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AIユートピアを夢見る――OpenAI投資家ビノッド・コースラ、Collision 2024で語る

Collision 2024

特集
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 カナダのトロントで北米最大級のテックカンファレンス「Collision(コリジョン) 2024」が2024年6月17日(米国東部標準時)より開催された。同カンファレンスの3日目、6月18日には、インド出身の米国人ベンチャーキャピタリストであり、OpenAIを発掘した投資家としても知られるビノッド・コースラ氏がメインステージに登壇。セッションのテーマは「AIユートピアへの道(原題:The Path to an AI Utopia)」であり、モデレーターはTechCrunchの編集長であるコニー・ロイゾス氏が務めた。

OpenAIのApple採用で当事者は…

 コースラ氏は、まず、彼が投資しているOpenAIの技術をAppleが自社デバイスに統合するという最近の発表について意見を述べ、「これはOpenAIが持つ技術の正当性を示すもので、今後5年、10年の製品に対する信頼の証です」と表明した。

ビノッド・コースラ氏

AIスタートアップエコシステムは進化の時である

 次に、現代のAIスタートアップエコシステムの性質について、競争が激しい状況ではあるが大きなチャンスがあると述べ、「これらの企業の半分は廃れてしまうでしょうが、もう半分は価値あることをしています。現在、困難な状況にはあるが、優れた起業家が成功するチャンスはたくさんある。GAFAMのような5〜7社で寡占されつつある市場では、大企業のプラットフォームとの連携や組み込みの方が成功する可能性が高い。例えば、英語添削AIのGrammarlyは単独では製品価値を発揮しにくく、うまく統合できていないスタートアップの例だ」と説明した。

 そして、AI開発産業の進化において自身を含むベンチャーキャピタル(VC)が果たす役割は大きいと強調した。VCがこれらの企業を積極的に支援することで、ブランドの価値を構築し、投資家の利益を高めるだけでなく、企業の成長と成功に大いに貢献するとした。

 一方で「残念ながら多くのVCは手数料を取るだけで、スタートアップの成長を支えているとは思えません。本当に良い投資家は、『会社』の構築はしません。良い投資家は、スタートアップである『あなた』が自ら見いだし、構築するのを援助してくれるものです」と述べ、現行のエコシステムに苦言を呈した。

 AIの今後の注目分野については、医療診断や理学療法などのヘルスケア分野で多くの可能性を持っていると考えていると述べた。特に、多くの医療分野で特定の専門知識を必要とする分野が最終的にはAIに取って代わられるだろうと主張した。

米国・EUのAI規制に対する激しい非難

 AI技術の進歩や活用の可能性が広がる中、米国や欧州連合(EU)ではAI規制法案が可決され逆風も吹いている。これに対し、米国とEUの独占禁止法規制当局を痛烈に批判し、特に連邦取引委員会(FTC)の現トップであるリナ・カーン委員長は独占禁止法や消費者保護法の執行を担当する立場にあってはならないと述べた。

「彼女は理性的な人間ではありません。彼女はビジネスを理解していないので、その役割にふさわしくありません」と笑みを浮かべながらコースラ氏は語った。

 さらに、独占禁止法に当たる反トラスト法には、どの国でもどの経済にも有益である一方で、過剰な規制はイノベーションを妨げ、経済政策として悪いものだと詳述した。EUは自らを規制して、どの技術分野でもリードできなくなっている。米国は、中国との技術競争による覇権争いがますます激しさを増すため、イノベーションを起こす努力を続けなければならないと述べた。

 コースラ氏は技術のさらなる進化について楽観的であり、自らを「テクノオプティミスト」と表現している。「テクノオプティミズムは素晴らしいですが、富の公正な分配を確保する必要があります。私たちは富を共有するための十分な豊かさを持つことができるでしょう」とまとめ、セッションを終えた。

日本のスタートアップや企業、政府はどうすべき?

 成長するAI市場に参入しようとする大企業は、今後も多様で革新的なAI技術をどんどん買収していくことが予想される。日本のスタートアップ企業も、国内外を問わず企業からの買収を予期すべきである。コースラ氏が言ったように、多くの大小の企業が「次の大きなこと」を見つけようとしている。

 この先、AI規制が世界の政府間で継続的なトレンドとなることは、ほぼ確実な流れとなる。これには利点があるが、過剰な規制はイノベーションの抑制と人材の流出を招く。これは、多くのヨーロッパのテック業界の人々が、相対的に自由度が高い米国やカナダに移住して事業を展開しているのと同様だ。

 コースラ氏の意見を信じるならば、日本の政策立案者は他国と競争するためにAI分野の規制を緩和しつつ、買収の際には防衛的な政策を実施するべきである。このようにして、海外からの人材を引きつけると同時に、日本企業の競争力を確保することができると思う。

 著者プロフィール

 アーロン・ウィルソン
 PRスペシャリスト
 ShapeWin Canada
 https://www.shapewin.co.jp/en/

 カナダ出身トロント在住。日系PR会社のShapeWin Canadaで北米のPRスペシャリストとして、日本企業を始め世界中のテック企業をクライアントに抱える。日本語学習歴7年で俳句や短歌を詠い、日本企業と北米市場の「架け橋」として越境コミュニケーションPR戦略・戦術を担当。直近では米Fortune誌で日本の特徴的なマーケティング手法について解説。

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