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月額見放題のショート映画配信で新たな文化をつくる「SAMANSA」が優勝、B Dash Camp 2024秋

B Dash Camp 2024 Fall in Fukuoka Pitch Arena Final

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 2024年11月6日から8日の3日間、福岡市でスタートアップ業界最大級のカンファレンスイベント「B Dash Camp 2024 Fall in Fukuoka」が開催された。3日目にはスタートアップピッチ「Pitch Arena Final」が行われ、2日目の「First Round(予選)」に出場した12社から通過した、7社が登壇した。ファイナルではDXからAI、ESG、エンタメまで幅広い業界のスタートアップが出場した中、すでにグローバルでの実績も拡がる月額370円でショート映画が見放題の配信プラットフォーム「SAMANSA」が優勝した。

  優勝 SAMANSA
  準優勝 aiESG
  野村賞 SAMANSA
  ノバセル賞 Check Inn
  AGS賞 recri
  PERSOL賞 ブルーイッシュ
  UPSIDER賞 Check Inn
  Tayori賞 Check Inn

 以下、ピッチの概要を紹介する。

ショート映画専門の配信プラットフォーム「SAMANSA」を展開、株式会社SAMANSA

株式会社SAMANSA 代表取締役 岩永 祐一氏

 SAMANSAはショート映画専門の配信プラットフォーム「SAMANSA」を展開している。現在700作品が月額370円で見放題、有料会員は4万人を突破している。2022年にiOSアプリをリリースし、2024年2月には売上1.5億円を突破した。

 成長の背景にあるのはSNSによるオーガニック流入だ。「SAMANSA」ではすべての作品の予告を制作し、SNSでバズらせることで集客している。月間1億回の再生数、1本当たり数十万回から10万回を超える再生数が出ている。

「SAMANSA」の視聴者は「2時間の映画は長いが、ショート映画なら楽しみやすい」「子育て中でもすきま時間に楽しめる」などのレビューを寄せる。岩永氏は「美容室や飛行機でのBtoBtoCの展開も順調だ。ショート映画で、世界中の映画体験を変えたい」と語った。

3000項目のESG項目で企業価値の向上に貢献、株式会社aiESG

株式会社aiESG プリンシパル 篠原 宣道氏

 aiESGは、ESG分析を通じて持続可能な社会の実現を目指す九州大学発スタートアップだ。近年、環境や人権などESGの観点から企業を評価することが世界的なトレンドになっている。一方、多くの企業ではESGの評価方法や企業価値の向上につなげる施策に関するナレッジが不足している。

 aiESGは、製品単位、原材料でサプライチェーン全体をさかのぼり、ESGの取り組みの成果を評価するESGコンサルティングサービスを提供している。環境、人権、ガバナンスの3つのトピックについて、3000以上の項目で数値を可視化できる。

 強みは約20年の研究成果に基づき世界最高水準の精度でESG評価を行える点だ。実際に日経225に名を連ねる大企業のおよそ20%がすでにサービスを導入している。今後の展望として篠原氏は「次の資金調達を通じて、SaaSモデルを確立し、よりお客様が手軽にサプライチェーン全体のESGリスク管理ができる世界を目指したい」と語った。

業務プロセスの効率化に特化したAI支援サービスを展開、株式会社ブルーイッシュ

株式会社ブルーイッシュ 代表取締役 為藤 アキラ氏

 ブルーイッシュは「AIエージェント」、「AIワークフロー」を活用する、国内唯一のビジネスプロセス特化型のAI支援サービスを提供している。日本では人手不足が深刻だ。2040年には労働需給のギャップが1100万人に到達するとする試算もあるという。

 同社がサービスの拡大を狙うのはBPO業界だ。BPOとは企業が自社の専門的な知識や技術を活かし、他社のサービスをサポートするビジネスモデルを指す。BPO市場では、従業員の60%が1年以内に退職するという高い離職率が課題だという。

 現在、放送分野に関するノウハウや技術力を活用したBPO企業と実証実験を行っている。一連の作業工程を書き出し、各業務を効率化する生成AIをつなげあわせてAIワークフローを構築。実際に10時間かかっていた作業時間を2時間に短縮した例もあるという。為藤氏は、「2027年に国内No.1シェアを獲得し、アジア、世界へ展開していきたい」と語る。

