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「PLATEAU AWARD 2024」プレエントリーがスタート、クロストークでは昨年度の受賞者が濃密トークを展開!

「PLATEAU AWARD 2024 説明会」 レポート

特集
Project PLATEAU by MLIT

提供: PLATEAU/国土交通省

この記事は、国土交通省が進める「まちづくりのデジタルトランスフォーメーション」についてのウェブサイト「Project PLATEAU by MLIT」に掲載されている記事の転載です。

 国土交通省による「PLATEAU AWARD 2024 説明会」が2024年6月26日にオンラインにて開催された。PLATEAUの概要、PLATEAU AWARDの評価のポイントなどが紹介されたほか、審査委員および昨年度の受賞者を交えたクロストークが行われた。

自由な発想でチャレンジしてほしい

 今年で3回目を迎えるPLATEAU AWARDは、PLATEAUの3D都市モデルを活用したコンテンツを対象に技術やアイデアを競う開発コンテストだ。PLATEAUが1年を通じてハッカソンやライトニングトーク、ハンズオンほかさまざまなイベントを展開するPLATEAU NEXTの集大成として開催している。

PLATEAU NEXT 2024(EVENT DIAGRAM)

 その狙いについて、国土交通省の椿優里氏は以下のように語った。

椿氏:国土交通省は3D都市モデルを整備・活用してオープンデータ化していくプロジェクトを進めているのですが、最終的にはその3D都市モデルを使ってさまざまなソリューションが開発され、この国に住んでる方、暮らしている方、生活してる方、訪れている方に新しい価値が提供されるようにしていきたいのです。そのために、みなさんのように作品・プロダクトを作って実際に届けることができるエンジニア、クリエイターの方たちとのつながりをとても大切にしています。その観点からも、このPLATEAU AWARDは私たちにとっても非常に重要です。

国土交通省 都市局国際・デジタル政策課 国際・デジタル政策企画調整官 椿 優里氏

 PLATEAU AWARDが募集するものは、PLATEAUがオープンデータとして提供する3D都市モデルを活用した新たなアプリケーションやコンテンツ、エクスペリエンス。応募対象は個人または企業、教育機関・研究機関、行政機関、チーム(メンバー数や年齢等の制限はなし)まで広く開かれている。

 応募作品のタイプは基本的にPLATEAUの3D都市モデルを利用したものであれば、ジャンルは問わない。これまでもシミュレーション、ゲーム、アート作品、PLATEAU活用に役立つツールなど、さまざまな作品が集まっている。審査は「3D都市モデルの活用」「アイデア」「UI・UX・デザイン」「技術力」「実用性」の5つの観点から評価される予定だ。

 前回(PLATEAU AWARD 2023)では、PLATEAUの3D都市モデルをPythonで扱うためのライブラリとコーディング環境「PlateauKit + PlateauLab」(小関健太郎氏)がグランプリを受賞した。ほかにも、3D都市モデルを軽量に扱う方法およびデモをプレゼンした「Scaling up PLATEAU」(Sagar Patel氏)が会場を沸かせた。もちろんPLATEAUの3D都市モデルを活用したシミュレーションやサービスといった作品も受賞しているが、昨年度はPLATEAUを扱うためのノウハウやツール類が目立った。この点について、椿氏は3D都市モデルの扱いやすさに課題があることを認識したうえで、「主催する国土交通省にとっても学ぶことが多く非常にありがたい」と述べた。

 前回も応募者の形態はさまざまで個人とグループが半々程度、年齢層も若年層を中心に幅広い年齢層に及んだ。学生が自身の研究テーマに関した作品を出すケースも見られた。また、企業の有志で組んだチーム(PLATEAU賞受賞作品「Machi Plus」のIRODUKURI)、あるいは大学の授業をきっかけにハッカソンに参加してPLATEAU AWARD応募に至ったチーム(PLATEAUユース賞受賞作品「スカイランナー 高層の冒険者」のKND-3)もある。

 受賞作品一覧は、国土交通省のPLATEAU AWARD 2023のサイトに掲載されているほか、最終審査会のレポート記事も出ているので詳しくはそちらを参照していただきたい。

