生成AI、マルチクラウド、データ主権、サステナビリティなどのテーマに対応、「Oracle CloudWorld」レポート
「統合」と「分散」、オラクルが掲げるクラウド戦略とOCI新発表まとめ
2023年09月27日 07時00分更新
Oracle Cloudサービスの大半がArmベースに移行済み、新インスタンスも発表
マグワイク氏の基調講演で、もうひとつ大きく扱われたテーマが「サステナビリティ」だ。世界の電力消費量、CO2排出量でデータセンター(=クラウド)が占める割合は今後さらに大きくなると予測されており、クラウドプロバイダーとして避けては通れない話題である。
コンピューティングにおける電力効率の向上に向けて、オラクルではArmアーキテクチャの利用を後押ししてきた。2021年にはArmベースの安価なインスタンス「OCI Compute A1」や、4コア/メモリ24GBまでの永続無料枠(Always Free)の提供、開発ソフトウェアエコシステムの充実などを発表している。
今回のOCWでは、来年(2024年)提供予定の「OCI Compute A2」インスタンスが発表された。オラクルが投資するCPUメーカー、Ampereの「AmpereOne CPU」をベースに、仮想マシン(Flexible VM)で最大156コア、ベアメタルで最大320コアを提供する予定で、仮想マシンの密度とスケーリング性能が向上することで、フットプリントと消費電力を削減できるとしている。
マグワイク氏は「現時点で、OCIが提供するサービスの95%、そして新規顧客に提供されるすべてのFusion Appsは、Ampereのテクノロジーで稼働している」と明かした。Oracle Cloud自身のサービスも、Armアーキテクチャ/Ampereへの移行が大きく進んでいる。
基調講演のゲストには、OCIを活用してコンタクトセンター向けクラウドサービスを提供する8x8が招かれ、サービス環境をx86アーキテクチャからArmアーキテクチャ(A1インスタンス)に短期間で移行できたこと、コア数に応じて性能がリニアに向上し、安定的に動作していることなどを紹介した。
OCIの新インスタンスとしてはほかにも、大規模なAIモデルトレーニング向けの「NVIDIA H100」GPU搭載ベアメタルインスタンス(今年後半に米国、英国リージョンで提供開始)、小~中規模のAIモデルトレーニングや推論処理向けの「NVIDIA L40S」GPU搭載ベアメタルインスタンス(2024年提供開始予定)が発表されている。
また、レッドハットのハイブリッドクラウド/コンテナ基盤ソフトウェア「Red Hat OpenShift」をOCIの仮想マシンやベアメタルインスタンスでサポートすることも発表されている。今年2月に発表したレッドハットとの協業(Red Hat Enterprise Linuxの動作保証)を拡大するもので、両社による動作検証済みOpenShift構成が提供される。
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基調講演の最後に、マグワイク氏は生成AI分野におけるOracle Cloudの強みに触れたうえで、あらためて「統合」と「分散」というテーマを持ち出した。
「Oracle Cloudの重要な特徴のひとつとして“継続的に学習している”ことを挙げたい。ベストなアプリケーション(Fusion Apps)とインフラ(OCI)を組み合わせた統合クラウドのワークロードを、お客様が必要とする場所で(分散クラウドとして)提供する。そしてわれわれは継続的に学習することで、このポートフォリオ全体を改善し続けている」(マグワイク氏)
そして、生成AIのようなイノベーションに対しても、変化を恐れず積極的に試すことで、多くのチャンスをつかんでほしいと来場者に呼びかけ、基調講演を締めくくった。
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