アサヒビール・アサヒ飲料、エコノミクスデザインが共同で、戦略的プライシング分析を開始
株式会社エコノミクスデザイン
株式会社エコノミクスデザイン(本社:東京都新宿区、代表取締役兼共同創業者:今井 誠、以下EDI)は、アサヒビール株式会社(本社:東京都墨田区、代表取締役社長:松山 一雄、以下アサヒビール)、アサヒ飲料株式会社(本社:東京都墨田区、代表取締役社長:米女 太一、以下アサヒ飲料)と3社間業務提携を行い、今後発売を予定をする商品やサービスにおいて、価格を決定する参考ツールとして「BDMオークション」という価格調査手法を用いた戦略的プライシング分析を開始したことをお知らせいたします。
- 業務提携の背景
昨今、世界的な経済情勢により進むインフレや円安の元、各種原材料価格や容器包装資材、エネルギー価格に加えて、物流費などのコスト上昇が継続しています。また、健康志向の高まりなどを背景に消費者の嗜好や飲用スタイルが多様化し、消費者トレンドも目まぐるしく変化しています。こうした厳しいビジネス環境下では、製造コストに応じたコスト志向型プライシングではなく、消費者感度に基づいた顧客ニーズ志向型プライシングの必要性が日々高まってきています。そうした情勢を背景に、アサヒビール、アサヒ飲料はEDIと業務提携を行い、EDIが開発・実用化している価格調査手法「BDMオークション」(特許出願中)を用いた戦略的プライシング分析を開始することにいたしました。本業務提携を通じ、EDIは、アサヒビール、アサヒ飲料が取り組む顧客ニーズ型のプライシング、科学的なプライシングの推進を支援いたします。
- 「BDMオークション」による戦略的プライシング分析の概要
BDMオークションは、ノーベル経済学賞を受賞したVickreyのオークション理論に基づいた、精度の高い価格調査手法です。オークション形式の調査を通じて、参加者に実際にお金を使う決断を求めることで、仮想環境下でも正確に消費者の価格感度を測定することができます。BDMオークションは、実際の取引を含む実験的な方法で、参加者が正直に真の支払い意思額を表明するような調査デザインになっています。一般的なアンケート調査で生じる仮想バイアスや個人の戦略的な回答が起こらないような設計となっている調査手法です。
*仮想バイアス:調査対象者が実際の支払行動とは異なる回答をする傾向のこと。経済的コミットメントがない(いくらと答えても、自分の懐は痛まない)ため、高めに答えがち。
*個人の戦略的な回答:調査対象者が自分の利益を最大化するために 意図的に答えを操作すること。回答結果で上市後価格が下がることを期待して低めに回答しがち。
BDMオークションはアカデミアの世界では広く知られてきた手法でしたが、ビジネス現場での活用のハードルが高い調査手法でした。EDIは、今まで実用化の障壁となっていた点を、慶應義塾大学教授星野崇宏、一橋大学准教授加藤諒、名古屋大学専任講師篠田和彦が中心となり改良を進めることで、実用化できる調査手法へと開発いたしました(EDIにて特許出願中)。
本業務提携でEDIは、消費者の価格感度を正確に測ることで可能になる顧客ニーズ志向型の先進的なプライシングをアサヒビール、アサヒ飲料が他社に先んじて推進することを支援いたします。
また、価格感度を測るだけに留まらず、BDMオークションでの調査結果と、データサイエンス、マーケティングサイエンスの高度な知見を合わせることで可能となった、高い精度での売上予測も合わせて実施し、戦略的プライシング分析を行います。高精度な売上予測の実施により、多面的な角度から価格戦略を検討することが可能になり、科学的なプライシングの実施が可能となります。
- EDI 取締役共同創業者 星野崇宏 (慶應義塾大学教授・理化学研究所AIPセンター経済経営情報融合分析チームリーダー)
近年のコストプッシュインフレの中で、この20年以上変わらなかった価格についていよいよ我が国の企業も考える必要が出てきました。これまでのデフレ経済下で、機能が優れ一方コストも一定かかる商品を企業がなかなか市場に投入できなかったことは、消費者の利便性を損ね日本企業の商品開発力を低下させる要因にもなっていたと思います。低価格大量販売大量消費、結果としての大量廃棄ではなく、この値段で買いたいと思ってくださった消費者への安定した数量の販売ができ、小売り様にも利益が応分に出る形で継続的に販売できれば、エシカル消費への転換になり、また気に入った商品を長く買い続けて頂けることで消費者にもメリットがあります。アサヒグループの企業の皆様に我々の冷たい頭と温かい心で開発した今回のオークション形式の価格付け方式に賛同いただき活用いただけたことを大変うれしく思っております。
- 今後の展望
BDMオークションと、その結果を用いた売上予測を更に改良していくことで、より高度な戦略的プライシングを目指します。この協業によりEDIは、アサヒビール、アサヒ飲料と今後も経済学の知見を活用した様々な取り組みを実施することで、両社の科学的な意思決定を支援して参ります。
<星野崇宏プロフィール>
慶應義塾大学経済学部教授。慶應義塾大学経済研究所所長を兼務。行動経済学会会長、応用統計学会・行動計量学会・計算機統計学会・マーケティングサイエンス学会の理事などを歴任。ロンドンスクールオブエコノミクス客員教授、シカゴ大学・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院客員研究員などを歴任。45歳未満の研究者に政府が授与する最も権威のある賞である日本学術振興会賞を受賞(2017年)。ほかに日本統計学会研究業績賞、日本行動計量学会優秀賞、日本計算機統計学会優秀賞、慶應義塾大学義塾賞など受賞多数。また2017年から国内のAI研究の中核研究施設である理化学研究所AIPセンター経済経営情報融合分析チームリーダーを兼任。NTTドコモ、マネーフォワード、サイバーエージェント、ヤフー研究所の技術顧問、アドバンテッジパートナーズの顧問をはじめ、企業顧問や共同研究多数。2020年には経済学の学知とデータ分析によるコンサルティングを提供する(株)エコノミクスデザインを設立し取締役に就任。
<加藤諒プロフィール>
一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科准教授。神戸大学経済経営研究所・計算社会科学研究センター 准教授(クロスアポイントメント)。株式会社エコノミクスデザインエコノミスト/理化学研究所革新知能統合研究センター客員研究員/慶應義塾大学産業研究所共同研究員/株式会社博報堂DYホールディングス技術アドバイザーなどを始め、様々な機関で研究、データ解析を行う。
<篠田和彦プロフィール>
名古屋大学経済学研究科専任講師。理化学研究所革新知能統合研究センター客員研究員/慶應義塾大学産業研究所共同研究員。株式会社エコノミクスデザインエコノミスト。トヨタ自動車でのヒューマンインタラクション、機械学習、人工知能などに関する研究開発を経て現職。人を対象としたデータ解析の実務やデータ解析手法に関する研究を多数経験。AI分野のトップ4大国際会議の1つIJCAI(International Joint Conference on Artificial Intelligence)にて、2019年・2020年発表、同4大国際会議の1つAAAI(Association for the Advancement of Artificial Intelligence)にて、2022年発表。
【株式会社エコノミクスデザイン】 https://econ.news/
株式会社エコノミクスデザイン (Economics Design Inc.)は、経済学を基盤としたビジネスコンサルティングを提供する企業です。「経済学でビジネスを科学する」をミッションに掲げ、ビジネスに有益な学知とビジネスを紐づけ、その便益を最大限享受できる仕組みを提供しています。慶應義塾大学、大阪大学、一橋大学、名古屋大学などの多くの研究者が在籍し、強力な知識基盤を支えています。
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