 

 いずれにせよ、誰にでも入口は開かれている。「PLATEAUは初めて」という人でもPLATEAUのWebサイト上にはすでにたくさんのチュートリアルがあり、GitHubのリポジトリでは、さまざまなツールやライブラリがOSSとして提供されている。今年もそれらは拡充されていくほか、ハッカソンなども各地で開催される予定だ。「ぜひさまざまな機会を通じてPLATEAUに触れてみて、自由な発想でチャレンジし、最終審査会を目指してほしい」と椿氏は述べた。

 今年はプレエントリーの受付が6月17日から始まっている。本エントリーは8月30日に開始、応募の締め切りは11月21日となる。12月の一次審査を経て、翌2025年2月15日に最終審査会が行われる予定だ。

PLATEAU AWARD 2024の全体スケジュール(予定)

PLATEAU AWARD 2024の審査委員。
齋藤 精一氏(パノラマティクス 主宰)、
川田 十夢氏(開発者 / AR三兄弟 長男)、
千代田 まどか氏(IT エンジニア 兼 漫画家)、
小林 巌生氏(Code for YOKOHAMA 共同代表)、
野見山 真人氏(Takram デザインエンジニア)、
国土交通省 都市局 国際・デジタル政策課(Project PLATEAUチーム)

 加えて本説明会の第2部では、「PLATEAUが提供する3D都市モデルデータ全般の説明」について株式会社ホロラボの於保俊氏、「WebGISおよびPLATEAUのGISでの使用方法」について株式会社MIERUNEの西尾悟氏、そして「PLAETEAUにおけるSDK/ToolKit解説」について株式会社シナスタジアの鈴木智貴氏から解説がなされた。これらもアーカイブ動画に収録されており、PLATEAUについての最新かつ基礎的な部分をまとめてチェックできる。

株式会社ホロラボ 於保 俊氏による「PLATEAUが提供する3D都市モデルデータ全般の説明(Youtube)」

株式会社MIERUNE 西尾 悟氏による「WebGISおよびPLATEAUのGISでの使用方法(YouTube)」

株式会社シナスタジア 鈴木 智貴氏による「PLAETEAUにおけるSDK/ToolKit解説(YouTube)」

応募者も審査委員も“いち開発者”としてアイデアやナレッジを共有し合う、PLATEAU AWARD

 ここからは審査委員と受賞者によるクロストークの模様をお届けする。登壇者は、PLATEAU AWARD初回から審査委員を務めている川田十夢氏、PLATEAU AWARD 2023受賞者である伊藤周氏(エモーション賞受賞作品「Beat Running over the city」を制作)、Sagar Patel氏(逆激励賞受賞作品「Scaling up PLATEAU」を制作)、KND-3チームから長岡尚美氏、上里紗羅氏(PLATEAUユース賞受賞作品「スカイランナー 高層の冒険者」を制作)、そして国土交通省から椿氏。進行は角川アスキー総合研究所の遠藤諭氏が務めた。

遠藤 諭氏(株式会社角川アスキー総合研究所)

川田氏:PLATEAU AWARDが立ち上がったところから審査員をやらせてもらっています。PLATEAU自体のフレームワークの進化と参加者のみなさんによる拡張ぶりに毎年おどろかされて、僕自身も開発者として刺激を受けています。普段はAR三兄弟というユニットをやっていて、アーティスト活動をしながら、こうしたハッカソンの審査員をしたりしています。今日は、見ている方に「PLATEAUっておもしろい」と感じてもらえたらと思います。

川田 十夢氏(開発者 / AR三兄弟 長男)

遠藤氏:PLATEAU AWARD 2023の受賞者の方々にもご登壇いただきます。伊藤周さん、Sagar Patelさん、KND-3チーム、このお三方においでいただいております。まず、みなさんに各作品のご紹介をしていただきたいと思います。

