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Collision 2024注目の北米テックトレンド。垂直型AI・ネクストサブスク・ヘルステック

Collision 2024

特集
ASCII STARTUP イベントピックアップ

 北米最大級のテックカンファレンス「Collision 2024(コリジョン)」が2024年6月17日(米国東部標準時)から20日までカナダ・トロントのEnercare Centre(エネルケアセンター)で行われ、テック系を中心とした2000以上のスタートアップがブースを連ねた。この記事では、北米のPRスペシャリストとして働く筆者がスタートアップ展示から伺える北米や世界でのテック系スタートアップのトレンドを紹介していく。

バーティカル型AIサービス

 まず、外せないのはAI(人工知能)のテックスタートアップだろう。 「この1年でAIは、一般消費者にも大きく広まりました。私たちスタートアップの製品のPoC(概念実証)も成果がでてきており、企業への導入が進んでいます」と、トロント出身の言語処理スタートアップ「Cohere」のCEOであるエイデン・ゴメスのスピーチでイベントが開幕した。

 出展していたAIスタートアップの多くは、職場でのCopilot等のアシスタントAIのようなBtoB製品やサービスが多く、職場での生産性向上に向けたサービスであった。参加した業界関係者の間では「AIツール導入は、まだアーリーアダプターのステージであり、生成AIのスタートアップがトレンドに乗り、パイを獲得する余地がある」と考えられているようだ。

 米国ではGAFAMなどの巨大IT企業によって、生成AIプラットフォームは寡占されつつある状態ではある。しかし、出展スタートアップらは、自社のAIソフトウェアと業務に関する特定の専門知識を組み合わせるたバーティカル(垂直)型AI(汎用AIの対義)サービスで、個別の市場のニーズに応え、ビジネスを確立しようとする様子がうかがえた。

1.ARKEO AI:企業インフラを理解するカスタムコパイロットAIを構築する会社。

2.Hoji AI:各種ソフトウェアやウェブサイトのコードをレビューし、パフォーマンスの最適化やコードエラーのチェックを行うAI。

サブスクリプションサービス

 Collisionでは、サブスクリプションサービスのスタートアップも多く展示されていた。SaaSモデルは2000年代初頭からテック企業で採用されてきたが、新型コロナウイルスのパンデミック後に市場で急速成長した。参加した投資家の関心は、サブスク市場での異業種からのプレイヤーだ。先述の生成AIスタートアップの多くがSaaSによる定期支払いモデルであり、ヘルステック、セキュリティ、エンターテインメント産業などサービスでの適用が期待されている。

 ソフトウェア以外では車のレンタルや月々のコーヒー豆の配達などがあり、また多様な製品やサービスを提供するための技術インフラを支えるスタートアップの参加もあった。

1.Subskryb:カーシェアリングと短期ファイナンスをテックで解決したサブスク型短期車レンタルサービス。

https://sites.google.com/subskryb.com/dataroom/home

2.The Roasters Pack:毎月3つの厳選されたコーヒー豆のパックを顧客に届けるサブスクリプションサービス。

ヘルステクノロジー

 カンファレンスの最終日は、プレゼンテーションやパネルディスカッションの多くがヘルスケアテックに焦点を当てた開催であった。特に医療分野におけるAIの利用拡大、血液検査やがん検出の新技術などのスタートアップが出展をしていた。他にも、予防医療のためのタンパク質分析AIや、外科医、医師、その他の医療従事者の訓練を支援するVR技術などがあった。

1.SurgicalVR Technologies: 医療従事者が医療手技を練習し学ぶためのVRシミュレーションソフトウェア。

https://surgical-vr.com/

2.GourmetBot: 自律型AIを使用して家庭用の健康的な個別料理を調理するスマートキッチンロボット。

世界各国からも

 Collisionでは、カナダ・アメリカの北米スタートアップの出展だけでなく、韓国・台湾などの東アジア勢からイタリア・ポーランドなどのEU諸国まで、世界各国のスタートアップブース展示も目立った。

 特に目立った国は台湾とカタール、ポーランド。台湾はカンファレンス会場の中央に大規模なスタートアップ展示を行い、カタールはグローバル投資家と地域開発を対象とした大規模なブースを設置、ポーランドはカンファレンス全体でパネルディスカッションを多数スポンサーして存在感を示していた。

 また、韓国はポーランドや台湾のような大規模な展示ではなかったものの、KOTRA(大韓貿易投資振興公社)とソウルAIハブがスポンサーとなり、3日間にわたって韓国のテックスタートアップのための専用スペースが設けており、韓国スタートアップの北米売り込みの勢いを感じた。

 日本からは、JETROと横浜市によるブースが設けられ、数社の日本のスタートアップが展示を実施。また、トロントに拠点を置くAI研究で有名なウォータール大学のスタートアップインキュベーターDMZとの協力により、DMZブースで日本のスタートアップショーケースが開催された。ブランプトン市とキヤノンカナダ支社の後援で、日本のピッチコンテストも開催された。日本のスタートアップのピッチコンテストやブース紹介は別の記事で紹介したい。

 著者プロフィール

 アーロン・ウィルソン
 PRスペシャリスト
 ShapeWin Canada
 https://www.shapewin.co.jp/en/

 カナダ出身トロント在住。日系PR会社のShapeWin Canadaで北米のPRスペシャリストとして、日本企業を始め世界中のテック企業をクライアントに抱える。日本語学習歴7年で俳句や短歌を詠い、日本企業と北米市場の「架け橋」として越境コミュニケーションPR戦略・戦術を担当。直近では米Fortune誌で日本の特徴的なマーケティング手法について解説。

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