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衛星データや地理空間情報を活用し、地球規模の課題に取り組む Solafuneが優勝

「FRONTIER PITCH TOKYO for Startups」レポート

特集
ASCII STARTUP イベントピックアップ

「FRONTIER PITCH TOKYO for Startups」が2023年9月15日に開催された。同イベントは、「東京を世界一スタートアップしやすい都市へ」とするべく、複数のベンチャーキャピタルやスタートアップ支援企業と連携してスタートしたプロジェクト「START-UP FRONTIER TOKYO」のキックオフイベントだ。

 これからの日本社会・経済を牽引していくスタートアップ企業を対象に、『実現したい日本の 10 年後の未来』をテーマに、ビジョン(熱意)/ビジネスモデル(市場性)/独創性・新規性/実現性/アイディア力を審査基準としたピッチコンテストで、応募企業160社の中から審査を通過した8社のファイナリストによってピッチが繰り広げられた。

 主催はサンフロンティア不動産株式会社。東京都を中心にオフィスビルの再生・活用などの事業を展開する。リノベオフィスや原状回復不要な物件などスタートアップ向けの物件も取り扱っている。

 優勝企業には、同社の取り扱う渋谷のオフィス物件を1年間無料で利用できるほか、ファイナリスト8社にも順位に応じて、オフィスエリア、スペースなどが提供される。

衛星データや地理空間情報を活用し地球規模の課題解決に取り組む、株式会社Solafune

 最初に登壇したのは株式会社Solafune の前原 剛氏。株式会社Solafuneは、衛星データや地理空間情報を活用し、地球上のあらゆる事象をソフトウェアで制御可能にし、地球規模の課題に取り組む。

株式会社Solafune 前原 剛 氏

 現在、地球の衛星軌道上には多くの衛星が打ち上げられている。その衛星のセンサーを利用して様々な産業に利活用され始めている。一方で、衛星データの解析には技術力やコスト、人材などの面で課題を抱えている状態だという。

 Solafuneでは、自社で購入した衛星データで開発コンテストを実施、上位者のソースコードを買い取って自社のソフトウェア、APIとして提供するという。活用されるデータは多岐にわたる。国内のほか、主にアジアやアフリカ諸国で政府機関向けのサービス提供が広がっている。

 とくに衛星データによるリモートセンシングは、日本の鉱物資源確保のためにも重要なソリューションという認識だ。宇宙技術がない国は信頼できる国の技術、情報を求めることになる。日本は、そういった面においてグローバルサウスの国々からの支持を得ている。

「Hack The Planet」のミッションのもと、日本だけでなくグローバルな人材を集め、技術や仕組みによって外交プレゼンスの向上、地球規模の課題に取り組むとしている。

中小企業の受発注管理やデッドストックの課題をデータ連携で解決、LEAN PATH株式会社

 ⾃動⾞サプライチェーンに存在する納期問題やデッドストックの課題を瞬時にデータ連携することで解決するサービスを展開するLEAN PATH株式会社。市場のたった0.8%を占めるメーカーが生産数を決め、直接情報を受ける一次受け以外の83%の二次受け以降の企業は在庫を持つことを余儀なくされ、経営に負荷がかかっているという。

LEAN PATH株式会社 吉田 武史 氏

 担当者のカンなどに基づく不確かな情報での受発注管理を、LEAN PATHのシステムを活用することで、受発注のデータから需給シミュレーションを行い、余剰在庫を最小限にできるとしている。また、作業工数の削減にも貢献し、実際の効果としては、導入前比で99.9%の削減となる場合もあったという。

 グローバルなサプライチェーン全体にまで応用することで、総額17兆円のコスト削減も可能という。誰もが使いやすく、サプライチェーンの新基幹システムを提供し、不可欠な存在になりたいと締め括られた。

アフリカの地方農村部にWi-Fi インフラを構築しスマホ割賦販売や動画サービスなどを提供、株式会社Dots for

 株式会社Dots forは、アフリカの地方農村部に、誰でもアクセスできる Wi-Fi インフラを安価に構築し、スマートフォンの割賦販売も併せて提供。相互通信ができる仕組みを利用して、村と都市や先進国をマッチングし雇用を生み出し、集まるデータを基に与信を付け金融サービスを展開している。