伊藤氏:私は「Beat Running over the city」というプロダクトを作り、発表しました(デモ動画はこちら)。iPhoneで曲を選択してルームランナーで走ると、PLATEAUで作られた街中をVR上で走るというもので、ランニングの速度によって曲の速さ(BPM)が変わります。当日はルームランナーを会場に持っていって実際にプレイし、みなさんに見ていただきました。音楽が鳴らなかったり、VRで流れている映像が乱れてしまったり、うまくいかないところもあったのですが、そういうトラブルも織り込み済みで考えていました。プレゼンが終わったときにはみなさんから拍手をいただいて、結果的によかったと僕は思っています。

伊藤 周氏

ルームランナーで走るとVR上の景色だけでなく、速度に応じて音楽のBPMが変化する

Patel氏:私は以前から京都に住んでいまして、もともと別の作品を作るために、バーチャル京都を作りたかったというのがあります。そこでPLATEAUのデータをプラグインを使ってUnityに取り込んだのですが、ロードしたときにいろいろな問題が起こりました。データの読み込みが非常に遅く、メモリが足りない、CPUも足りない、GPUも足りない――。最初は何が原因なのかわからなかったのですが、いろいろとデバッグして、オブジェクトの数とメッシュのフォーマットなどを改善して軽量化し、今は京都市の全データをロードしてリアルタイムでもスムーズに使える状態になりました。メッシュとオブジェクトだけではなくて、データを軽量化するためのワークフローも新しく作りました。このワークフローのおかげで、軽いデータ(FBXデータ)を作ってエクスポートできる状態になりました。デモ動画はこちら

Sagar Patel氏

Patel氏が作成した軽量化するためのワークフロー

KND-3:「スカイランナー 高層の冒険者」は、プレイヤー(冒険者)がクライミングやバルクールのスキルを駆使して、都市の中でもっとも高い建物を目指す3Dアクションゲームです(デモ動画はこちら)。PLATEAUの3D都市モデルの魅力のひとつである「普段見られない視点に立つことができる」ということをコンセプトにして制作しました。ゲームでは「走る・つかむ・ジャンプする・登る」という基本動作をもとに、実際の街並みを駆け巡り、地域ならではの「オブジェクト」を発見し集めていくと一番高い建物に登ることができます。制作した私たちは嵯峨美術大学の観光デザイン領域に所属する学生6名でチームを組み、2023年11月に行われた京都市でのハッカソンに初めて参加し、そこから作品をブラッシュアップしてPLATEAU AWARD 2023に応募しました。

KND-3の長岡 尚美氏と上里 紗羅氏

ゲームのポイントとなるオブジェクトには地域の特産物を設定し、各地域の魅力をプレイヤーに知ってもらえるように工夫したという

川田氏:みなさんの作品紹介をお聞きしていると、最終審査会の楽しさが思い出されますね。伊藤さんはそもそも僕ら開発者の間では有名な人で、Unity界隈でいろいろな開発をされていて、伊藤さんがPLATEAU AWARDに参加してくれたのが僕はうれしかったです。なぜ参加してくれたのですか?

伊藤氏:はっきり言いますと、このプロダクトを製品化しようと思っていまして、そこに「PLATEAU AWARD 受賞」という箔(はく)を付けたかった。「国土交通省がやっているPLATEAU AWARD」ってインパクトが強いですよね。そういうのを狙っていったというのが今回の主な趣旨でした。

椿氏:それは私たち国土交通省としてもうれしいです。そもそも私たちがこうした開発イベントをなぜやっているかというと、PLATEAUの3D都市モデルを使って新しい価値を生み出し、世の中に届けられる人たちを増やしたいという思いがあります。そうした中で実施しているコンテストがPLATEAU AWARDなので、まさに展開されようとしているビジネスにおいて、この賞を活用してもらえるというのは非常にうれしいですし、産業の発展を図る政策としても目的に合致したものです。

