走行モードでガラリとキャラクターが変わる
それでは、スコーピオンストリートモードにして、排気音をオンにして試乗を始めましょう。電気自動車の試乗経験は多くない唯さん。果たして……?
「ワンペダルは慣れればラクだと思うのですが、慣れるまで少し時間がかかりそうですね。結構回生ブレーキが利きますし、急に加速して進んじゃうので、急発進急ブレーキみたいになりがちでした」と、ちょっと悪戦苦闘。
そこで「スコーピオントラック」モードにチェンジ。一気に加速するあたり、なるほどアバルトっぽい! 車体重量は電気自動車としては軽量な1360kgで、それでいて155馬力ですから、ガツンと来ないわけがありません。この走りの良さに、運転した誰もが思わずニンマリ。
気になるサウンドについては、「意外と大きくて。気分は若干高揚するんですけれど、信号待ちとかは気になって止めてました」と唯さんがおっしゃるように、社外品マフラーよりも大きい音が出るのです。アバルト 595 コンペティツォーネに搭載するレコードモンツァマフラーも同じように音が大きいので、こんなものかなと思いつつ、個人的にはボタン1つで切替ができたらいいのに、と思ったり。
意外だったのが乗り心地のよさ。唯さんが「スポーツグレードだと思うのですが、それほどスポーツスポーツという感じじゃないですね。ガチガチじゃないから普通に乗れるかなという感じ」と仰るように、アバルト 595 コンペティツォーネのような「手に負えないじゃじゃ馬」感はなく、ノーマルのアバルト 595に似ている印象。それがアバルトなのか? というと、それは人それぞれですが、このくらいがちょうどよいと思うのは、筆者が年を経ったから?
「小回りが利きますから、街乗りにはいいかなと思います。長距離はちょっと辛いかもしれないですね」という唯さん。総括すると「楽しく街を駆け抜ける1台として、アバルト 500eは好適なクルマ」といえそうです。
さて、ここまで値段の話はあえてしなかったのですが、アバルト 500eのお値段をお伝えしましょう。ハッチバックは630万円、試乗したカブリオレは660万円。「高っ」と思わず声を漏らす唯さん。この大きさで、この値段。確かにそう感じるのも無理はありません。
ですが、ガソリンエンジンのアバルト 500が500万円程度、アバルト 500eのベースとなったフィアット 500eがハッチバック553万円、カブリオレ570万円であることを考えると、電動サソリのプライスタグは、むしろ頑張ったというか、オトクと思えるから不思議。
予想通りと予想外が入り混じったアバルト500e。でも一番の予想外は「電気になってもサソリは楽しいクルマ」だったこと。電気の時代でもメーカーの個性がキチンと残る、趣味性の高いクルマは存在しつづけられることを、アバルトは教えてくれたように思いました。

この連載の記事
-
第588回
自動車
都市型SUVの新定番! マツダ「CX-30」がもたらす新感覚ドライブ -
第587回
自動車
死角ナシの万能SUV! マイチェン版トヨタ「カローラ クロス」に乗ってわかった“しっとり快適”の正体 -
第586回
自動車
今しか選べない“熱き”ガソリンSUV!マセラティ「グレカーレ」の真髄を体感する -
第585回
自動車
カッコいいワゴンは健在! アウディの新型「A5 Avant」は流麗なデザインと広々ラゲッジでアウディらしさを継承する -
第584回
自動車
「VEZEL e:HEV RS」は後出しズルい! と言いたくなるほどイイクルマだった -
第583回
自動車
採点方式が激変の2025年「日本カー・オブ・ザ・イヤー」最終決戦! 10ベストカー試乗会レポ -
第582回
自動車
BMW「X2 M35i」はカジュアルさとBMWらしさが高次元にバランスした日本にピッタリなSUV -
第581回
自動車
フォルクスワーゲン「ゴルフ GTI」はオトナになったボーイズたちに勧めたいぜいたくな1台 -
第580回
自動車
プジョーの新SUV「3008」はデザインでの購入者が大半! リゾートホテルのような内装とクーペフォルムが牽引する -
第579回
自動車
新型「プレリュード」は今のHondaを凝縮したハイブリッドスポーツの前奏曲だ! -
第578回
自動車
クラウン・エステートで車中泊体験! 「おもてなし」シートで過ごすぜいたくなドライブ体験 - この連載の一覧へ





















