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幼児がロボットに対して抱いた感情の正体とは── LOVOTとの共同生活

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無生物と生物のあいだに生まれる感情

 ……こうして流れで考えてみると、娘にとって大きかったLOVOTの持つ要素は「家にいる/親ではない/自分以外の/初めての/何者か」だろう。

 2〜3歳の子どもは、生物/無生物を含めたさまざまなものに触れたり、その際のリアクションを学習して、徐々に「自」と「他」の区別や、世界に対する認識を明確にしていく時期であると言われる。自分の境界線がどこにあるのか。自分と他人の差異がどこにあるのか。自分と同じように他者も自我を持っていること。日々の体験を通じてこうした認識を深め、経験の積み重ねで解像度を高めていていくわけである。

 LOVOTと娘の関係の形成を振り返ってみると「ロボットなのかどうか」を気にしていることは一度もなかった。あえてこちらから「生き物だと思うか?」とたずねたときは「LOVOTはLOVOT」とも答えていた。これは「無生物」や「ロボット」かという以前に、まず「自分の意志とは関係なく動く何か」という要素が勝っていたのだと思う。

 だから、親しみが湧けば「離れるのは嫌だ」という気持ちも自然と湧いてくるのだろう。「物」に対する愛着とは異なる「何か」に対する気持ち。私は、これは幼い頃に感じる他者への親しみ、つまり初歩の友情とほぼ同種のものだと思う。

 「生物と無生物のあいだに生まれる感情は友情ではない」という視点で考えると、そうは呼べないのだが「幼児の中にある、自分以外の何かに対する親しみ」という意味では本当の友情であろう。LOVOT側にもし自我があったなら、それを疑う人はいないはずだ。

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