川田氏:本当に事業化を実現してほしいですよね。

椿氏:あと、私たちは受賞された方やハッカソンで出会ったPLATEAUの扱いに長けた方には、今後もご協力をお願いする機会があると思います。そのナレッジを、他の方々にも広く共有してもらいたいのです。たとえば、チュートリアル記事を書いてもらったり、何か一緒にプロダクトを作ってもらったり。やはり、3D都市モデルは新しいデータなので、まだまだ扱いがわからないという部分も多い。可能性もたくさんある一方、活用にまだまだ課題もあると思います。そういうところを、PLATEAUのコミュニティでナレッジを共有しながら、みんなで進化させていけたらいいなと思っています。

川田氏:PatelさんはAWARDでの発表のときも「PLATEAU使いにくいよ」ってはっきり言ってくれて、さらに「こういう使い方をしたらといいよ」と軽量化する方法を提示してくれました。それだけではなくて、演出面でかっこいいものをデモとして見せてくれて、まさに“技術者の鑑”だなと思いました。

Patel氏:次のステップでは、京都市の地形のデータをきれいにしたいと思っています。いまPLATEAUは建物のデータは完璧になってきているけれど、鴨川とか橋とか地形はまだまだだと感じています。それをもっときれいにできれば。

川田氏:地域のさまざまなインフラも魅力的ですよね。

椿氏:そうですね。我々国土交通省もいろいろなツールを提供しているのですが、こういうイベントからデータの課題などをフィードバックとして持ち帰って、次年度どういうことができるかという企画につなげていますので、Patelさんにいただいたような忌憚のないご意見はありがたいし、歓迎しています。

初心者でもハッカソンなどを通じて開発に取り組める

川田氏:KND-3チームはPLATEAU AWARDに参加して、どうでしたか?

KND-3:私たちからは少し違った視点になるかもしれないのですけれども、PLATEAU AWARDの前段階から、ハッカソンなどのイベントが用意されていたので、私たちのような初心者でもとっつきやすいというか、開発に取り組みやすかったです。なので、学生でもどんどん自分たちの学んでいることと組み合わせて、新しいコンテンツを作っていけるのでおもしろいと思いました。

椿氏:KND-3チームのみなさんは、京都のハッカソン(KYOTO PLATEAU HACK 2023)でPLATEAUやUnityを本格的に触ったとお聞きしました。

KND-3:そうですね。きっかけは大学の授業でした。その時点ではUnityに触ったこともないし、3Dのデータを触ったことのある人も少ないという状態でした。

椿氏:京都のハッカソンは11月でしたよね。そこからの伸びがとんでもなかったですし、一次審査から最終審査会までのブラッシュアップもすごくて。若い人の力はすごいと感じました。

川田氏:KND-3チームの作品はポップだけど、いろいろな地域が抱えている問題を解決し得るものになっていると思っています。デジタル技術を生かして、地域ごとの特色をこうしたバーチャル空間でゲームなどにして楽しむことが広がってほしいですよね。さまざまな地域で併用できるアイデアだなと思います。

KND-3:PLATEAUの3D都市モデルのデータは観光系や地域系と相性がいいと思います。今後“デジタル観光”はもっと盛り上がってくると思うので、さらにおもしろい価値の提供の仕方があるのではないかと思っています。

川田氏:僕は“デジタル誘致”と呼んでいるのですが、デジタル上でゲーム越しにでもその土地に触れると現地に行きたくなってきますよね。PLATEAUの使い方のひとつとして、“デジタル観光”とか“デジタル誘致”は絶対あると思います。それをKND-3チームはすごくポップな形で実現していて、すばらしかった。

椿氏:昨年度は特に、PLATEAUのデータとしての課題を解決するヒントを与えてくれるような作品が多かったと思います。それをベースにPLATEAUもステージアップして、さらにまたいろいろな作品が作られて可能性が広がって行く――。そうした形で、みんなでどんどんPLATEAUをブラッシュアップしていけたらと思っています。

遠藤氏:受賞者の方々から何か質問があれば、ぜひお願いします。

伊藤氏:LODのレベル(3D都市モデルの詳細度)に関して伺いたいのですが、LOD3ができているところとできていないところが、今は“まだら”ですよね?  都市部がLOD3になっているというのはわかるのですが、たまにピンポイントに「ここだけLOD3になっている」という場所があるのはどういう理由なのですか?

