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ディープテックとレイターステージを強化する スタートアップ育成5ヵ年計画のこれから

IVS2024 KYOTOセッションレポート「スタートアップ育成5ヵ年計画 後半戦の行方と展望」

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 国内最大級のスタートアップカンファレンス「IVS 2024 KYOTO」が2024年7月4日から6日の3日間、京都市伏見区の京都パルスプラザで開催された。「Cross the Boundaries(境界を越えて)」をテーマに、国内外から過去最多となる1万2000人以上が参加。スタートアップエコシステムで議論するべきテーマや向き合うべき課題を選定され、200のセッションが開催された。

 本記事では7月5日にメインステージで開催された「スタートアップ育成5ヵ年計画 後半戦の行方と展望」をレポートする。京都市の松井孝治市長をはじめ、計画の骨子をまとめた自民党衆議院議員で文部科学副大臣の今枝宗一郎氏、実質的な運営を担当する経済産業省経済産業政策局の富原早夏氏が登壇し、株式会社PoliPoliのCEO伊藤和真氏がファシリテーターを務めた。

実質4年間で投資額を10兆円に増やすための取り組み

 スタートアップ育成5ヵ年計画(以下、5ヵ年計画)についておさらいすると、日本にスタートアップを生み育てるエコシステムを創出し、第二の創業ブームを実現することを目的に2022年11月28日に立ち上げられ、岸田内閣が掲げる経済政策「新しい資本主義」の目玉の一つとなっている。「人材・ネットワークの構築」、「資金供給の強化と出口戦略の多様化」、「オープンイノベーションの推進」を3本柱に、スタートアップへの投資額を5年で10倍の10兆円に増やし、10万社のスタートアップを創出してユニコーン企業を10倍にすることを目指す。

スタートアップ育成5ヵ年計画の概要

 28歳で初当選した今枝氏は、日本一若い国会議員として注目されるだけでなく、政府の5ヵ年計画に対して国会議員連盟の事務局長として必要事項を提言し、実現に深く関わっている。計画はスタートがやや遅れており、実質的に4年で投資額を10兆円にしなければならないため、最初の1年は税制優遇制度の立ち上げや見直しに力を入れ、お金が回る仕組みづくりをしたという。その一つが「日本版QSBS制度」で、スタートアップ投資に対する株式売却益が最大20億円まで非課税となる。もう一つは「日本版SBIR制度」の見直しで、研究開発に対する補助金の前払いなどで税金を減らすメリットもある。

 次のキーワードとして取り組んだのが、ディープテックとグローバルである。日本はユニコーン7社のうち2社がディープテック分野なのに対し、米国はユニコーン997社のうち55%がディープテック分野で占められている。そこで、ディープテック分野に特化した研究機能と国際標準のインキュベーション機能を兼ね備えた「グローバル・スタートアップ・キャンパス」という”出島”を目黒区と渋谷区に創設。さらに、シリコンバレーに5年で1000人の起業家を派遣する「J-StarX」を実施している。

自民党衆議院議員、文部科学副大臣の今枝宗一郎氏

 富原氏はスタートアップの現状について、2年前の1万6000社くらいから2万3000社にまで増え、加えて大学や発明者の起業家や、地域も都市部以外の地方からも結構出てきていると話す。また、欧州で日本はスタートアップの国だと知られていなかったが、最近は続々と海外の投資家が来日しているという。5月にパリで開催された世界最大級のイノベーション見本市「Viva Technology」でも、日本が特別招待国(Country of the year)に選出されて多くのスタートアップが参加し、存在をアピールした。

「これまでのベンチャーブームがトレンドになる転換点で、今が大事なタイミングだと思っている。新しいチームではスタートアップファーストで、規制改革や制度を一緒に作っていきたいと考えている」(富原氏)

経済産業量省経済産業政策局の富原早夏氏

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