株式会社 Dots for 大場 カルロス 氏

 アフリカ諸国では都市部と地方農村部での格差が大きく、農村部では水や電気がない、電話も音声通話だけというエリアも多いという。特に、インターネットにつながらないことで情報や機会の格差、収入の格差が課題だ。

 Dots forでは格安のWi-Fiインフラを構築しスマホの割賦販売と併せて動画サービスなどを提供するBtoCサブスクリプションサービスを提供する。それによって得られた与信によって高単価商品の割賦販売につなげるなどのビジネス展開も見込む。創業1年半現在で、100村でサービス展開し、村ごとに採算が成立しているという。

 ユーザー側にとっても、職業訓練動画などの視聴によって収入増につながるなどのメリットが生じているという。今後は村の経済成長にとどまらず、村外、都市からの仕事の獲得を経て、都市と同等の暮らしができるようにサービスとともに成長を目指すとした。

稲から牛乳タンパク質「ミルクライス」を作りおいしい代替食品の開発を目指す、株式会社Kinish

 コメの国、日本が誇るイネにバイオテクノロジーを活用し、また日本強みである「おいしさ」へのこだわりを訴求することで、今までにないおいしい代替食品の開発を行う株式会社Kinish。おいしい代替食品を広げることで、地球温暖化問題・タンパク質クライシスの 解決を目指す。

株式会社Kinish 橋詰 寛也 氏

 地球温暖化や人口増加などにより、肉・魚・乳製品などのタンパク質を中心に食料不足が懸念されている。ヘルシー志向や環境問題などから代替食品が広がりをみせているが、味が理由で普及していない事実がある。世界的においしい代替食品を作ることが目指されているが、日本は出遅れているという。一方で、「おいしいを目指すこと」において日本は世界に負けないポテンシャルがあるとしている。同社では、稲から牛乳タンパク質「ミルクライス」を作る技術を開発、温室効果ガスを多く出す乳牛の代替とする。

 ミルクライスから得られる牛乳タンパク質と、でんぷん質の甘さを代替アイスクリームとして開発、味、ヘルシーさだけでなく通常のアイスクリームに比べ70%のCO2削減も実現する。また、矮性イネという独自の品種で、段積みで栽培、通常の半分の期間で収穫可能など、植物工場などでの生産性も高いという。

 現在は、研究開発段階というが、2025年にはアイスクリームの販売を日本、米国などで開始、チーズなどその他の乳製品の開発も進めてゆきたいとロードマップを提示。そして、日本が中心となってフードテック、フードサイエンスを盛り上げ、グローバルカンパニーとなることを目指すと意欲が示された。

フォーマットの異なる書面を自動で統一してデータ化するGPT搭載の業務効率化システムを開発、株式会社batton

 卸業や製造業向けに、FAX やPDFなど、フォーマットがバラバラの書面を自動で統一してデータ化できるGPT搭載の業務効率化システムを開発する株式会社batton。

株式会社batton 川人 寛徳 氏

 もはや“オワコン”と思われているFAXだが、実は年平均約11%の成長率の市場だという。もちろん、紙のFAXは減っているが、eFAXなどが伸びているという。一方で、FAXを仕分けてデータ入力をするという人力作業は依然として残っており、作業負荷となっている。企業ごとに異なる帳票のフォーマットは、従来では手作業で自社のシステムに入力せざるを得なかったが、同社の「FAXバスターズ」では、自動で統一フォーマットに変換して自社システムにインポートできるので、ある導入事例では93%と大幅な作業時間の削減となったという。

 導入企業は、従来の業務フローを変えなくていいうえに工数削減ができるということで、受発注だけでなく、他の業務の自動化にも広げていきたいという。日本語はもちろん、英語の書類にも対応するので欧米市場も視野に入れると多くの市場が見込めると期待をにじませる。

コンブの養殖で水産資源保護や気候変動緩和、観光業促進などに貢献、幸海ヒーローズ

 海中で育てたコンブで海が抱える課題を解決し、副産物であるコンブで人間の健康にも寄与して海と人間の両方の幸せに貢献するための活動を実施する幸海ヒーローズ。

幸海ヒーローズ 富本 龍徳 氏

 現在、金沢八景(横浜市)でコンブの養殖をしているが、その理由のひとつに磯焼けの対策がある。磯焼けの範囲が年々広がり、危機的な状況にあるという。そこでコンブを養殖することで水産資源の保護、気候変動の緩和、観光業の促進などに貢献するとしている。