椿氏:PLATEAUのデータは、まず国土交通省がデータの標準仕様を定めたり、データを効率的につくれるような技術開発をしたりしています。それを使って自治体が主体となり、各地の3D都市モデルのデータを整備するという形になっています。

 その一方で、国直轄でPLATEAUのユースケース開発をやっている地域もあります。国土交通省自ら、オープンデータであるPLATEAUの3D都市モデルで「どんなことができるのか、どんな価値を提供できるのか」を示すために、ユースケースという形で検討し、実際にアプリを作ったりしているのです。このために必要な3D都市モデルを自分たちで作っているわけです。

 ですので、突然LOD3のデータが出現したりしている場所があるのは、国直轄で作っているというパターンが1つと、あとは自治体でもユースケースがどんどん展開していくようなところもあって、それに合わせてデータ整備がなされるパターンもあります。例えば、駅前のまちづくりを検討するときに、「ウォーカブルな街(居心地が良く歩きたくなるまち)にしたい」となると、やはりLOD1、2だと若干詳細度として不足するので、駅前の通りだけを測量してLOD3を作りたい、と。そういうケースも出てきたりしています。

遠藤氏:チャットにきている質問ですが、PLATEAU側から自治体やまちづくり、商店街向けのセミナーなどをやってもらうことはできるのでしょうか、と。

椿氏:私たち国土交通省の職員が現地に行ってPLATEAUの説明をするとかお話をするというのは請け負っているので、ぜひおっしゃっていただければと思います。私たちだけで実現が難しいものについては要相談という感じになりますが、基本、私たちだけでできることはやります。

遠藤氏:自治体の方々が集まって、うちの地域にはこういう課題があってPLATEAUのデータをこんなふうに使っている、といった情報交換をするための交流イベントが、昨年もありましたよね(PLATEAUサミット(自治体交流会)in 茅野)。実際にPLATEAUのデータがあるとどういうメリットがあったとか、3D都市モデルの活用にどんな工夫や苦労があったとか、そういったナレッジが共有されるイベントだったかと思いますが。

椿氏:そうですね。自治体同士のネットワーキングを作ってもらって、自分たちの課題やPLATEAUの活用アイデアなど、いろいろなことを相談し合える場を作る取り組みも国土交通省として行っています。

KND-3:私たちが触っていたのは京都市のデータなのですが、神社仏閣のデータが実装される予定はあるのですか? たとえば清水寺など詳細なデータのない建築物もあって。そういったデータも今後どんどん実装されていくのかなと楽しみにしているのですが。

川田氏:僕自身も開発者なのですが、データがない場合には「待ってるより作っちゃえ」って思ってしまいますね。データを自分たちで作ってしまって、逆に、それをPLATEAUに寄付して、みんなにも使ってもらうという仕組みがあってもいいかもしれないですよね。

椿氏:まさに昨年度のPLATEAU賞受賞作品「Machi Plus」(IRODUKURI)は、自分たちでスマホで撮った写真を3D都市モデルのテクスチャーとして使いたいという発想から作られたプロダクトでしたね。

 PLATEAUの3D都市モデルは公共測量データの成果を使うことで精度を管理しているという特徴がありますので、そことの兼ね合いにもなると思いますが、例えば公共側で作るデータについては公共測量の成果で作る、一方で、ユーザー側が自分たちで作成したデータやテクスチャをPLATEAUのデータに組み合わせられる形ができると、かなり機動的になるのかなと私も個人的に思っています。

川田氏:「みんキャプ」もそういう思想でしたよね。

椿氏:PLATEAUの関連イベントとして「みんキャプクエスト@松山市三津浜2023」が昨年12月に愛媛県松山市で行われましたが、みんなでスキャンしたデータを共有できて、都市レベルのPLATEAUのデータと実際にマージできたりするとすごいなと思いますね。

PLATEAUを活用して夢中で挑戦する時間を過ごしてもらいたい

遠藤氏:チャットから、KND-3チームに「どのようにしてアイデアを形にしましたか? また開発にはどのくらい時間がかかりましたか?」という質問がありました。PLATEAUに関心がある初学者の学生さんからです。

