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PLATEAUの3D都市モデル、その根幹を担う空間情報技術の“最前線”を聞く

効率的な計測、EBPMのための都市シミュレーション、人を動かす可視化まで〔パスコ編〕

特集
Project PLATEAU by MLIT

提供: パスコ

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3D都市モデルを活用したEBPMのコンサルティングも展開

――木村さんには3D都市モデルの「作成」についてうかがったわけですが、もちろんそれを「活用」しなければ価値は生まれません。山本さんは、その活用にまつわるさまざまな技術をご担当されていますね。

山本氏:はい。3D都市モデルの利活用と言えば、皆さんがまずイメージされるのは「都市景観の可視化」だと思います。ただし、パスコはそれだけでなく、3D都市モデルに基づくシミュレーションを行い、得られたデータをEBPM(エビデンスに基づく政策立案)の根拠とするような、そうした取り組みのコンサルティング業務も行っています。

――3D都市モデルを使って、より良い政策立案につなげようという話ですね。具体的にはどんなシミュレーション事例がありますか。

山本氏:たとえば、防災分野では「火災延焼シミュレーション」を行っています。コンピューター上の仮想的なシミュレーションですから、現状の街の火災延焼リスクだけでなく、「建物の不燃化を進めた場合の効果」「道路を拡幅した場合の効果」といったものも定量的に算出することができます。こうしたシミュレーションデータに基づいて、今後の防災政策を考えることができるよう支援しているわけです。

「火災延焼シミュレーション」の例(パスコWebサイトより)

 同じように、環境・エネルギー分野では、建物や道路の3次元的な位置関係から日照解析を行って、快適な都市づくりのために何ができるか、ソーラーパネルの設置を推進したらどの程度の発電量が見込めるかといったことを検討する事例もあります。これもまた、シミュレーションから「定量的な値」が得られる点がポイントです。

――3D都市モデルを使ったシミュレーション、いわゆる“都市のデジタルツイン”で政策の仮説検証を支援しているわけですね。パスコさんならではの強みはありますか。

山本氏:3Dデータを扱う技術に加えて、それ以前から培ってきたさまざまなデータ解析技術も組み合わせて活用し、お客様の目的に合わせたコンサルティングを行うことができる点だと思います。“3D活用ありき”ではないコンサルティング、と言えば分かりやすいでしょうか。

 防災にせよ環境・エネルギーにせよ、3Dデータに基づくシミュレーションだからこそ、定量的に具体的で分かりやすく把握できます。ただし、最終的な目的はそれだけではありません。パスコでは、3D都市モデルに付与された属性情報含め、人流データや災害データなどの多様な地理空間情報を利用して分析・解析することで、社会課題解決に向け、より目的に沿った高度なコンサルティングを行うことができます。

分かりやすく、伝わりやすい「可視化」で人を動かす

――続いて、空間情報の可視化技術に精通されている田邊さんにお話をうかがいます。まずは、なぜパスコさんは可視化の技術にも注力されているのでしょうか。

田邊氏:それはやはり、データを3次元で見せることで分かりやすくなり、合意形成の場面で効果的だからです。

 たとえば、現在の防災分野では2次元のハザードマップが主流ですが、これを3次元の地形・建物のデータと重ねることで、「河川が氾濫して○メートル浸水すると、この建物の何階まで影響が出るんだな」など、現実世界に近い状態で“データを見る”ことができます。それによって自分事化が進み、住民の方がより強く防災意識を持つことにつながります。

――データだけだと分かりにくいものも、3次元で可視化するとずっと具体的にイメージできますよね。ほかにも可視化の事例はありますか。

田邊氏:デジタル空間の特性を生かして、“現実世界では見えない空間”を可視化することもありますね。たとえば地上からは見えない下水管、ガス管のような地下埋設物を可視化して、都市のインフラ管理の効率化に役立てることができます。

地上と地下の可視化のイメージ(左:パスコWebサイトより、右:Project PLATEAU「下水熱利用促進のためのマッチングシステム 技術検証レポート」より)

 都市の地下にはさまざまな埋設物がありますが、それを工事した際に設計や計測のデータを残しておけば、試掘しなくてもあらかじめデジタル空間でシミュレーションができます。それにより「このくらいの深さに埋設物があるから、そこは避けて工事を進めよう」といった判断ができるわけです。

――現実には見えないものすら可視化できる。そこではXR、VRの技術も使えそうですね。

田邊氏:そうですね。実際にVRに関しては、お客様の側からもご要望が増えています。たとえば、構造物の点検結果をVRで可視化してほしいとか、工事中の現場で(工事後の状態を)プレビューする仕組みを提供してほしいとか、そういったご要望をいただきます。われわれも、3次元で可視化するソフトウェア(TerraExplorer)などを活用するという提案に力を入れています。

 現状の自治体様では、まだデスクトップPCやタブレットで見たいというニーズが多いですが、民間の企業様だと「MetaQuest」や「HoloLens」などのヘッドセットを使いたいという声も出てきています。工事の現場などでも、今後は「こういうヘッドセットで見たほうが見やすいですよね」といったご提案は増えてくると思います。

PLATEAUの特設情報サイトも開設、より多くの人を巻き込みたい

――最後に、再び大木さんにお尋ねします。PLATEAU、3D都市モデルの活用を検討されている方に、何かアドバイスするとすればどんなことでしょうか。

大木氏:今回ご紹介したのは、パスコが手がける自治体での業務ユースケースですが、PLATEAUはこれ以上に多様な場面で活用できるポテンシャルを有しています。これまでのPLATEAU AWARDの応募作品を見ても、面白い活用アイディアはたくさんありますよね。

 なので、活用を考えるうえでは一人だけで考えるのではなくて、いろいろな方を巻き込んで広い視野で考えることが一番大切なのではないでしょうか。

――アイディアを膨らませるために、いろんな人を巻き込むのは大切ですね。

大木氏:それから、「PLATEAUは最先端の取り組みで手が出しづらい」というイメージをお持ちの方もおられるかもしれませんが、実際にはデータを利用するためのさまざまな情報が、国土交通省や民間企業、システム開発者などから共有されています。それらを参考にして、まずはちょっと試してみる、遊んでみるといったところから始めるのがよいのではないでしょうか。実際に触れてみることで、さまざまなユースケースのアイディアも浮かんでくると思います。

 ちなみにパスコでも先日、PLATEAUの特設サイトを開設しました。PLATEAUを活用したいと考える自治体やそのほかの方に対して、有用な情報や取り組みを分かりやすく発信することで支援できればと考えています。こちらもぜひご注目ください。

パスコが開設したPLATEAU特設サイト(https://www.pasco.co.jp/pickup/plateau/

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