アフリカスタートアップが熱い バイクファイナンスサービス「Zaribee」が目指すものとは?
「SHOWCASE AFRICA 2023」SESSION.6 レポート
バイクレンタルを起点に、債務回収者ではなく「ライダーマネージャー」として仕事と生活をサポートする
ケニアに在住し、「Zaribee」事業に立ち上げから関わってきた盛田氏は、「Zaribee」はアセットファイナンスの側面だけでなく、支払い管理のアプリ、保険の提供など「トータルで包括的なサービスを意識して、お客様(=バイクライダー)が仕事ができる環境を提供するという目的を持って事業展開している」と説明する。これは、数年前からアフリカに登場するバイクのファイナンス事業との差別化となる。
バイクライダーの中には、頭金が払えないので知り合いにバイクを貸りる人も少なくない。しかし、その場合何年経っても自分の資産にはならない。「Zaribee」では、着実に支払えば最後にはバイクが自分のものになるようサービスを設計しているそうだ。
そもそもケニアにおいてバイクとはどのような位置付けで、バイクライダーとはどのような人たちなのか?
スカイライトコンサルティングの平林氏によると、バイクの利用は人を運ぶ、物を運ぶ、とほとんどが商用だという。新車の登録台数は200万台ぐらいであり、「Zaribee」では300万人ぐらいを市場として捉えて展開しているそうだ。盛田氏は「ケニアには正規雇用が少なく、インフォーマルセクターが半分以上」としながら、「自分の食べる分は自分で稼ぐ、自分で職を作って働こうという起業家精神に溢れている」とケニアの労働者を説明する。「Zaribee」が対象とする“ボダボダライダー”とも言われるバイクライダーも、「“自分のボス(上司)は自分”という意識で、働くときは働く、働きたくないときは働かないので、時としてレイジーとか時間を守らないと思われているかもしれない」と説明した。
「Zaribee」では、支払いが遅れた場合に支払いを取り立てるよりも、頑張ってもらえるように励ますという「伴走」の姿勢をとっているそうだ。「Zaribee」では、債務回収者(Debt Cikkector)ではなく、「ライダーマネージャー」として、生活をサポートするという立場で関わっている、と盛田氏。「ライダーの多くが、事故に遭いやすい道路や交通状況など厳しい環境下で生活や仕事をしている。だからこそ、ライダーの生活状況を理解した上で、お金を払うことにどんな意味があるのかについて説明している」という。そのため、完済した(「Zaribee」では「卒業」と呼ぶ)ライダーからは、「僕のことを諦めずにサポートしてくれてありがとう」という感謝の言葉をもらうことも少なくないそうだ。なお、開始時に20人ぐらいでグループを組んでやったところ、10人強が卒業できたそうだ。
ホンダトレーディングは、本田技研工業の生産活動を支えるサプライチェーンマネジメントを主な事業とするが、「自動車業界が変革期を迎える中で新規事業にチャレンジするというときに『Zaribee』を知った。真面目に働こうとしている人にチャンスを与え、伴走し、カスタマーサクセスを実現するというコンセプトに共感をして参画した」と横谷氏は説明する。「お客様に何かを消費してもらう、快適になってもらうというところだけでなく、稼いでもらう、豊かになってもらうところに重きを置いている」と続ける。
「Zaribee」がとるビジネスモデルについては、「あらゆる業界でモノ売りからサービスに向かっている中で、売上のスキームをどう変化すればいいのかと思っていたところに具体例として関わることができた。勉強になっている」と述べる。これまでの考え方なら回収は早い方が良い。一方、「Zaribee」は17ヵ月かけて回収する。「時間はかかるが、ロイヤルカスタマーになってもらえるかもしれない人とのタッチポイントを継続的に持つという見方もできる」と横谷氏は評価した。
「Zaribee」は今後どのように発展するのか。盛田氏は、“Accelerate the Power of the Country”というミッションを紹介しながら、「我々のお客様は人の足になったり、物を届けたりすることで国を支えている。そういった方々をしっかり支えていきたい」と現場目線で意気込みを語る。
平林氏は、当面はライダー増加に注力しつつも、データ面への可能性の模索も進めると話す。「ライダーについての情報、走行データなどの情報が収集できる環境が整いつつある」と平林氏、ライダーのさらなるステップアップや、違う領域への展開、展開地域の拡大などの広がりが考えられるという。