エレファンテック株式会社は12月17日、同社独自のインクジェット印刷技術「SustainaCircuits」による汎用多層基板の開発に成功したと発表した。この技術により、市場の約8割を占める汎用多層基板において製造時の銅使用量を約7割削減するとともにCO2排出量やコストの削減が期待される。
SustainaCircuitsは、銅の使用量を70〜80%削減することが可能な技術を提供する。高温耐性を持つ新たなプライマーと銅ナノ粒子インクの開発により、リジッド基材にも対応可能。多層基板で発生する製造コストを年間1兆円以上削減するポテンシャルも期待されている。
すでに複数メーカーと共同で試作品開発を進めており、2025年前半には実用化を図るという。従来の製造工程の中にも容易に組み込むことができるため、特に新規投資を大幅に削減できる。
SustainaCircuitsの利点は、インクジェット技術による必要な部分への精密な銅の配置にあるが、エレファンテックとして汎用多層基板での実用化は2027年以降を見込んでいた。なぜこのような大幅な前倒しでできたのか。エレファンテックの清水信哉代表は、材料のイノベーションが大きいと答えてくれた。
従来のインクジェット印刷技術での基板製作では、インクの密着性、すなわち「印刷してもはがれてしまう」のが最大の課題だった。今回は新しい観点から材料を設計することで解決したという。
もともとナノスケールの研究開発は進められていたが、清水代表によれば1億円超えのAFM-IR(赤外分光機能付き原子間力顕微鏡)最新設備を入れたことで、原子単位で何が起きているかがわかるようになり、「なぜはがれるのか」「なぜ密着するのか」といった点が解消され、大幅な開発におけるブレイクスルーが達成された。
上述の通り、年間1兆円以上の製造コスト削減ポテンシャルが存在すると見込まれているが、加えてCO2排出を70~80%削減することでエレクトロニクス業界全体の脱炭素化も進めることになるという。