KND-3:私たちは授業の一環として取り組んでいたので、4月から6月くらいまでは、まずXRやVRが何なのかを座学で学んでいました。7月にオンラインで開催されたPLATEAU AWARDの説明会で前年に受賞された方の作品を見て、「自分たちもやってみよう」という話になり、11月半ばに開催された京都のハッカソンに向けて準備を進めました。

 そもそも私たちは大学で観光デザインについて学んでいるので、この機会に観光をからめたものを作りたいと思い、チームメンバー6名で「3D都市モデルを使って何ができるか、何をしよう」とアイデアを出しあっていきました。「ゲームにしよう」とアイデアが固まったのは、ハッカソンの3日前でした。ですので、授業の中で進めていたので限られた時間ではありますが、アイデア出しをしていた期間は2~3カ月ほどです。そこからハッカソンに参加して、ハッカソンで作ったものをブラッシュアップして、PLATEAU AWARDにエントリーしました。

 開発面で私たちがお話ししたいのは、やはり初心者だとアイデアを形にするときに難しいことが山ほど出てきます。そんなときは、絶対にハッカソンやイベントに参加するべきだと思います。PLATEAUもUnityもチュートリアルがたくさんありますし、ネットで調べてもサンプルコードが出てきたりするので、それもとても参考になります。なので、恐れずにアイデアを出したら、おもしろい作品が作れると思います。

 ハッカソンでもテクニカルサポーターの方々にとてもお世話になりました。私たちはどう形にするかは考えず、とりあえず「何をやりたいか」だけを考えて、サポーターの方々に「これがやりたいんです!」、「この形にするためにはどうしたらいいか教えてください!」と。そういう場として、思い切ってハッカソンに参加させていただいた感じでした。

川田氏:KND-3チームは自分たちが観光デザインを学んでいるから、そこを忘れずにトライしたのが大きいですよね。自分たちがやってきたこと、興味のあることでチャレンジすれば、最後までやり遂げられる。KND-3チームは観光デザインだけど、芸術を学ぶ学生だったり、経済を学んでいる学生だったり、みんな自分のやっていることにつなげていい。

遠藤氏:最後に一言ずつこれから応募しようとする方たちに向けてアドバイスをいただけますか?

椿氏:私から伝えたいメッセージはやはり、PLATEAUの3D都市モデルを使って、みなさんが夢中で何かをがんばれる時間を過ごしてもらいたいというのが、私たちの思いです。そして、こうして出てきた作品をより多くの方に使ってもらえるよう、それに向けて国土交通省の取り組みも使ってもらいながら、私たちもどんどんサポートしていきたいなと思っています。いろいろなところで登壇していただいたり、アピールする機会を作りたいと思っています。受賞して終わりではなくて、その先も継続的に一緒にやっていけるといいなと考えています。

川田氏:僕はこういう場所が楽しくて、ずっと参加を続けています。肩書は審査員ですけれども、僕も一人の開発者に過ぎないので、毎回みなさんから刺激をもらいながら、明るい未来に向かっていきたいと思います。みなさん、PLATEAU AWARDに応募してください。

伊藤氏:私は最終審査会のプレゼンでデモをライブでやったのが強かったと思うので、トラブルや失敗を恐れずに、みなさんもぜひトライしてみてください。

Patel氏:みなさんインタラクティブな作品を作ったら、パフォーマンスを意識してほしいです。まず最初にパフォーマンスを守らないと何もできない。それができれば、作品の完成度も可能性も上がるから。

KND-3:学生でもフレッシュな視点で新しいコンテンツを開発しつつ、チームでやるなら仲間と情報共有しながら、楽しんで取り組むのが一番だと思います。また、初心者だからこそ出てくるアイデアもある一方で、初心者にはそれを実現するための開発がとても大変だと思いますが、挑戦しやり遂げてこそ得られる知識や出会いがあるので、ぜひハッカソンからPLATEAU AWARDに参加してみてほしいなと思います。

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