製品できても人材不足で経営破綻? 経営者が採用を最優先にすべき理由
経営に必要な「人・金・モノ」のなかでも、スタートアップにとって特に重要なのが人材採用。創業期は経営者ひとりでもなんとかなるが、成長段階でリソースが不足してくる。特に研究開発系のスタートアップにおいては、CXO人材の確保は悩ましい問題だ。
ある大学発スタートアップは、実証実験とベータテストを終え、いよいよ製品リリースに至った。この先は売上を立てなくてはいけないが、創業メンバーは全員が研究者で営業には明るくない。マーケティングや財務・法務のスキルを持つCFOやCOO人材を募集したが、人材は簡単には見つからない。結局既存のメンバーで進めたものの、目標は達成できず、次の資金調達にも失敗。結果、事業をたたむことになってしまったという。
スタートアップの採用事業を展開し、ICTスタートアップリーグでも支援を行っているデロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社の狩谷真治氏は「コア人材の採用は最優先で動いてほしい。採用を後回しにすればするほど、経営者のやることが雪だるま式で増えてしまい、ほかの仕事に注力できなくなります」と話す。しかし、優秀な人材は引く手あまたで、人材紹介会社に依頼するにもコストがかかる。そこで狩谷氏は、2つの方法を提案する。「ひとつはSNSやnote、Webメディアで発信すること。もうひとつは、イベントに参加して、いろいろな人に出会い、ネットワークを広げておくこと」。ただし、この方法でも、すぐに採用が決まることは少ないという。人材にかける予算がなければ、創業期から副業やクラウド人材を活用して、早めに手当てしておくのがよさそうだ。
文:スタートアップ研究部
ASCII STARTUP編集部で発足した、スタートアップに関連する研究チーム。起業家やスタートアップ、支援者たちの活動から、気になる取り組み、また成長・成功するためのノウハウやヒントを探求している。この連載では、総務省のICTスタートアップリーグの取り組みからそれらをピックアップしていく。
※ICTスタートアップリーグとは?
ICTスタートアップリーグは、総務省「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機として2023年度からスタートした官民一体の取り組み。支援とともに競争の場を提供し、採択企業がライバルとして切磋琢磨し合うことで成長を促し、世界で活躍する企業が輩出されることを目指している。
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