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日本発ディープテック創業で50人もの経営人材を生み出したVCに迫る

連載
マスク・ド・アナライズのスタートアップ!人事!

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世界でも通用するスタートアップが必ず日本から出る

マスクド:ディープテックや海外での成功事例について、VCとして投資する中で、どのような課題があるとお考えですか。

鷺山:まだまだ日本のスタートアップにおいて、ディープテックで成功した事例は限られます。やはり優れた製品や技術があっても、販路を築いて顧客に届けるのは難しいですし、法律や規制もあります。一方で海外のスタートアップを経験したり、現地の人とつながって壁を乗り越える事例も増えてきました。

 近い将来、海外でも戦える経営者の方が増えて、風穴を空けるかもしれません。また、日本の文化や仕組みに依存したものは海外での展開が難しいですが、素材や製法において有利なものを提供できれば市場にもフィットします。こうした分野は世界共通なので、日本で成功した製品やサービスよりもディープテックの方が海外展開がしやすい部分がありますね。

 ILPやAPOLLOの取り組みから生まれたスタートアップには、大腸菌からプラントマテリアルを生産するファーラメンタ社や、魚の品種改良から新魚種(ハイブリッド魚)を誕生させるさかなドリーム社があります。

 期待もしていますが、とはいえディープテックは成果がでるまで時間がかかるので、まだまだ成長段階です。我々は7年前からINNOVATION LEADERS PROGRAMを通じた経営人材創りをしていますが、「まだ7年」です。初期に参加した卒業生経営者たちもスタートアップの成長段階で言えばシリーズBぐらいでこれからです。

 こういった領域特性に合わせて3号ファンドの投資期間を11年、最長で14年まで延長できるようになっております。打算的な表現かもしれませんが、ディープテックにおいて難しい問題を解決できれば、市場価値も高くなるでしょう。さらに宇宙、医療、創薬、食料、環境、エネルギーなどは将来的に兆単位の売上を目指せる巨大市場ですから、時間はかかりますが大きなチャンスがあります。

マスクド:ディープテックを含めた起業において、今後の展望や将来性についてどのようにお考えですか。

鷺山:世界でも通用するスタートアップが必ず日本から出ると信じています。領域によっては日本のディープテックスタートアップが世界で主流にもなれるだろうと思うほどです。我々が投資を始めた9年前は、大型調達ランキングに出てくるような大学発スタートアップはごくごくわずかでした。しかし現在は公的な資金における動きに加えて、海外投資家を呼び込むチャンスも増えています。我々も世界で成功する事例を作るため、資金を集めていきます。さらに経営や研究における能力も上昇しており、良い研究とのマッチングが増えてます。身の回りの準備が整い次第、後は粛々と実現するだけという段階ですね。

 これを読まれているASCII読者の中には開発者の方も多いでしょうが、もしも起業を目指す方がいれば、まずはカジュアルなマッチングから始めると良いでしょう。大学や研究機関でハッカソンを行った時は、エンジニアの方々で盛況でした。転職というリスクはありますが、新たな仕事に関わる面白さがあります。特にディープテックは面白いテーマばかりなので、ぜひご自身の技術を生かして、新たな挑戦を望んでほしいですね。

取材を終えて

 ビヨンドネクストベンチャーズではインドなど海外向け投資を加速しており、数多くの案件が進行中です。さらに画期的な魚の養殖や、薬における新たな製法など、社会を大きく変える可能性があるスタートアップも登場してます。取材では様々な取り組みを伺ったが、その中で「部活みたいな感じ」「情熱やパッションが大事」という点が印象的でした。ディープテックは未解決の大きな課題に挑戦するという壁がありますが、知的好奇心が高いエンジニアにとっては挑戦しがいのあるテーマでしょう。こうしたスタートアップを支援する環境が整備されて、新たな社会が誕生することを期待しています。

マスクド・アナライズ

空前のAIブームに熱狂するIT業界に、突如現れた謎のマスクマン。
現場目線による辛辣かつ鋭い語り口は「イキリデータサイエンティスト」と呼ばれ、独特すぎる地位を確立する。
"自称"AIベンチャーを退職(クビ)後、ネットとリアルにおいてAI・データサイエンスの啓蒙活動を行う。
将来の夢はIT業界の東京スポーツ。
最新書籍「データ分析の大学」が好評発売中!

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