【JSTnews2月号掲載】NEWS&TOPICS 革新的GX技術創出事業(GteX)/研究領域「バイオものづくり」 研究課題「GXを駆動する微生物・植物『相互作用育種』の基盤構築」
病原細菌が植物の葉の気孔を開いて侵入する仕組みを発見
2026年02月16日 12時00分更新
植物の葉の表面に存在する気孔は、光合成に必要なガス交換を担う重要な器官であると同時に、細菌の侵入口にもなります。植物は気孔を閉じることで細菌の侵入を防ぎますが、病原細菌は閉じた気孔を再び開かせることが知られています。しかし、その仕組みの詳細は不明でした。
京都大学大学院農学研究科の峯彰准教授らの研究グループは、病原細菌が植物の遺伝子発現制御の仕組みを利用することで、気孔を再び開かせることをシロイヌナズナの実験で見いだしました。植物の気孔はホルモンの一種であるアブシジン酸によって閉じますが、シロイヌナズナはアブシジン酸を分解するCYP707A1遺伝子を持っています。研究グループは、病原細菌の作り出す毒素であるコロナチンが、同遺伝子の発現を高めることで、閉鎖した気孔を再び開かせることを発見しました。さらに、CYP707A1遺伝子はシロイヌナズナが朝の光に応じて素早く気孔を開くのに役立つことを証明し、病原細菌がガス交換を促す同遺伝子の発現制御の仕組みを利用して気孔を開かせていることを示しました。アブラナ科には、この遺伝子発現制御が起こらない代わりに細菌に対する抵抗性を持つ種類もあり、「気孔を速やかに開く能力」と「病原体への抵抗性」の間に進化的なトレードオフがあることもわかりました。
病原体による作物の損失は、毎年5億人分以上の食料に相当するという試算があります。この成果は、育種やゲノム編集を用いて、病原細菌に抵抗性を持つ作物を作り出せる可能性を示しています。
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