4月27日にインテルは2023年第1四半期の決算発表を行なった。売上は1170億ドル(約15兆8900億円)で、28億ドル(約3800億円)ほどの営業赤字を記録するといった大変な状況ではあるのだが、これは事前予測よりも良かったということで、むしろ株価がわずかながら上がる(29ドル→31.79ドル)という、おもしろい事態になっている。
それはともかくとして、この決算発表のリリースの中にこんな一節がある。
表現を見る限り、まだフル稼働状態にはかなり遠い感はあるが、とにかくIntel 4を利用しての量産がスタートしたことを正式に表明した格好だ。5月30日から始まるCOMPUTEX TAIPEIでは、あるいはMeteor Lakeの動作プロトタイプにお目にかかれるかもしれない。そのMeteor Lakeの話がいろいろ流れてきたので、今週はまとめて説明したい。
特許取得で判明したMeteor Lakeの内部構造
Meteor Lakeの内部構造の推定は、連載682回で解説したが、ひょんなところからこの内部構造が出てきた。ネタ元は米国特許US20210081538A1である。Google Patentsを見ると、2020年12月にまず米国で出願され、その後欧州/日本/中国でも出願されている。
発明者の筆頭はインテルのVincent Zimmer氏(Senior Principal Engineer)。タイトルは“Early platform hardening technology for slimmer and faster boot”で、要するにブートの際の時間を高速化するために、ハードウェアとファームウェアを協調動作させる手法に関するものである。
特にセキュア・ブートではどうしてもブート時間が長くなりがちであり、これを高速化するためのテクニックだ。この特許のFigure 8を見ると、これはどうみてもMeteor Lakeだな、と考えざるを得ない。
もっともこれはトップエンドモデルではなく、ディスクリート・グラフィックス用のPCIeも省き、またP-Coreは2つのみなので、U/Y SKU向けのものと思われる。
まず右上のCPU complexはRWC(RedWood Cove)×2とCMT(Crestmont)×8という構成。RedWood CoveはRaptor Coveの延長にあるコアで、大きなアーキテクチャー上の変更はない模様。一方のCrestmontはTremontの延長にあるGracemontと異なり、アーキテクチャーを刷新したとされているが、こちらも詳細は不明なままである。こちらの分析は後ほど。あと、LLCはSoCダイではなくこのCPUダイに搭載されている。
次いでグラフィックス・ダイ。こちらにはGen 12.7で64EUの構成のものが搭載される。このGen 12.7ってなに? という話だが、扱いとしてはIntel DG2に属するものになる。
要するにAlchemist世代のGPUだ。Alchemist世代ではXe-Core1個あたり16EUなので、これは4 Xe-Coreということになる。Intel Arc A380の半分であるが、統合GPUで専用メモリーを持たないことを考えれば、これ以上強化しても性能向上は見込みにくいだろうから、妥当な構成と思われる。
ちなみに以前の想像図ではGPUダイに3次キャッシュを入れておいたのだが、これを見ると3次キャッシュがない(CPU タイルの方にはLLCの表記があるので、ここに3次キャッシュが入っていると考えられる)。全SKUでLLCがなしなのかどうかまでは正直判断できない。
この連載の記事
-
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第792回
PC
大型言語モデルに全振りしたSambaNovaのAIプロセッサーSC40L Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第791回
PC
妙に性能のバランスが悪いマイクロソフトのAI特化型チップMaia 100 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第790回
PC
AI推論用アクセラレーターを搭載するIBMのTelum II Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第789回
PC
切り捨てられた部門が再始動して作り上げたAmpereOne Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第788回
PC
Meteor Lakeを凌駕する性能のQualcomm「Oryon」 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