 コンブは森林に比べ約5倍のCO2を吸収できるそうで、育成に関しては肥料などが不要でコストがかからないうえに、漁獲量が減る冬場の漁師の副収入になるなどのメリットがあるほか、カーボンオフセットされたクレジットの取り引きなどでも活用できるとしている。養殖されたコンブは、食べるだけでなく、肥料や家畜の餌、加工するなどの利活用の幅を広げている。

 コンブを含めた海藻の養殖は世界中でチャレンジされており、投資も行われているという。同社でも世界に負けないよう規模を拡大していきたいと支援を呼びかけた。

独自データベースをもとに工場と設備メーカー・商社をつなぐサービスを展開、株式会社Robofull

 全国の製造業 10 万社の保有設備情報を網羅した独自データベース(MPD)を構築し、同データベースから各工場の設備ニーズを予測することで、産業設備を買いたい工場と設備メーカー・商社をつなぐサービスを展開している株式会社Robofull。

株式会社Robofull 山本 大 氏

 工場設備に用いられるロボットや工作機械は、サプライヤーも顧客もともに数が多く、工場ごとに必要な設備が異なるという現状がある。そうした中で、ロボットなどの自働化設備を買いたい工場側と設備を売りたいメーカー側の間にミスマッチが起こりやすい。同社では、10万社分の工程、設備のデータを持ち、その工場のニーズとメーカーをマッチングさせることでビジネスとする。

 従来の8倍の提案精度で、顧客単価も50%アップ、見積移行率も1.5倍と案件も拡大し、半年間でおよそ27億円分の設備ニーズのマッチングの実績を持つ。現在はマッチングに限っているが、今後は設備の取り引きなどにも拡大していく予定だという。

 停滞しているレガシー産業を、テクノロジーを活用してマッチングさせていくことで、自動化できていない中小の製造業を活性化できるのでは、とする。人手不足に苦しんでいる現状を解消し、産業の発展に貢献したいと締め括られた。

日本の製造業を高付加価値なものにすることを目指して中古工作機械のマーケットを構築する、マシーンテクノロジーズ株式会社

 日本中の工場・倉庫に散在する工作機械の情報をデジタル化して、中古工作機械のグローバルマーケットプレイス「マシーンマーケット」を立ち上げるとするマシーンテクノロジーズ株式会社。

マシーンテクノロジーズ株式会社 奥田 亮史 氏

 日本の工場にある古い機械を海外に売って外貨を稼ぎ、日本の製造業を高付加価値なものにすることを目指し、中古工作機械のマーケットを構築する。奥田氏は、証券会社から金属加工工場、機械商社とキャリアを進める中で、工作機械の流通に関して課題を感じたという。

 その中で、今までは課題もありながらも回っていた中古工作機械の流通が、廃業などによって受給バランスが崩れ、近年在庫が増えている状況に注目。国内の余剰在庫を海外向けに販売することにチャンスを見いだした。

 現在は、コンテナに入る機械に限って無在庫で販売することで物流コストを削減し、ビジネスとして成立している。その中でも売れ筋を主に取り扱い、コストパフォーマンスも高めていくとする。将来的には在庫を持って減価率を抑えることも視野に入れているという。他の産業機械などにも広げることで市場や成長の余地が今後も見込めると将来性もアピールされた。

 ピッチ終了後、審査員からは非常に熱量の高いプレゼンテーションが行われて非常によかった、審査は非常にレベルが高く難しかった、などと感想が述べられた。特に日本から海外を目指す、海外市場を目指す取り組みが目立ち、期待が持てるというコメントも寄せられた。

 最後に、審査員であり主催のサンフロンティア不動産株式会社 代表取締役社長 齋藤 清一氏からは、無償提供のオフィスは上位3社に限られるが、有償物件はいつでも入居可能なのでぜひ渋谷から発信してほしいとアピールされた。

サンフロンティア不動産株式会社 代表取締役社長 齋藤 清一 氏

 優勝は株式会社 Solafune。同社の前原 剛氏は、「このような賞をいただき誠にありがとうございます。今日はプレゼンがうまくいってよかった。引き続きご支援よろしくお願いします」と受賞のコメントを述べた。

株式会社Solafune 前原 剛 氏

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