オールインワンの宿泊管理システムでホテルをDX、Check Inn株式会社

Check Inn株式会社 代表取締役CEO 田中 健太郎氏

 Check Innは宿泊事業者に特化したオールインワンのシステムを開発、提供する。コロナ禍で激減した旅行者数は、今年3300万人で過去最高と予想されている。一方、宿泊業界は最も人手不足が深刻な業界とされるうえ、業務オペレーションにも課題が山積みだという。

 従来の宿泊管理システムでは、予約、在庫管理、客室管理、チェックインと4つ別々で運用されていた。「Check Inn」では、4つの機能をオールインワンで提供する。主要な宿泊予約サイトとも連携しているため、自社の予約サイトと併用してもダブルブッキングは起こらない。

 宿泊客は予約後に事前チェックインフォームに記入することで、チェックインの待ち時間や混雑も避けられる。すでに190室の部屋数がある大型ホテルにも導入されている。田中氏は「今後はプライシングの支援も提供しながら、50部屋以上の大規模ホテルを中心に展開を目指す」と語る。

日本企業の海外進出を容易にする「Omiisay」を展開、Omiisay株式会社

Omiisay株式会社 代表取締役CEO 金田 まいか氏

 Omiisayは、日本企業向けの海外進出インフラを提供する。海外進出している日本企業の割合は、わずか4.7%とされている。87%が海外進出を希望しているにもかかわらず、90%が海外進出に挫折しているという。主な原因は、現地法人を設立するための資金、人材の不足だ。

 Omiisayは日本企業が現地法人を設立することなく海外進出できる支援サービス「Omiisay」を展開する。支援を受ける日本企業が準備するのは、運転資金、業務マニュアル、海外出張が可能な担当者1名のみだ。

 現地における不動産の契約や採用、バックオフィスの整備などは、すべて「Omiisay」が代行する。例えば、飲食店が初めて海外進出する場合、現地法人の設立から出店まで平均約1年半かかっていたが、Omiisayを利用することでわずか2カ月に短縮できるという。

 金田氏は「同じ商品でも海外で提供するだけで価格が4倍、5倍になる。日本企業が気軽に海外進出できる世界を実現したい」と語った。

興行チケットの定期便サービス「recri」を展開、株式会社recri

株式会社recri 代表取締役社長 栗林 嶺氏

 株式会社recriは、チケットの定期便サービス「recri」を運営している。日本には歌舞伎や落語、ミュージカル、コンサートなど多様なエンタメが存在する一方、興行市場には年間3000億の空席があるとされている。

 主な原因は2つだ。まずはアナログな商習慣。マーケティングは紙媒体が中心で、客からのイメージ悪化を恐れてチケット価格は定価のみが主流だ。つぎに初心者にとってのハードルの高さも原因として挙げられる。チケットは平均1万円以上と高額なうえ、自身の好みの興行を探すためには知識も必要とされる。

「recri」はユーザーの好みや予定に合わせて、舞台やアート、映画、音楽などのチケットが毎月届くサブスクサービスだ。作品の注目ポイントや楽しみ方がわかるオリジナル解説レターが添付されており、作品や芸術の魅力をより深く知ることもできる。栗林氏は「仕事や暮らしで効率的が推奨されるなか、エンタメが人を豊かにすると信じている」と語った。

商談時の機会損失を防ぐ「UKABU」を開発、株式会社UKABU

株式会社UKABU 代表取締役 丸山 隼平氏

 営業や問い合わせ対応などの場面では、知識不足や言い間違いによる機会損失が多く発生している。新入社員や新規事業の担当者は、経験不足により言葉に詰まったり、顧客に合わせた提案ができないなどの悩みを現場で抱えているという。

 AIトーク支援ツール「UKABU」は、顧客との会話における機会損失をAIで最小限にする。オンライン商談や電話営業時に立ち上げ、顧客の返答をPC上に入力することで、次に進むべき最適な会話シナリオが自動で表示されていく。

 顧客のサービスに合わせたシステムのカスタマイズ設定も、AIを用いることで簡素化されている。PDFのサービス資料を読み込ませるだけで、トークフローが自動生成される。トークフローの入れ替えも直感的な操作で可能だ。すでに多数の従業員を抱える企業20社に導入されている。丸山氏は「サービスの海外展開を進め、世界中のビジネスパーソンが自信を持って顧客と向き合える世界を実現する」と語った。

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