ゲーム向けの生成AIアセットが売られている
Valveが2023年、生成AIを使ったゲームの販売を事実上難しくした背景には、生成AIを利用するゲームの粗製乱造が一因としてあったと考えられています。
昨春、画像生成AIで出力したとおぼしき性的な画像を使用した低品質なパズルゲームが急増したんですね。低価格で画像だけを差し替えた同じような単純パズルが大量に配信されるようになりました。新作配信時はストアで目立つ場所に表示される確率が上がるため、その間だけ販売するという狙いがあったものと見られています。Steamの仕組みをハックして売上を出すテクニックとして、生成AIを使ってゲームの量産がされるようになっていたのです。
ところが、6月以降も生成AIを使ったと思われるゲームが複数販売されいるのが確認できるため、Steamのレギュレーションがよくわからないという状態になっていました。ただ、AIコンテンツを認めてもアルゴリズム的には出来の悪いゲームは検索にかかりにくくするといった仕組みは整えられているため、大きな影響がないとの判断があったのかもしれません。
また、9月にライバルのEpic GamesのEpic Games Storeで生成AIを使ったゲームの受け入れを表明したことも、意識されたのではないかと思います。
しかし、ゲームをめぐる生成AIの状況はより複雑化しています。現在、ゲーム会社側にとっても、外部企業が販売しているアセット類がAI生成かどうかを確かめるのはもはや難しい状況になってきています。
たとえば、Epic GamesのUnreal Engine系のアセットストア「UE Market place」で最近発売された1000円程度で販売されている2Dアセット(イラスト)をAI判定サービス「HIVE」で確かめてみたところ「100% AI」の判定が出るものが見られました。これらのアセット類は、ゲーム会社が購入し、自分のゲーム開発に利用するコンテンツとして利用します。出品者は、2023年秋から新しいアセットの種類を頻繁に増やして販売しています。
Epic Games側は、現時点でAI生成アセットを販売することについてはレギュレーション上の制限を設けておらず、「CreatedWithAI」のタグを付ければよいため、そもそも違反行為とは言えません。そのため販売中の多くのアセットにはすでに生成AIが使われたものが含まれていると考えられます。
例えば、テクスチャーとしてゲーム内に組み込んだ場合、検出ソフトを使って判定することは不可能に近いです。また、ソースコードが販売されている場合、そもそもAIかどうかを判別する方法はそもそもありません。こうしたアセットは様々なサイトで販売されており、購入者であるゲーム会社が確認することはほとんど不可能になりつつあります。
この連載の記事
-
第86回
AI
イラストに強すぎる画像生成AIモデル SDXL系「NoobAI-XL」の衝撃 -
第85回
AI
3DモデリングにAI革命の兆し 1枚のイラストから3Dデータが完成 -
第85回
AI
誰でもVTuber時代へ フェイシャルAI技術、続々登場 -
第84回
AI
画像生成AI「Stable Diffusion 3.5」性能はものたりないが、自由度が高いのは魅力 -
第83回
AI
リアルすぎてキモい 動画AIの進化が止まらない -
第82回
AI
もはや実写と間違えるレベル 動画生成AI「Runway」の進化がすごい -
第81回
AI
AIイラスト、こうしてゲームに使っています -
第80回
AI
ゲーム開発はAI活用が当たり前になりつつあるが、面白さを作り出すのは人間の仕事 -
第79回
AI
AIが考える“アイドル”がリアルすぎた グーグル「Imagen 3」なぜ高品質? -
第78回
AI
話題の画像生成AI「FLUX.1」 人気サービス「Midjourney」との違いは -
第77回
AI
画像生成AI「FLUX.1」が相当ヤバい LoRAで画風の再現も簡単に - この連載の一覧へ