました。このドローンを用いてV字形の金ナノ構造に光を当てた時の力学的な反応を詳細に評価。光の軸と垂直な面内の軸周りで回転が引き起こされる横方向の光トルクを初めて観測し、この現象が「光のねじれ」によって引き起こされることを示しました。

 研究チームは、測定対象のナノ構造を十字型のドローン機体の中心に埋め込み、同機体を4本の集光レーザービームで3次元的に捕捉することで周囲分子の熱運動の影響を排除。光を照射した際の機体の動きを精密に追跡することで、ナノ構造の位置と姿勢の合計6つの動きを高い精度で追跡する技術を確立しました。さらに、機体の素材の屈折率を周囲の液体に一致させることで光学的に透明化し、ナノ構造に働く光圧・光トルクだけを正確に抽出できるようにしました。

 今回の成果は、光ナノ粒子操作や光ナノマシンの精密な制御を可能にするものです。生体分子から量子力学的な力まで「見えなかった力」を可視化する技術として、広範な科学分野への適用が見込まれます。

十字型のドローン機体を4本の集光レーザービームで3次元的に捕捉し、中心に埋め込んだ標的ナノ構造の位置と動きを計測する(左)。機体の屈折率を周囲の液体と一致させることで機体を透明化する様子(右下)。右上は透明化前。

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事

アクセスランキング

  1. 1位

    TECH

    ホワイトハッカーの卵たちが“OTセキュリティ”を通して育む、これからのセキュリティ意識

  2. 2位

    TECH

    量子力学に強く惹かれ、量子ビットの高性能化に一貫して取り組む

  3. 3位

    ITトピック

    AI時代の高スキルIT技術者“争奪戦”/AIの成果創出に進む日本企業、障壁は/7割の企業で「AIの不具合」、安全性や財務の影響実態、ほか

  4. 4位

    デジタル

    「前例をなぞって楽をしていた」―― 滋賀県のkintone活用を好転させた“失敗起点のフレームワーク”

  5. 5位

    デジタル

    ヤマハ、RTX840/RTX1300のDNS防御を強化 拡張ライセンス「YSL-CLDDNS」発売

  6. 6位

    sponsored

    「運用負荷を下げなければ、セキュリティは高まらない」 企業が直面するネットワーク運用の難題にどう向き合うか

  7. 7位

    デジタル

    ヤマハ、Wi-Fi 7対応「WLX333/WLX232」に運用支援機能 「Wi-Fi快適度」を可視化

  8. 8位

    ソフトウェア・仮想化

    VMwareはセキュリティを提供する企業 Broadcom買収から3年後の現在地

  9. 9位

    sponsored

    生成AI活用で業務変革を進める宇宙スタートアップ企業アストロスケールホールディングス(Microsoft 365 Copilot導入事例)

  10. 10位

    TECH

    【12/3・参加無料】情シスの皆さん、今年の“ヤバかった話”で忘年会しませんか? セキュリティ談義とクリスマスグルメで乾杯!

集計期間:
2026年10月31日~2026年11月06日
  • 角川アスキー総合研究所