このページの本文へ

科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第113回

【JSTnews7月号掲載】戦略的創造研究推進事業CREST 研究領域「生体マルチセンシングシステムの究明と活用技術の創出」/研究課題「多様な迷走神経情報から創発する内受容感覚の脳統合」

希少糖が高血糖を改善、2型糖尿病の予防・治療につながる仕組みを解明

2026年07月24日 12時00分更新

文● 中條将典

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 近年、2型糖尿病患者数は増加し続けており、公衆衛生上の重大な問題となっています。2型糖尿病はインスリンの分泌量が減ったり、インスリンの効き目が悪くなったりすることで発症します。後者の「インスリン抵抗性」については、現在、治療の選択肢が限られており、安全かつ有効な治療戦略の確立が求められています。

 京都府立大学大学院生命環境科学研究科の岩﨑有作教授らの共同研究チームは、希少糖の一種である「D-アルロース」が全身のインスリン感受性を高めることで、少ないインスリン量で高血糖を改善する仕組みを解明しました。同チームは以前、D-アルロースが腸ホルモン「グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)」の分泌を促進して高血糖を改善することを発見しており、今回はマウスの実験により、その仕組みの解明を目指しました。その結果、GLP-1は高血糖時に膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンと協働することで、腸の情報を脳に伝える「迷走感覚神経」を強く活性化して全身のインスリン感受性を高めることを見いだし、この神経における分子機構を明らかにしました。さらに、D-アルロースの投与により、重篤な2型糖尿病モデルのマウスの高血糖が強力に改善され、既存の治療薬より優れた治療効果を発揮することを示しました。

 今回の発見は、膵臓への負担を抑えた新たな糖尿病の予防・治療戦略につながる可能性があります。食品機能および治療戦略の開発を通じて、インスリン抵抗性の改善を介した2型糖尿病予防・治療に寄与することが期待されます。

共同研究チームが発見した、GLP-1が糖代謝を制御する迷走感覚神経経路。

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事

アクセスランキング

  1. 1位

    TECH

    ホワイトハッカーの卵たちが“OTセキュリティ”を通して育む、これからのセキュリティ意識

  2. 2位

    TECH

    量子力学に強く惹かれ、量子ビットの高性能化に一貫して取り組む

  3. 3位

    ITトピック

    AI時代の高スキルIT技術者“争奪戦”/AIの成果創出に進む日本企業、障壁は/7割の企業で「AIの不具合」、安全性や財務の影響実態、ほか

  4. 4位

    デジタル

    「前例をなぞって楽をしていた」―― 滋賀県のkintone活用を好転させた“失敗起点のフレームワーク”

  5. 5位

    デジタル

    ヤマハ、RTX840/RTX1300のDNS防御を強化 拡張ライセンス「YSL-CLDDNS」発売

  6. 6位

    sponsored

    「運用負荷を下げなければ、セキュリティは高まらない」 企業が直面するネットワーク運用の難題にどう向き合うか

  7. 7位

    デジタル

    ヤマハ、Wi-Fi 7対応「WLX333/WLX232」に運用支援機能 「Wi-Fi快適度」を可視化

  8. 8位

    ソフトウェア・仮想化

    VMwareはセキュリティを提供する企業 Broadcom買収から3年後の現在地

  9. 9位

    sponsored

    生成AI活用で業務変革を進める宇宙スタートアップ企業アストロスケールホールディングス(Microsoft 365 Copilot導入事例)

  10. 10位

    TECH

    【12/3・参加無料】情シスの皆さん、今年の“ヤバかった話”で忘年会しませんか? セキュリティ談義とクリスマスグルメで乾杯!

集計期間:
2026年10月31日~2026年11月06日
  • 角川アスキー総合研究所