【JSTnews2月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業さきがけ 研究課題「電子線照射を活用した原子分解能その場観察法の開発と材料研究への応用」 戦略的創造研究推進事業ERATO 柴田超原子分解能電子顕微鏡プロジェクトスラ量子物性の解明」
原子分解能電子顕微鏡法で、結晶粒境界における添加元素の拡散状況を観察
2026年02月13日 12時00分更新
材料開発では、融点より低い温度で加熱して焼き固める焼結という処理を通じて、さまざまな元素を添加することで反応を促進し、微細構造を制御します。セラミックスは原子配列の向きがそれぞれ異なる領域である「結晶粒」が多数集まった構造をしており、添加した元素は焼結の進行に伴って、結晶粒の境界面に沿って拡散することがわかっています。しかし、境界の中のどの原子位置を通って拡散するのかについては、これまで明らかになっていませんでした。
東京大学大学院工学系研究科のフウビン特任准教授、柴田直哉教授らの研究グループは、原子レベルの分解能を持つ電子顕微鏡法を用いて、チタン(Ti)原子がセラミックス材料であるアルミナ結晶粒の境界を拡散する際にどのような原子位置を通過するのか、拡散先端における境界の原子構造がどのように変化するのかを調べました。その結果、非対称な原子構造を持つアルミナ結晶粒の境界にTi原子が拡散して濃度が増すと、境界の原子構造が非対称構造から対称構造へと変化することを発見しました。さらに拡散速度を比較したところ、対称構造におけるTi原子の拡散速度は、非対称構造の10倍以上に達することが判明しました。すなわち、粒界が対称構造に転移した瞬間に拡散が急激に加速される「二段階拡散現象」が存在することを初めて示したのです。
この成果は、セラミックスにおける最適な焼結条件の設定や、形成される微細構造の予測に活用できる可能性があります。今後、効率的で高性能な多結晶材料の開発につながることが見込まれます。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事
-
第79回
TECH
水電解における塩素発生の抑制につながる新発見 -
第78回
TECH
情報通信科学分野の革新的技術の創出を見据え、JSTと情報通信研究機構(NICT)が業務連携 -
第77回
TECH
農業用ハウスの屋根に載せられる有機太陽電池~農作物育成と発電が両立可能に -
第76回
TECH
昆虫の「求愛歌」の仕組みを解明し、ハエや蚊の繁殖を抑える技術へ -
第75回
TECH
情報学・神経生理学・社会心理学の学際的研究で、AI によるおすすめの信頼性を向上! -
第74回
TECH
白亜紀から続くロマンに惹かれて挑む、浮遊性有孔虫の研究 -
第73回
TECH
出芽酵母を用いて環状DNA発生の仕組みを明らかに -
第72回
TECH
病原細菌が植物の葉の気孔を開いて侵入する仕組みを発見 -
第70回
TECH
有機フッ素化合物を分解する新たな技術を開発 -
第69回
TECH
小中高生の可能性を広げる「次世代科学技術チャレンジプログラム」 - この連載の一覧へ








